わが輩も猫である

「うらはら」は心にあるもの、「まぼろし」はことばがつくるもの。

1968年=坂東賢治

2008-05-24 | Weblog

 米国にとって1968年は時代を画する年だった。40周年を記念するタイム誌の特別号は「過去と未来を切り裂くナイフの刃」と表現している。戦後生まれのベビーブーマー世代がベトナム戦争や既成秩序に異議を申し立て、文化や価値観が大きく変化した。

 政治を揺るがす事件も相次いだ。3月末に民主党のジョンソン大統領が反戦運動の高まりを受け、再選を断念。直後に黒人運動指導者、キング牧師が暗殺された。6月には民主党大統領選候補指名争いに挑んだロバート・ケネディ上院議員も銃弾に倒れた。

 4年に1度の大統領選。ベトナム戦争とイラク戦争。現職大統領の不人気と変化への期待。こうした類似性もあるからだろう。米メディアでは40年前と今回大統領選を比較する報道が目立つ。

 当時、大学生だったクリントン上院議員(60)は共和党支持から民主党の反戦候補支持にくら替えした。いわば当事者だ。初の黒人大統領を目指すオバマ上院議員(46)もキング師やロバート氏の言葉をたびたび引用している。

 民主党には苦い記憶もある。プロの政治家が党を牛耳っていた時代。予備選に参加しなかったハンフリー副大統領が党大会で大統領候補に指名され、「ブローカー政治」の批判を浴びた。本選では共和党のニクソン氏に敗れた。

 長引く予備選に民主党内には68年の再現を警戒する声がある。劣勢のクリントン氏が党大会決着に持ち込むことを心配しているのだが、おそらくそうはならないだろう。クリントン氏は68年の党大会に参加し、幻滅を味わっている。引き際は心得ているはずだ。(北米総局)




毎日新聞 2008年5月19日 東京朝刊

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