新・シュミのハバ

ついに、定期小説の更新スタート!!!
いつまで、続くのやら・・・。

★この夏おススメの小説10冊☆

2006-07-30 15:17:49 | 
非常に危機的な状況である。
世間では、日本が沈没するやら、美大生の恋物語が展開されるやらしているらしいが、個人的にはそれどころじゃない。

ま、それは置いておいて、夏は上質な小説を厳選して読める良い機会である。
今回は、私的におもしろかった小説をピックアップして紹介していきたい。

この夏、おススメの小説&漫画

1、東野圭吾「赤い指」
→7月25日に発売された、東野圭吾の直木賞受賞後第一作目の作品。
犯罪の先にある本当の闇と、孤独な家族愛を描いた書下ろし長編である。
最近の東野作品の中では短めの作品で、全部読むのにそんなに時間がかからない。
一応シリーズもの「加賀恭一郎シリーズ」ではあるが、加賀作品を一冊を読んでいない人でも楽しめる。
家族愛がテーマの作品と言っても、全体を取り巻く雰囲気は大変ドロドロしていて、大人の中に潜む闇の部分をリアルに表現した展開も多々ある。
だが、完全に隠された衝撃の「真実」と、本物の家族愛に出会う後半の展開は、後味も悪くなく、心から感動できるものである。
また、刑事「加賀恭一郎」の新たな一面も見ることが出来る。
彼の推理は、ただ事件を解決するだけではなく、家族の複雑な心情をすべて読み取って、優しくその部分に触れるようなすばらしいものである。
この作品は、そんな加賀刑事の魅力がたっぷり詰まった一冊である。

もう一言→「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身によって明かされなければならない。」
東野作品が持っている最大の武器は、思いもよらない展開と、ラスト一行の感動であろう。「容疑者Xの献身」にしても「手紙」にしても、後半の感動的な展開は、何度読んでも美しい。「赤い指」も例外ではない。次々と埋まっていくピースから零れ落ちる、悲しくて温かい家族の愛情は、どこか切なくもあり恐ろしくもある。どこまでも繋がっているハズの親子の愛と、大人たちが自らを犠牲にする家族への愛は、どこまでも深い。構想6年の小説の奇跡を、味わってもらいたい。

2、伊坂幸太郎「重力ピエロ」
→圧倒的に高度な実力によって、小説界のエースに立った伊坂幸太郎。彼の代表作「重力ピエロ」がついに文庫化となった。伊坂作品は「陽気なギャングが地球を回す」にしても「オーデュポンの祈り」にしても、哲学的で知的な語り口が、読み手をを飽きさせず、ワクワクさせる非常に爽快な技術を兼ね備えている。その上に感動的なラストが付け加わったらもう、怖いものなしである。伊坂幸太郎、強すぎ!もう、どこにも文句のつけようがない。平成の天才、伊坂幸太郎の名作をぜひ。

もう一言→小説の内容をぜんぜん書いてなかったので、ストーリーを⇒兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは―。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。・・・というのが文庫の裏に書いてあるあらすじ。つまりそういうこと。ってか伊坂作品は読んでみないとそのよさは分からない。内容も分からない。至るところで泣かされる、これこそ小説の奇跡なのではないか。

3、恩田陸「蛇行する川のほとり」
→無駄な部分がすべて削り落とされた本物の傑作とは、こういう小説のことを言うのだろう。この作品で無駄なセリフ、無駄な展開は一文字もない。一文字も、だ。幻想的な雰囲気作り、ミステリチックなセリフ回し、衝撃の階段を滑り落ちていくようなアッと驚く展開、切なくて悲しい真実の物語。すべてにおいて満点を差し上げたい。単なる芸術的な作品で終わらすことはできないが、この作品は本当に綺麗で芸術的という言葉が似合う作品だ。だが、それはこの作品を取り囲むカバーのようなものだ。中身は友情や愛情が入り混じった青くて美しい色と、不思議で恐くて悲しいノスタルジックな色と、懐かしくて澄み切った半透明な色など、様々なカラーに染まった神秘的なものになっている。この夏、静かな部屋でゆっくり読みたい一冊である。

もう一言→言ってみれば罠だらけ。もう一回読めばきっと、また隠されたトリックに気付くだろう。前半だけなら普通の学園ものかな、と思ってしまうが、中盤から後半にかけてやられてしまった。まさかここまでいろんな要素の混じった作品とは思わなかった。演劇祭に向けて、「合宿」を始めた少女たちが行き着く、隠された真実とは・・・。感動的な余韻に浸れる、宝玉の一冊。

4、LOVE OR LIKE「石田衣良、中田永一、中村航、本多孝好、真伏修三、山本幸久」
→前作「I LOVE YOU」に続く恋愛アンソロジー作品。人気作家が描き出す感動に満ちた恋愛作品。オムニバス小説ということで、おもしろさにも並があるが、さすが人気作家の寄せ集め。微妙に揺れ動く恋愛感情を美しい描写で描き出したものばかり。リアルで危ない恋愛を描いた石田衣良の「リアルラブ?」、気付かない恋に苦しみ、そして悲しい事故に隠された真実を探す、中田永一の「なみうちぎわ」、ユーモア溢れる恋愛を描く中村航の「ハミングライフ」・・・など、たくさんの感動が詰まった良質な一冊である。

もう一言→前作に比べてあっさりした印象が漂うが、中田永一の「なみうちぎわ」は名作。また新人の真伏修三の「わかれ道」も分かりやすくてよかった。かなり好みに左右される作品ではあるが、きっとお気に入りの作品が見つかる一冊だと思う。

5、宮部みゆき「火車」
→休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。ミステリー作品では群を抜いておもしろい作品だ。ハラハラする展開、真実が見え隠れする緻密なストーリー、様々な角度から真相を抉り出す圧倒的に凄い一冊だ。宮部みゆきといえば「ブレイブストーリー」や「模倣犯」などドエライ名作を世に残しているが、「火車」はそんな名作たちに負けない名作だと思う。

もう一言→カード破産の恐さを描きながらも、人間の本質的な危なさと強さも同時にその中に反映させている。凄い。ラストのあのカットは、映像で見てみたい。といっても、昔映像化されているらしい。ぜひ、リメイクを作ってもらいたい。犬童監督とか、青山監督とか、映画化すればいいのに。

6、爆笑問題「偽装狂時代」
→待ってました爆問の「日本原論シリーズ」最新作!日本原論ファンの僕としては、やっぱり今回もやってくれた、っていうのが第一印象。絶対笑いにできないだろっ!と思う凶悪犯罪から目を覆いたくなるきつ~い犯罪まで、すべてのニュースを笑いに変えてしまう爆笑問題、太田。天才太田が放つ新作は、イラク自衛隊派遣、牛丼の販売休止、年金未納問題、ライブドア、耐震強度偽装と、ホットなネタがてんこ盛り。何度も笑えて、何度も楽しめる、これこそ真の笑いだ。暗い事件が多発する社会だからこそ、笑いが必要である。日本原論で暗いニュースも笑いに変えて、世の中を明るくしていきたい。

もう一言→日本原論も連載が始まってもう13年、13年間もすべての事件を笑いに変えてきた太田は本当に偉大だと思う。ちなみに、日本原論の中のボケもツッコミも両方とも太田が執筆している。太田の笑いのセンスがここまで幅広いもので、柔軟性のあるものだと知ったのは、「日本原論」の一作目を手にした時だが、未だにそのセンスは衰えていない。これからも、あらゆるニュースを笑いに変えていって欲しい。

7、小林賢太郎「鼻兎」
→ラーメンズの小林賢太郎が描き出すシュールでキュートな漫画「鼻兎」。癖のあるキャラクターと、不思議でおかしいストーリーがストレートに笑いを誘う。といっても、時々分からない。もしかしたら、全然分からない、って人もいるかも知れない。シュールな世界ははまってしまったら抜け出せないが、はまらない人はとことんはまらないから注意。ちなみにこの鼻兎、4巻で完結らしい。ラーメンズの頭脳「小林賢太郎」の世界がそのまま投影されたかのような夢の世界「鼻兎」にどうか一度触れてもらいたい。

もう一言→難点は、かなり薄くて小さいのに値段が1000円とかなり高いことだ。だがその値段を超越するおもしろさがこの漫画には潜んでいる。潜んでいるので、見つからない人もいるかも知れないが・・・まぁ、吉田戦車とか、そっち系の笑いが好きな人は迷わず買うべきだ。特にラーメンズの舞台が好きな人は進んで買うべき。僕にとっては「鼻兎」を知らない人生なんてありえない。ある意味、一番おススメしたい一冊なのだが。

8、乙一「銃とチョコレート」
→高い、その上ひらがなだらけで読みにくい。しかし、さすが乙一。内容はそんなハードルを余裕を持って超越している。今作は、ミステリーランドシリーズということで、子供向けの仕様となっている。しかし、内容は大人が読んでも十分楽しめるものだ。さすがに題名の「銃とチョコレート」の意味は劇中でうまく使われているし、相変わらずテンポのいいストーリー展開も抜群におもしろい。そしてアッと驚くどんでん返しもある。他の乙一作品と並べても劣ることがない。乙一には珍しく、探偵と怪盗の話。機会があれば読んで欲しいが、なかなか手に取る機会がないかも。

もう一言→また内容を言っていなかった。内容はコチラ⇒少年リンツの住む国で富豪の家から金貨や宝石が盗まれる事件が多発。現場に残されているカードに書かれていた【GODIVA】の文字は泥棒の名前として国民に定着した。その怪盗ゴディバに挑戦する探偵ロイズは子どもたちのヒーローだ。ある日リンツは、父の形見の聖書の中から古びた手書きの地図を見つける。その後、新聞記者見習いマルコリーニから、「【GODIVA】カードの裏には風車小屋の絵がえがかれている。」という極秘情報を教えてもらったリンツは、自分が持っている地図が怪盗ゴディバ事件の鍵をにぎるものだと確信する。地図の裏にも風車小屋が描かれていたのだ。リンツは「怪盗の情報に懸賞金!」を出すという探偵ロイズに知らせるべく手紙を出したが……。 軽い謎解き感覚で読んでも楽しめる。冒険心溢れる一冊。

9、綿矢りさ「インストール」
→新鮮な才能溢れる、近代青春ストーリー。「蹴りたい背中」で最年少で芥川賞を
受賞した実力が、ストレートに感じ取れる作品。読めば分かるが、さすが芥川賞作家と思わせる文体とストーリー展開である。素人っぽさは全くないなので安心して読むことができる。コンピューターを通じて不登校高校生と、12才の小学生の成長を描く作品。高校生の微妙な感情表現がうまく、リアルな現代の女子高生を描き出している。そこに流れる日常の風景が妙にマッチしていて、孤独と希望の新鮮な世界観が印象に強く残る。

もう一言→この小説は、上戸彩&神木隆之介で映画化された。だがやはり綿矢りさの表現の世界には近づけず、しかしシーンごとに流れる雰囲気や、ストーリーはそのままだったのでよかったと思う。しかし、映画を見ただけでは本当の良さは分からない。やはり、小説を読んでみて欲しい。

10、恩田陸「夜のピクニック」
→今年実写映画化される「夜のピクニック」は、2005年に本屋大賞を受賞した、青春小説である。夜を徹して八十キロを歩き通すという、高校生活最後の一大イベント「歩行祭」にて、三年間胸に秘めてきたある秘密を打ち明けたい思いでいる貴子。去来する思い出、予期せぬ闖入者、積み重なる疲労。気ばかり焦り、何もできないままゴールは迫る―。 そしてある「奇跡」に向かって物語はクライマックスを迎える。永遠に語り継がれる名作とは、このような小説のことである。読んできて飽きない展開と、感動の数々。こんな素敵なストーリーに出会えた事を、本当に嬉しく思う。

もう一言→売りの現場からベストセラーを作ろうと、全国の書店員が自分達が最もお客様にお勧めしたい本を投票でえらぶ「本屋大賞」。今までに大賞作は三作存在している。その中の一冊が「夜のピクニック」であるが、今年の受賞作であるリリーフランキーの「東京タワー」も第一回受賞作である小川洋子の「博士の愛した数式」もかなりおもしろい。本屋大賞がどれだけすばらしい賞なのかが実感できる。受賞に選ばれなかったものでもノミネート作品も名作揃いなので、ぜひ読んでもらいたい。