暁の雲(平安語調平成日誌)

花をめで 鳥をうらやみ 霞をあはれびつつ
露をかなしぶこころ ここに記す
秋の月を見るに 暁の雲に会へるがごとし

いとも かしこし 香の花

2011-05-28 | 樹木・植物・動物・有職故実

雨上がりに 見上げし橘(たちばな)の木に 黒き大いなる蝶ゐて

そこ ここ 飛びまはる様に 目を凝らしたるに

花たちばなの はづかに見へし 夕べかも・・・・・・・

低き棚には 貴(あて)やかなる茉莉花 こまごま咲きて

夜さりににほふは これか かれか とぞ 思ふ

なにごころなく咲きみだれし様の

銀や

金に

色移れば

なにとやらむ・・・・・・・
♪・・・たれか待つ 花たちばなの香をかげば かさねてかほる 茉莉花(ジャスミン)の色・・・♪(本歌139古今)
 

大儀の「田植え」 今は 無し

2011-05-26 | 樹木・植物・動物・有職故実

武蔵の国 皐月の声を聞けば 処々にため池の目立ちて

こ は 誰(た)が水にかあらざるはなく

大かた 水田を司る 役人の 筋なき管理にくたされて(朽たす:けがす)

やがて そこここの田へ 流れゆく

鍬入れ

代掻きはもとより

今は みな 機械にて取り行ふ農事の暇に 田の養ひ人は 他所にて働くがならひなり

平素 人一人居らぬ田・・・養ふ人の 狭き心根の如くに ちまちまと小さき区画を為し
「何をか分けむ・・・」とぞ 思ひ眺め入るは われのみか・・・?

苗代の苗も 早場米とかや・・・いまだ丈の至らぬを植う

田植え女(め)などは 昔話にしのぶのみにて さらになし

山林・川谷(せんごく)・丘陵に神ありて その財を 民に分かつ・・・

しかして 「田植え」は神事なり

皐月二十五日 今上の帝は 形ばかりの神事を為すのみ

いはむや 下々に於いてをや・・・

田植機にて植えし苗は 七日もたてば はや 丈は倍にならむか?

また七日たてば 緑 一面に敷き詰め

その後は 鴨に頼みの 草取りの畦・・・

あいなだのみの皐月空

2011-05-19 | 樹木・植物・動物・有職故実

皐月八日 東の空 少し明かりて

品品しき(しなじなしき)薄色の空・・・澄み渡る五月の風さえ吹いて

白鳥の 羽根を広げたるやふなる巻雲ありて ひねもす 空 眺めやるに・・・

白妙の薄衣(うすぎぬ)

落ち行く天の羽衣(あまのはごろも)

日に染まる天蓋(てんがい)

どれもどれも 霞(かすみ)を掃き散らかしたるやうなれど

かやふなる空に棲み(すみ)
瞋恚(しんい:怒り恨み)の報い さらになければ・・・
われは・・・国土の衆生ならず・・・業(ごう)尽きにけり・・・
とは 思はむや?
 

木の花は・・・(藤の盛りに 桐を見る)

2011-05-14 | 樹木・植物・動物・有職故実

「枕草子」に 木の花はとあるは これなり

散りたるを 寄りて 足下に見やれば

薄紫の花弁に 鹿の子ちらしたるやうなる 薄き斑紋のある様 
掩い囲みたるミドリハコベの 恥ずかし と思ふまで ひそやかにたふとし

皐月の空に 日をかへし 輝ける木の形

いと かなしふ あはれなり

婆様は 「墓参りには 紫に麗しき 藤の花咲きてから・・・」など言うも

「長き枝に ボテボテと咲きたる藤の 如何せん・・・」など 返す

藤は たふとからず 材は うねうねと曲がるばかりにして 用をなさず
桐は 材の目 密にして 質余り 硬からず・・・故に 箏となし 下駄となす

さも ありつる 撓む(たわむ)心根のまはりに
咲き起こせし房のさま まことにかしこく 人の
かくありがたき姿とぞ思ふ・・・  
♪・・・草深き かすみの谷に 桐かくし 照る日のくれし けふにやは あらぬ・・・♪(本歌846古今)

初夏なる 菖蒲は いづくにか・・・

2011-05-10 | 樹木・植物・動物・有職故実

こ は 卯月二日の空 なり

卯月二日は 旧の如月廿九日なれば

卯月三日は 旧の弥生の朔(ついたち)に当たるべし

五月雨に似合う花の いまだ咲かざるは 如何ぞ・・・

太陽暦 いと あはれなり

五月晴れ とは うつつ世には 水無月の晴れにてさぶらふ・・・

遅れて眺むる 新暦の空に
♪・・・はつなつの はつかに声を聞きしより 中空にのみ ものを思ふかな・・・♪(本歌481古今)

五常(義・慈・友・恭・孝)備はる 蓮華草

2011-05-03 | 樹木・植物・動物・有職故実

卯月二十七日 レンゲの初つ見す

こ は うつくしき女児に似てけり

影は 薄く 未だ 冴え渡らねど

行き行くままに 色を添え

群れ生ふ姿は 畑の条理に従がうが 和ごし(なごし)

側目(そばめ)に見れば 

めぐみ深く 土に親しく

窒素同化なる行ひの すぐれて

斯く 丈もいたらぬに うやうやしくぞ見えける

はるかなる野辺に まめまめしく継ぎ行く様は つれなくも見えで 孝あるやうにおぼゆ

蓮華田の 吾が濁心を洗へば 則楽その中にありて

大地に 千畳のをみなごの香 有るがごとし