Life in San Francisco

Welcome!
サンフランシスコ在住のフローラルデザイナーです。
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インスピレーションのアンテナ

2007-02-20 07:24:01 | フローラルデザイン
地獄のヴァレンタイン・デーは無事に終わったものの、その後もいくつかの大きな仕事が入っていたので、結局、昨日の日曜日まで休みがありませんでした。特に、今年のヴァレンタイン・デーは例年以上に忙しく、連日連夜16時間近い労働が続いたために、疲労もマックス状態に・・・。なので昨日の日曜日が待ち遠しく、それこそ先週は、遠足の日を指切り数える小学生のような心境で過ごしていました。

そして、待ちに待った日曜日! 当日は簡単な朝食を済ませ、サンフランシスコにあるアジア博物館(asian art museum)へ行って来ました。



このアジア博物館ですが、サンフランシスコにある数ある美術館/博物館の中でも、特に僕とケヴィンのお気に入りです。恒久コレクションの展示もすばらしいのですが、それ以上に楽しみにしているのが、定期的に催される特別展示。今回は、日本の竹細工とインドの宮殿をテーマにした美術展の二本立てだったのですが、もちろん僕たちが目当てにして出かけたのは、竹細工の展示と、それに伴うデモンストレーション。日本から招かれた竹細工のアーティストによる実演だけではなく、実際に竹を使って籠などを作るための体験コーナーなども設けられて、日曜日ということもあり、この日の博物館は満員御礼の入り。楽しいひと時を過ごして来ました。


このイベントのために、別府からいらしたKibe Seiho氏によるデモンストレーション。とても興味深い話を聞くことができました。


会場に設けられた「体験コーナー」


ところで、少々話しが外れますが、よく、いろいろな方から、「マシュウは他のフローラル・デザイナーの作品も参考にしているのか?」と尋ねられることが多いのですが、その答えは「NO」。おそらく、フローラル・デザイン業界で活躍している数多いデザイナーの中でも、僕ほど、他人の作品を見ない人もいないんじゃないか、と思うくらい、滅多に他のデザイナーの方の作品は見ません。もちろん、大学でフロリストリーを専攻した際には、フローラル・デザインの基礎を徹底的に勉強しましたし、有名なデザイナーの方の作品もたくさん見て研究をしました。(強いて挙げるなら、オブジェのような作品が美しいダニエル・オスト氏のセンスが好きです)。とは言え、今現在は、自分のスタイル(草月流いけばなとヨーロピアン・デザインのミックス)もある程度確立されていますし、僕の場合、他のデザイナーの方の作品を見ると、逆に混乱してしまうって言うのでしょうか、いろいろなものを見過ぎると、自分のクリエイティブな部分をニュートラルな状態に保てなくなってしまうのです。まあ、それが主な理由なのですが、それはあくまでもフローラル・デザインの世界に限ったことで、自分の創作意欲をインスパイアするために、他分野の芸術を鑑賞するのは大好です。例えば、絵画や写真からは、色の組み合わせや構図などをインスパイアされることが多いですし、彫刻からはバランスを、音楽からはハーモニーやリズム感などをインスパイアされ、それらが、僕の作り出すフローラル・デザインのインスピレーションの源になっていると言っても過言ではありません。特に、日本の伝統芸術に於ける、余分なものを一切取り除き、核の部分に焦点を絞り込んだミニマリズムからの影響は、かなり強く受けていると思います。

そんな訳で、日本の竹細工の伝統をテーマにした今回の展覧会を、とても楽しみにしていたのです。

会場に着き、早速、ところ狭しと展示された美しい竹細工の作品を見て回ったのですが、一言に竹細工とっていも、バリエーションも豊富。花器や籠という比較的実用的なものもあれば、抽象的なオブジェのような作品まで、実に様々です。そして僕はと言えば、これらを見ている間、ずっとインスパイアされっぱなしでした。僕の頭のてっぺんからニョキッと伸びた見えないアンテナに、実にいろいろなものが引っかかってくるのです。

例えば、左右対称に美を見いだすヨーロッパのデザインと比べ、日本の伝統芸術には、微妙なバランス感や緊張感を左右比対称な造形の中に巧みに作り上げる独特の美的センスがあると思うのですが、今回、展示された多くの竹細工の作品も、左右比対称のものが数多く見られ、この絶妙なバランス感覚が、僕の創作意欲をこれでもか~、って言うくらいに刺激し、この日だけでも、いろいろなアイデアが湧いて来ましたし、例えば、いろいろな種類の竹の編み方。ここからも、日頃、枝ものを編んだものを自分のデザインの中に取り入れることが多い僕としては、たくさんのヒントを得ることができました。


数ある竹を編むテクニックを紹介したパネルの中の一枚。





僕のアンテナへインスピレーションを飛ばしまくりの美しい竹の作品たち。

そんなこんなで、僕にとってはとても実り多い体験だったわけですが、ケヴィンもいろいろなインスピレーションを得たようです。この先、僕たちの作り出す作品に、この日の貴重な体験がどんなふうに影響していくのか、ぼくとしても非常に楽しみです。




そして、先日、友人のchirstine doughrtyの水彩画の個展へ出向いて来ました。彼女の別名は、「布の魔術師」。本職はオフ・ブロードウェイなどの舞台衣装を数多く手掛けるデザイナーで、かのクリストの筆頭アシスタントでもあります。彼女の手に掛かった布は、たちまちに美しい芸術へと姿を変えるのですが、彼女は、舞台衣装デザイナーという本職の他に、水彩画を描くアーティストとしての顔も持っています。



今回の個展も、彼女の描いた水彩画を展示したものだったのですが、今回の個展のテーマは「雲」。色合いは、彼女の好きなブルーからピンクにかけてのグラデーションで描かれたものが中心。というわけで、初日の晩に行われたリセプション・パーティのお祝い用の花を贈る際に、「雲」と「ブルーからピンクにかけてのグラデーション」からヒントを得て、こんなものをつくってみました。


花器にこれらの色合いの花をパヴェ状に配置し、その上にコットンとかすみ草で作った雲を浮かんでいるかのような作品を作ってみました。

雲部分。



そ、し、て!(そう、まだあるんです。スミマセン!!)

今回のエントリーの締めを括るのは、「今回のフローラル・コーナー」。

今回の作品ですが、僕がデザインをする際に取り入れるテクニックのひとつに「コントラスト」というものがあります。この「コントラスト」ですが、それは色(淡い色 VS 濃い色)であったり、テクスチャー(柔らかいもの VS 固いもの)であったり、平面と立体感の対比だったり、それは実にいろいろです。

このコントラストをひとつの作品の中に取り入れることで、作品の奥行きを深めたり、緊張感を高めたりする効果があります。

そして、今回の作品を作るにあたってイメージしたのが、直線 VS 曲線」。そして、ピンクと赤以外の色合い(・・・だって、ヴァレンタインでさんざん使った色合いなので、今週はこの2色だけは使いたくなかったのです)。

リバーケーンで編んだ直線群と、オーニソガラムで描いた曲線の対比が、作品全体に動きを与えてると思いますが、いかがでしょう? (ちなみに、フォーカル・ポイントに使った花は、黄色のシンビジウムです)

オブジェっぽい、スタイリッシュで無機的な感じの、僕らしい作品に仕上がったと思います。


全体像


クローズアップ1


クローズアップ2

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38 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お、一番ゲット! (yori)
2007-02-20 19:10:46
マシュウさんこんばんわ。
お疲れ様でした。16時間労働だなんて、脱帽です。竹細工ってあんなものまで作ったりするんですねえ。日本にいながら知らなかったなあ。恥、、、。
 雲がテーマの作品、腕が違うとはいえ、素敵ですねえ。私が未だに雲が苦手で不自然無くもばかり描いていますよ。にもかかわらず今度は夕焼けを塗る予定。
 マシュウさんの今日の活け込み、楽譜みたいですね。5線に♪が並んるみたい。色も黄色でリズミカルな感じがして音が聞こえそうだな~。
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いつもお花をありがとう (navi)
2007-02-21 00:40:51
初めて書き込ませて頂きます。韓国から拝見させて頂いてます。いつも気分良くさせて頂いてます。お花をありがとう!!(今回も!)
竹、いいですよね、私も好きです。
LAにいる友達が、竹で絵を描いて(編んで)います。平面ですが、光の加減で透けたり見る角度によっても大分印象が変わり素敵です。宜しかったら見て下さい。(www.chaayounwoo.net)
11月にその友達たちと行ったケヘナ!行かれたんですね。(うー行きたいっ!)お外で裸、くせになります。あの気持ち良さが思い出されます。(他のヌーディストビーチは知りませんが)ケヘナ、特に日曜日!は年齢層も広くてのんびりしてて良かったー。ウチの旦那さんが、あれでカップルばかりだったら全然雰囲気違うだろうなーと言っていました。
グリーンサンドビーチは行かれましたか?サウスポイントの近くでしたがここも良かったです。ただ道が凄いんです。車を止めて行こうかどうか悩んでいる人もいました。オフロード!(四輪駆動に乗ってまた行くぞー)名前の如くビーチは緑!!不思議です。
私も友達がエフアナニ(ボルケーノジャングル)に住んでいます。ヒロの美味しいレストラン、是非教えて下さい。
他の方の作品はあまり御覧にならない、と言うのもとても良く判ります。
これからも楽しみに拝見させてくださいね。ではアンニョン。
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Unknown (モモねこ)
2007-02-21 12:02:20
お仕事地獄、お疲れ様でした!

竹細工、いい物ですね。
お茶席でもよく見ますが、ワビサビにピッタリくると言うか。。。
でも、これも、きっとマシューさんの手にかかれば、全く違ったイメージになるでしょうね!
う~ん、いつか見てみたいです。
日本びいきなお客様、いらっしゃらないかしら^^

雲をテーマにした作品、びっくりしました☆
本当に、水彩画のようですね。
足元のブルーが、効いてます。
まるで、湖と雲の描かれた風景画。

マシューさん、今日もホッとできました。
ありがとう。
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素敵な雲 (Haochi)
2007-02-21 15:32:29
いつも楽しく拝見させていただいております。
乗り心地のよさそうな雲
見ているだけでうれしくなります。

ほんとうにお花。。。ですよね。

ほお~っとさせていただきました。
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竹細工好き (claudia)
2007-02-22 09:08:18
こんにちは。
竹細工や日本の手仕事が大好きな私。このエントリーは興味津々で読みました。こういった日本の素晴らしい手仕事が海外で知られることは嬉しいことです^^
日本のベタな民芸的な見せ方と比較すると、コンテンポラリーで洗練された感じ。華美でなく、もとは実用的なものとして作られた機能美が見直されていることが、数少なくなった日本の職人さんたちの励みにもなりますね。
若いころは、目を向けなかった日本の手仕事。
海外のいろんなものを見て一巡したからこそ、日本の手仕事のよさを理解できたのかもしれません。
北欧と東北の手仕事に共通点を見たのも、楽しい発見でした。

漆のエントリーでコメント内でのお祖母さまも、↓のチャーミングなお母様もとっても素敵。
以前お話にあったドイツに行ったお祖父さまも、お父さまも、matthew家の人々に興味が沸きます。
「mathew家の人々」の本を出してほしい(笑)
隣のいとこの女性、ちょっと寺島しのぶさんに似てる~
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癒し (kelee)
2007-02-22 18:35:31
こんにちは、竹細工いままでまったく興味も持たずに来てましたが、今回いろいろなデザインの編み込みを見てきれいだな、と思いました。きれいだなあと思いました。また、いつもすてきなデザインで疲れた私を癒してくれてありがと~~~~う!!また、きれいな癒し待ってます。
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お久しぶりです~ (Lili)
2007-02-24 05:40:31
ちょっとまた留守してたのでお久しぶりです~
何と16時間労働と過酷なお仕事されていたのですね、お疲れ様です。
今回の竹細工素晴らしいですね。私もかごとか編むので興味津々ですがこの日本の手工芸の美しさ、何とも繊細でうなってしまう。
matthewさんが他のフローラルアーティストの方々の作品を参考にされないのは良く解る様な気がします。私も自分の仕事をする時には全く違う分野からアイデアやインスピレーションをもらう事が多いです。
今回の作品もいつもながら溜め息ものです。直線と曲線のコントラストが絶妙ですね。お花というよりは本当にオブジェ、芸術作品を見ているようです。
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アジアンビューティー? (ひろ)
2007-02-24 15:53:25
近くに住んでいながら、まだ一度も足を踏み入れたことのなりアジア博物館。いろいろな展示をやっているのですね。竹細工は本当に味があって良いですよね。展示品の写真を見て、改めてアジア人の器用さとミニマリズムに潜む美を再認識しました。自分も今度是非博物館行ってみたいと思います。マシューのインスピレーションは、本当にいろいろなところにあるんですね。雲の作品も、活けこみの作品も、こうやって得たインスピレーションから産み出された作品なんだと思いながら見ると、ちょっと感慨深い感じがします。竹細工の作品達から得たインスピレーションも、今後どんな形でマシューの作品に表れてくるのか、とても楽しみです。
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なるほど~♪ (水樹)
2007-02-24 21:15:10
竹細工にインスピレーションされた感じが出ていますね。そして、そこにはしっかりとマシュウさんテイストも…。素敵ですね~。この直線と曲線の交わり方が何とも言えません。あぁ、アメリカが電車で行けたらな(笑)マシュウさんが日本で活躍するにはきっと、日本は狭いのでしょうねぇ。アメリカのように広い国じゃないとダメなのでしょうね。日本は色々とまだまだ窮屈でダメです。特に私は犬を飼っているのでそれを感じます。アメリカでは信じられないでしょうが、日本ではほとんどの家庭で躾をしないのですよ。犬も猫も躾しないで飼ったら自分たちだけでなく、犬、猫たちにも良くないというのに。それに犬を連れて行ける場所がとっても少ないこと。オープンカフェの外ですら断られたこともあります。昔、アメリカのデパートでボルゾイをブランド物のスーツを着た女性が颯爽と連れて歩いているのを見た時は感動しました。
あ、ところで手紙届いたようで何よりです♪可愛いでしょ♪ちなみに他にも色々あって、シェパの便箋も買いました♪私はメールより手紙が好きです。でも関節の病気が進んで字が書けなくなってしまったのでワープロで失礼しました。短い文くらいは書けるのですけれどねぇ~(汗)やれやれ、治らないし、しょうがないですね。今は便利な時代でパソコンで手紙が書けるので良しとしましょう♪では♪
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素敵! (花の器)
2007-02-26 00:36:42
ホームページにコメント入れて下さってありがとうございます!
そして、そして、リンクも!!!
すごい~って相方と騒いでます(笑)

あの後、こちらに何回かコメント試みたのですが
イマイチ・・・イマジュウぐらいかもしれませんPCの調子悪さ。
今回も届かないかもしれないけど挑戦してみます☆
早く、新しいPC欲しいな~~

マシュウさんが、他のフローラルデザイナーさんの作品を見ないのが何となく解る気がします!
私も同じ考えで、あまり他の人のモノ見ないですね~
モノマネよりも自然と自分の中で湧いてきたモノの方が
作っていて気持ちがいいし、自分らしい(たとえ下手でもね 笑)
あっ、でもマシュウさんのは別です!!
すごい楽しいし、見ていて「あっ、ヤラレタ」って思います。
ダニエル・オスロさん?(だっけ)のヌラヌラした葉使いもスゴイな~とは思いましたが
マシュウさんの色・バランス・発想は本当に「素敵」。
写真からも、とても丁寧に作業してらっしゃるのが伝わってきますしね。
創作意欲湧きます!!!

他の分野を参考にするって言うのも良く解ります。
本当、引き出しは多い方が良いですよね~
日本の文化、自分は大切にしている方だとは思いますが
海外で暮らすマシュウさんから見る日本文化の美しさに
「はっ」とさせられました!

これからのマシュウさん作品がますます楽しみ&自分でも頑張ろうと強く思うのでした。

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