モスクワに住んでいると、「詩」というものがどれほど深く人々の生活に根付いているか実感させられることが多々あります。
若者に人気のあるロックやポップスの歌手たちが、「古典」とも言える詩人たちの詩を歌詞にした歌を歌っていたり、何気ないビジネス会話の端々に詩の引用が出てきたり・・・。
テレビのコマーシャルなどもその良い例です。
最近のロシアのテレビは、良し悪しは別にして、全体的に内容が単純化してきたように思われます。各局の番組そのものもそうですが、特にコマーシャルは直接的なもの、判りやすいものが主流になってきたようです。
しかし中には「忘れられない名作」というものもあります。
そうした「忘れられない名作」の一つが、現代のロシア映画界を代表するティムール・ベクマンベトフ監督が撮った「スラヴャンスキー銀行」のコマーシャル「詩人シリーズ」です。
(ベクマンベトフ監督の写真はこちらから)
2007年に放映されたCM「スラヴャンスキー銀行」の「詩人シリーズ」は、アンジョリーナ・ジョリーを主演にむかえた『ウォンテッド』(2008年日本公開)でハリウッド進出を果たしたカザフスタン生まれで現在はロシアで活躍をしているティムール・ベクマンベトフ監督が、1993年から1996年にかけて撮影した一連のコマーシャルで、世界の広告業界でも様々な賞を受賞しています。
詩人マンデリシュタームが17歳の時に書いた『クリスマスのもみの木が、森の中で金箔色に燃えあがる・・・』という有名な詩も、この、ベクマンベトフ監督の「名作」=「スラヴャンスキー銀行」のCMシリーズに使用されています。
わずか1分間という短い時間の枠組の中に、マンデリシュタームの詩作品が持っている特質、そしてマンデリシュターム自身の悲劇的な人生を凝縮させた、一度見たら忘れられないみごとな作品です。
銀行そのものの「宣伝」は、「スラヴャンスキー銀行」というロゴの表示のみで、あとはベクマンベトフ監督の独特な映像美と、マンデリシュタームの詩の朗読によって1分間が構成されています。
『クリスマスのもみの木が、森の中で金箔色に燃えあがる・・・』という、ロシアの子供たちが高校で習う有名な詩と、「スラヴャンスキー銀行」とのつながりは全く不明です。・・・というか、つながりは「ない」のでしょう。
もともとこの詩はマンデリシュタームの孤独や疎外感、「宗教」との複雑な関係といったものを描いたものです。
ベクマンベトフ監督はこの「孤独」や「疎外感」の上に、更にマンデリシュタームの人生を飲み込むことになる歪んだ時代の姿をオーバーラップさせています。
どちらかというと、映像や詩が「スラヴャンスキー銀行」を宣伝しているというよりは、「スラヴャンスキー銀行」がスポンサーとなって、マンデリシュタームの詩を原作としたベクマンベトフ監督の1分間の「映画」を放映している、といった印象を受けます。
百聞は一見にしかず。
動画はこちらから観られます。
(ちなみに下記詩の訳文も掲載しましたが、この訳文を読むよりも、動画を見た方が詩の内容がわかりやすいと思います・・・)
『クリスマスのもみの木が、森の中で金箔色に燃えあがる・・・』
Сусальным золотом горят
森の中でクリスマスのもみの木が、
金箔色に燃えあがる。
潅木の間からは、おもちゃのオオカミたちが
恐ろしい目で睨んでいる。
ああ、予見力のあるわたしの悲しみよ、
ああ、静かなわたしの自由。
そして死んだ天空の丸屋根の
笑い続けることをやめないクリスタル!
Osip Mandelstam
若者に人気のあるロックやポップスの歌手たちが、「古典」とも言える詩人たちの詩を歌詞にした歌を歌っていたり、何気ないビジネス会話の端々に詩の引用が出てきたり・・・。
テレビのコマーシャルなどもその良い例です。
最近のロシアのテレビは、良し悪しは別にして、全体的に内容が単純化してきたように思われます。各局の番組そのものもそうですが、特にコマーシャルは直接的なもの、判りやすいものが主流になってきたようです。
しかし中には「忘れられない名作」というものもあります。
そうした「忘れられない名作」の一つが、現代のロシア映画界を代表するティムール・ベクマンベトフ監督が撮った「スラヴャンスキー銀行」のコマーシャル「詩人シリーズ」です。
(ベクマンベトフ監督の写真はこちらから)
2007年に放映されたCM「スラヴャンスキー銀行」の「詩人シリーズ」は、アンジョリーナ・ジョリーを主演にむかえた『ウォンテッド』(2008年日本公開)でハリウッド進出を果たしたカザフスタン生まれで現在はロシアで活躍をしているティムール・ベクマンベトフ監督が、1993年から1996年にかけて撮影した一連のコマーシャルで、世界の広告業界でも様々な賞を受賞しています。
詩人マンデリシュタームが17歳の時に書いた『クリスマスのもみの木が、森の中で金箔色に燃えあがる・・・』という有名な詩も、この、ベクマンベトフ監督の「名作」=「スラヴャンスキー銀行」のCMシリーズに使用されています。
わずか1分間という短い時間の枠組の中に、マンデリシュタームの詩作品が持っている特質、そしてマンデリシュターム自身の悲劇的な人生を凝縮させた、一度見たら忘れられないみごとな作品です。
銀行そのものの「宣伝」は、「スラヴャンスキー銀行」というロゴの表示のみで、あとはベクマンベトフ監督の独特な映像美と、マンデリシュタームの詩の朗読によって1分間が構成されています。
『クリスマスのもみの木が、森の中で金箔色に燃えあがる・・・』という、ロシアの子供たちが高校で習う有名な詩と、「スラヴャンスキー銀行」とのつながりは全く不明です。・・・というか、つながりは「ない」のでしょう。
もともとこの詩はマンデリシュタームの孤独や疎外感、「宗教」との複雑な関係といったものを描いたものです。
ベクマンベトフ監督はこの「孤独」や「疎外感」の上に、更にマンデリシュタームの人生を飲み込むことになる歪んだ時代の姿をオーバーラップさせています。
どちらかというと、映像や詩が「スラヴャンスキー銀行」を宣伝しているというよりは、「スラヴャンスキー銀行」がスポンサーとなって、マンデリシュタームの詩を原作としたベクマンベトフ監督の1分間の「映画」を放映している、といった印象を受けます。
百聞は一見にしかず。
動画はこちらから観られます。
(ちなみに下記詩の訳文も掲載しましたが、この訳文を読むよりも、動画を見た方が詩の内容がわかりやすいと思います・・・)
『クリスマスのもみの木が、森の中で金箔色に燃えあがる・・・』
Сусальным золотом горят
森の中でクリスマスのもみの木が、
金箔色に燃えあがる。
潅木の間からは、おもちゃのオオカミたちが
恐ろしい目で睨んでいる。
ああ、予見力のあるわたしの悲しみよ、
ああ、静かなわたしの自由。
そして死んだ天空の丸屋根の
笑い続けることをやめないクリスタル!
Osip Mandelstam
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