わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

こんな時こそ=与良正男

2008-05-24 | Weblog

 永田町近辺を歩いていると「国会はなぎの状態になった」という声を耳にする。

 ガソリン税の暫定税率は復活。来年度から一般財源化するという福田康夫首相の方針とはまるで矛盾する改正道路整備財源特例法も衆院で再可決・成立した。で、例によって与党は「ああ疲れた」とばかりに一服している。

 野党も参院での首相に対する問責決議案の提出を「首相に無視されるのなら仕方がない」と先送りしてしまった。衆院解散・総選挙は秋以降という見通しが強まり、6月15日までの今国会は消化試合とさえ言われる始末だ。

 さすがにそれでは国民は許してくれないと思ったのだろう。福田首相が現行のキャリア制度廃止などを盛り込んだ公務員制度改革基本法案をこの国会で成立させるよう与党に要請したという。

 当然である。国民に負担増を求めるには政府が自ら身を削る努力をしないことには話にならない。無論、この法案ですべてが解決するわけではないし、法案の個々の中身には問題点もあるが改革の一歩にはなる。

 願わくは、首相のポーズだけに終わらないことを。民主党も「やる気のない自民党を揺さぶる」という駆け引きにとどまらず、むしろ、議論をリードし、よりましな法案に修正した方が国民は拍手を送るのではないか。

 私は今も早期に解散すべきだと考えているが、なぎだからこそ冷静な議論ができて与野党の実像が見えてくる可能性もある。だれもができるはずがないと思っている法案が成立する。そんなサプライズ劇をたまには見たい。(論説室)




毎日新聞 2008年5月22日 東京朝刊

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