今月初め、イギリスが「18年ぶりの大雪」になった。十数センチの積雪で3000校が休校、電車もバスも止まった。640万人が仕事を休み、ロンドンでは欠勤が4割だったそうだ。
やっぱり都会は雪に弱いね。東京の人は思うかもしれない。それがあの国は少し違う。多くの人が出かけるのをやめただけ。地下鉄の駅で働く人もバスの運転手も出勤しないから、交通機関が止まる。晴れの日だって信号機の故障とか運転手の体調とかいろいろな理由で交通のトラブルが発生することをみんな知っているから、大雪ともなれば当然、何も動かないだろうと見越して、休むのである。
「かつて地球の4分の1を治めた大英帝国。冷蔵庫やペニシリンを発明し、2回の世界大戦と1回のサッカーワールドカップで勝利し、シェークスピアとビートルズを輩出した誇らしき国が、これしきの雪でまひするとは」。デーリー・メール紙のコラムは嘆き節だったけれど、テレビやインターネットで見る限り、子供も大人も、雪だるまやそりで大はしゃぎである。
東京なら多分、電力会社や鉄道の人たちが徹夜で除雪作業など頑張り、サラリーマンも早起きして、電車やバスを乗り継いで、止まっている区間は歩いたりして会社を目指すだろう。
普通の多くの人のまじめさと頑張りが、きちんと機能する日本社会を支えていると思う。でも、もし新型インフルエンザ流行のような非常事態になったら……。責任感や頑張り、我慢が災いしないといいけれど。
マスクをかけ、小さくせき込む人たちが詰まった通勤電車の中で、生き残るのはどんな社会だろう、と思ったりする。(経済部)
毎日新聞 2009年2月13日 東京朝刊
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