好きな原作が映像化されたものは、なるべく見ないようにしています。自分の脳内で作品が完成しているので、出来上がったイメージを壊されることが嫌だからです。最近文庫化を待って読了した吉田修一の『悪人』も、得意の博多弁を駆使して現代社会の断面を切り取った傑作でしたが、2010年映画化の主演が妻夫木聡と知ってげんなりしました。ハンサムというだけしか共通点が見出せず、爽やかブッキーではこの原作の主人公の陰影が出せないでしょう。
垣根涼介ファンの私としては、著者の名前を活字で見るとつい反応してしまうのですが、どうやら人気の連作短編集である『君たちに明日はない』をNHKがドラマ化したそうです。(2010年1月放送開始)大好きなシリーズゆえに、例によって私は観るつもりはありませんが、人事モノは珍しいし、好評であれば原作も売れて潤う→著者の執筆活動のプラスになるからいいやと思いきや、主演が坂口憲二とは・・・。 売れてる小説に人気俳優を嵌め込めばいいってもんじゃないでしょう。『君たちに~』の主人公は、ただの二枚目ではなく、若いながらも一癖あるユニークなキャラクターなのです。始まる前から云うのもなんですが、これは明らかなミスキャストです。
年上の恋人(芹沢陽子)はアラフォーのバツイチで、気が強いけれどなんともいえない愛嬌に主人公が惹かれていくというキャラなのですが、この役が田中美佐子というのも少々苦しい。私の好きな女優さんで、巧いし可愛くてルックスヤングではありますが、彼女ももう50歳です。先日の「椿山課長」ドラマでも主人公(船越栄一郎)のデパート入社同期にして深い絆で結ばれた同志という独身女性役を演じていましたが、こちらの方は46歳の設定ですから妥当だったと思います。「君たちは~」の方は松下由樹あたりが年齢相応でふさわしかったんじゃないかと。
田中美佐子という女優でまっさきに連想するのは、あるドラマのことです。この方は今でも売れっ子で第一線にいますが、90年前後は連ドラに引っ張りだこでしたから、その1本を挙げるのは意外に思われるムキもあるかもしれません。でも妙に印象に残っているドラマです。
「それでも家を買いました」は1991年にTBS金曜枠で放送されました。マイホーム取得に奮闘する若い夫婦と周囲を描いたドラマで、相手役は人気絶頂だった三上博史でした。平凡なサラリーマンの夫(三上博史)が、職場の後輩の女の子と軽い浮気をして夫婦の間に波風が立ったりもするのですが、その際に逆上した田中美佐子が、ミステリー小説を書くのが趣味の夫が大切にしている、購入したばかりの新品ワープロ(時代的にノートPCではなかったはず)を叩き壊そうと、上に持ち上げた瞬間の三上博史の狼狽ぶりが可笑しかったのです。この期に及んで、奥さんよりワープロを心配するという男の性がよく出ているなと。
そんな小ネタはいいとして、このドラマが衝撃的だったのには理由があります。マイホームを切望する夫婦が週末ごとに見学会や抽選会に足を運ぶのですが、ことごとく外れたりしてうまくいきません。インターネットの発達していない時代、もっぱら情報源はチラシか情報誌ですが、もっぱら奥さんのマメで精力的な活動にもかかわらず、周囲の知人・友人たちが次々に家を買うのを尻目に、家探しがなかなか成就しないのです。
そして最終回、最後の最後で夫婦は念願の戸建てマイホームを手に入れるのですが、それが津久井湖の辺り、正確には津久井郡城山町の分譲地だったんですよ。市町村合併で現在は相模原市城山町となっていて、橋本からもバスが出ているようですが、ドラマでは本数の少ない横浜線の相原駅から三ヶ木操車場行きのバスで20分(三上博史は駅まで原チャリを使ったようですが)、通勤時間帯はドアツードアで都内まで2時間はかかりそうな、ものすごい辺鄙な処だったのです。当時大学生の私は、わが国の普通のサラリーマンが家を買おうとしたら、ここまで都心から離れないと叶わないのか・・・と、ショックというよりも戦慄を覚えたのです。
ドラマは91年放映ですが、原作が書かれたのがそれより少し前でしょうから、まさにバブルの真っ盛りです。地価が有史以来ピークに達していた異常な時代だったというわけです。でも原作はノンフィクションですから、同様の時期にマイホームを買った人たちも沢山いたでしょう。年齢的には50歳前後の人たちだと推定されますが、その後に買い替えせずに住み続けていたら、そろそろ築20年を迎える頃合です。
そういう方たちは今どうされているんでしょうね・・・。
年末休みで暇なせいか、ドラマのキャスティングの文句から始まった連想検索が、バブルの爪痕にまで転がってしまいました。
垣根涼介ファンの私としては、著者の名前を活字で見るとつい反応してしまうのですが、どうやら人気の連作短編集である『君たちに明日はない』をNHKがドラマ化したそうです。(2010年1月放送開始)大好きなシリーズゆえに、例によって私は観るつもりはありませんが、人事モノは珍しいし、好評であれば原作も売れて潤う→著者の執筆活動のプラスになるからいいやと思いきや、主演が坂口憲二とは・・・。 売れてる小説に人気俳優を嵌め込めばいいってもんじゃないでしょう。『君たちに~』の主人公は、ただの二枚目ではなく、若いながらも一癖あるユニークなキャラクターなのです。始まる前から云うのもなんですが、これは明らかなミスキャストです。
年上の恋人(芹沢陽子)はアラフォーのバツイチで、気が強いけれどなんともいえない愛嬌に主人公が惹かれていくというキャラなのですが、この役が田中美佐子というのも少々苦しい。私の好きな女優さんで、巧いし可愛くてルックスヤングではありますが、彼女ももう50歳です。先日の「椿山課長」ドラマでも主人公(船越栄一郎)のデパート入社同期にして深い絆で結ばれた同志という独身女性役を演じていましたが、こちらの方は46歳の設定ですから妥当だったと思います。「君たちは~」の方は松下由樹あたりが年齢相応でふさわしかったんじゃないかと。
田中美佐子という女優でまっさきに連想するのは、あるドラマのことです。この方は今でも売れっ子で第一線にいますが、90年前後は連ドラに引っ張りだこでしたから、その1本を挙げるのは意外に思われるムキもあるかもしれません。でも妙に印象に残っているドラマです。
「それでも家を買いました」は1991年にTBS金曜枠で放送されました。マイホーム取得に奮闘する若い夫婦と周囲を描いたドラマで、相手役は人気絶頂だった三上博史でした。平凡なサラリーマンの夫(三上博史)が、職場の後輩の女の子と軽い浮気をして夫婦の間に波風が立ったりもするのですが、その際に逆上した田中美佐子が、ミステリー小説を書くのが趣味の夫が大切にしている、購入したばかりの新品ワープロ(時代的にノートPCではなかったはず)を叩き壊そうと、上に持ち上げた瞬間の三上博史の狼狽ぶりが可笑しかったのです。この期に及んで、奥さんよりワープロを心配するという男の性がよく出ているなと。
そんな小ネタはいいとして、このドラマが衝撃的だったのには理由があります。マイホームを切望する夫婦が週末ごとに見学会や抽選会に足を運ぶのですが、ことごとく外れたりしてうまくいきません。インターネットの発達していない時代、もっぱら情報源はチラシか情報誌ですが、もっぱら奥さんのマメで精力的な活動にもかかわらず、周囲の知人・友人たちが次々に家を買うのを尻目に、家探しがなかなか成就しないのです。
そして最終回、最後の最後で夫婦は念願の戸建てマイホームを手に入れるのですが、それが津久井湖の辺り、正確には津久井郡城山町の分譲地だったんですよ。市町村合併で現在は相模原市城山町となっていて、橋本からもバスが出ているようですが、ドラマでは本数の少ない横浜線の相原駅から三ヶ木操車場行きのバスで20分(三上博史は駅まで原チャリを使ったようですが)、通勤時間帯はドアツードアで都内まで2時間はかかりそうな、ものすごい辺鄙な処だったのです。当時大学生の私は、わが国の普通のサラリーマンが家を買おうとしたら、ここまで都心から離れないと叶わないのか・・・と、ショックというよりも戦慄を覚えたのです。
ドラマは91年放映ですが、原作が書かれたのがそれより少し前でしょうから、まさにバブルの真っ盛りです。地価が有史以来ピークに達していた異常な時代だったというわけです。でも原作はノンフィクションですから、同様の時期にマイホームを買った人たちも沢山いたでしょう。年齢的には50歳前後の人たちだと推定されますが、その後に買い替えせずに住み続けていたら、そろそろ築20年を迎える頃合です。
そういう方たちは今どうされているんでしょうね・・・。
年末休みで暇なせいか、ドラマのキャスティングの文句から始まった連想検索が、バブルの爪痕にまで転がってしまいました。
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