同僚の藤原規洋論説委員が本欄で、大阪駅北側の再開発予定地・梅田北ヤードを「いっそ森にしよう」と提言したら、多くの読者から賛同の声が届いた。
意を強くして「問題はお金だね」と話し合っていたところに、関西経済同友会が「グリーンパーク実現に向けて」と緊急提言を出した。
同友会は、大阪市が土地を随意契約で購入し、淀川から水を引き込んで水都・大阪再生のシンボルとなる都市公園に、とアピールしている。
土地代の試算は約650億円。これは大阪市が所有する255ヘクタールもの未利用地の活用や公園整備に目的を限定した地方債の発行、公園のネーミングライツ(命名権)売却、企業や個人の寄付でまかなえばいい、という。
経済界の発案だけに、そろばん勘定はつじつまが合う。富山市のLRT「富山ライトレール」が駅設備の命名権商法で経営の一端を支えている実例だってある。「森と水の大阪」のビジョンを掲げて、市民の協力を求めるのも、すがすがしくていい。
実現すれば、市民の憩いの場、災害に備えた巨大空間が生まれるばかりではない。大阪湾から淀川を通って都心の梅田まで、浜風が吹き抜ける緑の回廊ができる。
建設中の大阪駅や周辺ビル群の屋上、壁面緑化を進め、緑の回廊を主要街路に延ばしていけば、ヒートアイランド現象を和らげ、住み心地を改善するのにどれほど役立つことか。都市の価値と品格を高める効果は計り知れない。
ゆとりの切り捨てがまかり通る時代だ。これぐらいの夢がないと、息が詰まる。(論説室)
毎日新聞 2008年9月28日 大阪朝刊
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