今は 三尺にあまる この いかめしきヤシは
「われ 必ずや 猛き(たけき)薬師(くすし)になりて帰らむ!」といひて
陸奥に旅立ちし若き人の 「いざ 捧げん」などとて 寄越せしものにて
初め はつか三寸の いと かなしき姿したりしに
いかがはせん・・・
ふたとせ の のち
かやうなる 若芽の 出で来たりて
茎を 広げ
玉を 結び
色を 添え
黍(きび)のごとき 花 いとどしく
羽根のごとく 広ごりたる葉のかげに かしこく見えし花のさま いみじく をかしく
かの 若人の 幼き面影 思ひ出だしたる よすが とや なしつつ経るほどに
六とせ の のち 末広がりに広ごりたる かく 大いなる 扇うちわのごときさまの
けしうはあらぬが・・・(・・;)
玉垂れの 色 移ろひて・・・
やがて ほとほとと こぼれ
拾ひても やがて こぼれ
あきらめゐたるが・・・弥生二十日 寄越せし せうそこに「事なくなしたり
されば ほどなく参らむ」など めでたき知らせあり
♪・・・風吹けば 落つる 黄実の香 水 清み 散らぬ 影さえ 底に 見えつつ・・・♪(本歌304古今)