暁の雲(平安語調平成日誌)

花をめで 鳥をうらやみ 霞をあはれびつつ
露をかなしぶこころ ここに記す
秋の月を見るに 暁の雲に会へるがごとし

薄明光の午後

2011-04-30 | 樹木・植物・動物・有職故実

卯月二十七日 申の刻かと思ふ頃ほひになりて
ふと 見上げたる 桔梗の色のごとき天に
かまびすしきエンジンの音を置きて やがて行く影ありけり

小半時ばかり過ぎたるに
軒の上より射し来る光ありて 春にはあらぬが・・・
「久方の光のどけき・・・」など ささめきゐる

身を乗り出だして 遠く 天を仰げば

大いなる雲のほころびより もれ出づる白き光明の

くの字に曲がりて

やがて広ごり

やがてすぼまる
♪・・・光良し 雲良し と ひとに告げやらば 来てふに似たり 待たずしも あらず・・・♪(本歌692古今)

夏の夕 愛で惑う花

2011-04-27 | 樹木・植物・動物・有職故実

こ は 八重の 堅き つぼみにて

つやめく葉のさまも  しめやかに

虫さえ 遊び来たるも いとをかしく つらつら眺めたるに・・・

卯月十日 奥ゆかしふ あはれに 開きけり

露けき姿に
婆様 「芯のなければ 受けられぬ様は もて悩み種(ぐさ)なり」などいふも
「見るべき人見れば 気高く 恥ずかし」など 返す

この椿 名をば 三浦乙女 といひたり

馴れ睦びたき花 とは かくあるをいふべし

いと 清げなること 限りなし

おぼろ夜の月に くらべて

2011-04-24 | 樹木・植物・動物・有職故実

去るほどの 如月の月は 隈なく
氷(ひ)のごとく 透ほりて さゆるなり

欠けゆくままに 明け残りたるは 更にもいはず

こは 弥生二十日の月にして ゆゆしとまでは思はねど
雲の奥のかたにありて ものうげなり

遠く 見ゆる月

残りたる月

雲を 友と為し

雲に まがふ月

この卯月十九日には 雲の天蓋に宿りたる姿 ふと心寄せに見る

♪・・・おほかたは 月をもめでじ これぞ この つもれば 人の 老いとなるもの・・・♪(879古今)

玉敷きの花散る里は・・・

2011-04-22 | 樹木・植物・動物・有職故実

ありつる薬師 研修医にぞなりたる と言ひて ほこらしげにもてなし
ほどなく 都のがりかへりぬ  さて 送りせしのちに

玉敷きの都の内よりも めでたきさまになむ 会ひぬる

こ は 

濃き

薄き

ふたつながら 並び立ち

樺(かば)の肌まで つやつやしく めづらかなるに まして・・・

花は さらなり

八重なるも 今めかしう・・・

散りたる下(もと)に

椿さへ 色そふるは いとをかし

♪・・・散ればこそ いとど桜は めでたけれ 憂き世になにか 久しかるべき・・・♪(82伊勢)

猛き薬師 (たけきくすし)

2011-04-21 | 樹木・植物・動物・有職故実

ありつる せうそこのこと

おとなはむ とありし日には 来ず

明けて おぼつかなき朝(あした)・・・ 
おどろおどろしき轍(わだち)のきしみに おどろき 門を出づれば・・・ 

猛き薬師 見えにけり
「その なり は?」(00;)と問へば
「はははははははは・・・しどけなければ?!」などと 笑へり

かの 若若しきさまは いまは つゆ無く

されど 勧進(くわんじん)坊主の ものしたまうやうなる姿 いと 萎(な)えばめり

ともかくも  遙(はる)けきほどに・・・大人しくなりたまひけるかな・・・など思はるるに

「なべて 形より入るが うつつ世のならひ なり!」など しきりに 気色だつ

♪・・・宮城より 朝立ち来れば ばうぞくの わだち鳴くなる 明けぬ この夜は・・・♪(本歌1071古今)


  

脂燭(しそく)のあした・雪の下・・・襲(かさね)の松は黄昏に

2011-04-20 | 樹木・植物・動物・有職故実

卯月半ば 寒の戻りに 澄みわたりたる あしたは 
よし 脂燭(しそく)の襲(紅梅・紫)に ぞ 似たるかと・・・

ならば 更に 白みたる様は・・・
こ は 雪の下(白・紅梅)かと・・・など 思ふ

昼になりて 北風 いとまなく吹き抜けし後に・・・

逆巻く波を見渡せば

ひねもす 眺めやる空は 飛沫(しぶき)のごとく荒れたる野辺になりぬ

黄昏れては・・・松(青・紫)となり
来ぬひとの・・・など 思ひて ひがな一日 尽きぬ
♪・・・六つとせに ひとたび 来ます 君待てば 宿かす人も あらじ とぞ思ふ・・・♪(本歌419古今)

六とせ過ぐす・・・机上(テーブル)のヤシ

2011-04-18 | 樹木・植物・動物・有職故実

今は 三尺にあまる この いかめしきヤシは

「われ 必ずや 猛き(たけき)薬師(くすし)になりて帰らむ!」といひて
陸奥に旅立ちし若き人の 「いざ 捧げん」などとて 寄越せしものにて
初め はつか三寸の いと かなしき姿したりしに

いかがはせん・・・
ふたとせ の のち
かやうなる 若芽の 出で来たりて

茎を 広げ

玉を 結び

色を 添え

黍(きび)のごとき 花 いとどしく

羽根のごとく 広ごりたる葉のかげに かしこく見えし花のさま いみじく をかしく
かの 若人の 幼き面影 思ひ出だしたる よすが とや なしつつ経るほどに

六とせ の のち 末広がりに広ごりたる かく 大いなる 扇うちわのごときさまの
けしうはあらぬが・・・(・・;)

玉垂れの 色 移ろひて・・・

やがて ほとほとと こぼれ

拾ひても やがて こぼれ

あきらめゐたるが・・・弥生二十日 寄越せし せうそこに「事なくなしたり 
されば ほどなく参らむ」など めでたき知らせあり
♪・・・風吹けば 落つる 黄実の香 水 清み 散らぬ 影さえ 底に 見えつつ・・・♪(本歌304古今)  

 




あさぼらけ 茜の空に 時を聞け

2011-04-16 | 樹木・植物・動物・有職故実

ひまもなく 鳴りすさむ ケイタイ とやらいう 宿直(とのゐ)の音に

強いて おどろかれぬる 暁の空 やがて 白みて・・・

「いかがしたらむ?!」など 問へば

「何事 思ひたまふ ぞ?」など 婆様のこゑにて いらふ

「そ は 吾が言いぐさにつかうまつらむ」など 返せば

「枕の下に置き 寝ねしが・・・あざむかれぬる・・・購ふ(あがふ)は ぬし なり」など 答ふ

♪・・・あかねさす どこもかしこも標(しめ)はあらず 冊子は見ずや きみが修理職(しゅりしき)・・・♪
(本歌20万葉)

みやびの花か 京錦(けふにしき)・・・

2011-04-15 | 樹木・植物・動物・有職故実

やうやう 夏めきたる陽気に

いと まどかなる面(つら)に あまた 日を浴びて

ほころび

咲き出づる

大輪の花あり

濃き 薄き ふたつながら 共に幹を同じふして 宿るが

京の錦のやうなるによりて 京錦とや いふらむ・・・

婆様 「いと 雅なる花なり なつかしく・・・」などいふ

「この 大いなる面(つら)が?・・・あやにく・・・」(00;)

斜に見れば ただ 荘厳を通り越し ふつつかに太きさましたるは いと あさましく・・・
など 思ぼゆ
♪・・・京錦 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも・・・♪(本歌406古今)

灌仏会 あふぎし花は・・・

2011-04-14 | 樹木・植物・動物・有職故実

卯月八日 かひなき用ありて 徒より参る

♪ ねがわくは 花の下にて 春 死なむ・・・♪ など 歌ひて そぞろ 行けば

!・・・(>0<;)

かやうなる所に・・・差し過ぐす 憎きカラスの 

事問はぬ木に 住み成すは 情けなし

まして けふは 灌仏会 なるぞかし

われは としごろ 殺生は さらに成さず
しかれど この 仏の花祭りに・・・まこと 卑しきカラスよ と 石を拾ひて 投げてけり

このカラス ひとたび あらぬ方に飛び立ちてのち しばしありて もとの枝に 戻りたり
われをば はしたなむる なめり・・・(~~;)

見上ぐれば・・・雲の花

2011-04-13 | 樹木・植物・動物・有職故実

卯月七日あまり 見上ぐれば
幹を そびやかしたるやうなる雲 出でたり

月に桂のたとえもあれば
たまさかの 空の花かと おぼゆ

雲にまがふて咲く花は・・・ いな   

♪ 雲の ほかには 花ばかり 花ばかり・・・かと 見継ぐままに
 
こは まことは 花にまがふて咲く雲なりけり

雲の花 やがて 幹を広げつつ 東の空に 飛び行けり

♪・・・あふぎ見る 夢をはかなみ まどろめば いや はかなにも なりまさるかな・・・♪ (本歌644古今)

花見に参りませう・・・

2011-04-11 | 樹木・植物・動物・有職故実

板橋 といふ所に

小豆沢(あずさわ)なる 沢 ありけり

いまは 沢はなく 暗渠(あんきょ)にして 道を成す

花 見に 行かむ としけれど

心なしの 大いなる車の しげくて われは そぞろ歩きも えなさず

ひとびと あまた 誘ひて道を行けば

心は 花の天蓋に わたし 
時に ざわめきたる地上のひとびとの様も 罪せず
♪・・・春やあらぬ 友や 昔の友ならぬ 我が身一つは もとの身にして・・・♪(本歌747古今)
  

春は あけぼの・・・夏は 夜・・・?

2011-04-09 | 樹木・植物・動物・有職故実

如月十日 やうやう 白く なりゆく程に
天蓋に 龍 ゐて・・・

やがて 紫だちたる雲も 消え
龍に 目 の入る 異様(ことざま)の空 あらはれぬ

あさなあさなに 唐めきたるは 春の雲
たちばなの実にも似て 金紙 敷き詰めたるやうに見ゆるもまためでたく 
つとめて 起き出したる かひもあるかと おぼゆる

弥生のころは あからさまに来たる人のあれば ならひつつすぐすものぞ・・・
こたびは
恐れの中にも 恐るべかりけること 続けば 眺め暮らすことのみ 多かり

卯月 皐月 水無月は 夏なり

暮れゆく野辺を見渡すに 惑ひ残るは 光のみにて・・・こ は 皆紅(みなぐれなゐ)の空を見上げつつ

♪・・・起きもせず 寝もせで夜を明かしては 夕べを朝とて ながめくらしつ・・・♪


 

花は 盛りに・・・

2011-04-06 | 樹木・植物・動物・有職故実

卯月五日 花の 未だ 匂うがごとく とは 言ひ難けれど
去年(こぞ)見し花の枝(え)のゆかしさに また 宿を出づ 

あゆむままに 霞(かすみ)に いり隠れもてゆくやうなるここちに

とや かくや いみじう咲きたる と 思ひつつ そぞろに行けば 

かまびすしきわらはべどもの あまた駆け巡るさまの わりなくおもへば 遠目に見やりて すぐすに
なほ 親の わろうも おどろおどろしき声音(こわね)にて 頻く(しく)叱りたるさへ きこゆ

たをやかなる花の枝(え)に 「あれは 届くべからん」とて 飛びつかんとすれば
眼(まなこ)をののき 点となり 花も見さして 逃げにけり

年々歳々 花相似たり
歳々年々 人こはれ行く か  いまだ なべて白髪ならぬも 悲しくぞ 思ふ 

♪・・・春の野は けふこそ焼きそ 若草の 親もこもれり 鬼もこもれり・・・♪(本歌17古今)


棚木猫(たなぎねこ)様 おはして・・・

2011-04-04 | 樹木・植物・動物・有職故実

如月の頃 たはむれし猫どもは

「こちて こ」など 呼ぶも
ふたつながら 見交はしゐたりて つゆ こたふるさまなし

「猫の春」とや いふぞかし
 さる夜  うつつに 鳴き明かしたるは これ なんめり 

卯月三日 のら の わらに寝ねたる あれば  後ろの方より 蹴あげてくれむ とて 忍び

すり足して 近く寄れば

のらは ふと おどろき にらみおこせしかど  たへて逃ぐる気配なし
人のわざの ひがひがしからむこと とて とがめたるらん 目のほそきも いとにくし

曲げ木の下に うづたかく積もりたる 松葉にのりて

世俗 離れたるやふなる 渋色の縞の

「棚木猫」とは かくなるを いふか
遠目に 道行くひとびとを まどろみ見やるのみ 
鳴かず 招かず 孤高の天外に ひとり 身を置きたるさまは 人のいろふところならず