ビジネスマン向け経済誌などで介護に関する記事が目立つようになった。「介護は嫁の務め」というのも昔話で、厚生労働省の07年調査では親や配偶者を介護する人の3・6人に1人が男性になった。
滋賀県湖南市の事務職員、鈴木強さん(58)は今夏、思い切って職場に18日間の長期休暇を申し出た。向かったのは89歳の母が住む山梨の実家だ。母は長年の父の介護で足腰を痛め、今は「要介護5」だが、施設が嫌いなのでヘルパーを1日3回呼び1人暮らしをしている。
夜は周辺に住む子らが当番制で泊まり込む。妹たちは総菜を作りためて帰る。女手だけに頼らず、兄たちも当番の夜は職場から実家に直行し、一晩見守り翌朝そのまま出勤する。費用も全員で分担している。
7人きょうだいの中で鈴木さんだけが遠方に家を構え、費用面でしか参加できない負い目を感じてきた。休暇中はみそ汁を作り、米を炊いた。自分が10分で済む食事が母には1時間かかる。でも気長に付き合ううちに母は食欲を取り戻し、顔に赤みがさし、口数も増えていった。高齢者のペースに合わせた介護の大切さと難しさ。その一端を、身をもって知ったという。
「それにしても、私が一人っ子だったらどうなっていたのか」と鈴木さんは考え込む。少子高齢化は働き盛りの男たちにも重くのしかかってきた。
介護に詳しいジャーナリストの太田差惠子さんは「専門家や近所の人も含めたチームを組み、ビジョンを練り、時に軌道修正する。仕事のノウハウを生かして」と戦略性を説く。介護にも、仕事に劣らぬ覚悟が求められる。(生活報道センター)
毎日新聞 2008年10月1日 東京朝刊
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