音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

3つのモンスターと20年後

2006-01-18 06:55:26 | 事件
今日は会社の同僚の帰社が心なしか早かった気がします。ビッグニュース目白押しなので、晩のニュースを見たいんでしょうか。ネットの掲示板やブログ界もお祭りになっていることでしょう。阪神大震災11周年も芥川賞・直木賞も吹っ飛んでしまったようです。こんな夜は、大事件で各局一斉に緊急特番を流す中、平然と「とっとこハム太郎」を放映するTV東京のように、世間のざわめきから一人離れて、東野圭吾悲願の直木賞受賞を論じてみたい気もしますが、3つのモンスターに触れないわけにはいきません。

ホリエモン率いる、証券市場の怪物ライブドア。オジャマモンではなく、マンションという魑魅魍魎はびこる怪物。そして、昭和から平成の怪物、宮崎勤です。

堀江貴文は、一昨年秋のプロ野球参入騒動で一躍注目のパーソンとなった後も、フジテレビ問題、小泉劇場選挙の出馬、年明けの強制捜査と「ニュース」の主役であり続ける希代のトリックスターです。04年の顔だったギター侍の波田陽区が、あっという間に忘れ去られたことでもわかるように、TVをはじめとするマスメディアが消費するサイクルが異常に短くなっている今、これだけ間断なく第一線で露出を続けていられるのは驚異的ともいえます。ただし、三木谷にしてもホリエモンにしても、明治維新の坂本龍馬のような存在で、「革命」が終わった後はいなくなっているのではと予言する人もいます。

ヒューザー自体が消滅するのは時間の問題でしょうが、小嶋某もあと1年も経てば誰の口の端にも上らなくなる気がします。

大学に合格した後、予備校の寮を引き払った後の春休みバイトに選んだ、新幹線の車内販売のお仕事。往路のひかり乗務を終え、職場の先輩とともに繰り出した博多の居酒屋に置いてあったTVで、「今田勇子」から送られてきたとされる声明文がニュースで流れていました。どこかの学者が「犯人は子供がいないことにコンプレックスを持つ30代の女性」とプロファイリングしていたのを憶えています。あれから何年たったのでしょう。逮捕時には例によってまた20年裁判が始まると予想されていたのに、16年で刑が確定したのは、日本の裁判も少しはスピードアップしていると考えていいんですかね。。。その後の酒鬼薔薇、宅間、奈良の小林など子供を相手にしたショッキングな事件、最近頻発する女児誘拐殺人の元祖と言うべき歴史的事件だと思います。一昨年、文庫で隠れたベストセラーになった貫井徳郎の傑作『慟哭』も宮崎事件を想起させる設定がありました。

佐野眞一の人物ルポ集『人を覗にいく』は、主に90年代AERAの「現代の肖像」に掲載されたものだが、02年の文庫化あとがきで著者はこう書いています。

 それぞれの世界で活躍した各人物をこうして並べてみると、残酷のようだが、人間の「賞味期限」という言葉が思い浮かんでならない。ざっくりとしたいい方をすれば、政治という舞台にあがった人々の「賞味期限」が一番短く、次いで経済をマターとしてきた人々、一番「賞味期限」が長いのが、一見、現実世界と最も遠く隔ったところにいるようにみえる文化・芸術方面の住人ということがいえるだろう。
 東京湾の湾岸開発を強行し、新宿副都心に新都庁舎をつくった元都知事の鈴木俊一や、労働組合「連合」の会長として飛ぶ鳥を落とす勢いだった山岸章、北海道知事から国会議員に転身した横路孝弘の名前をおぼえている人は、もうそんなに多くないはずである。
 これに比べて、いまや作品をほとんど発表していないつげ義治や北杜夫が、いつまでも強い印象を刻んで残っているのはなぜなのだろう。やはり「人生は短し、されど芸術は長し」からなのだろうか。


 現在、日経朝刊の「私の履歴書」は北杜夫だが、読んでいると無性に『どくとるマンボウ』シリーズや『楡家の人々』を再読したくなるから不思議だ。中学の卒業文集で凡百な「学校生活の思い出」などに背を向け、「楡家」を全編思い入れたっぷりに書いていた級友がいたことも思い出す。その時点で上梓から20年、現代の古典ともいえる傑作だったが、さらに20年以上経った今も決して色褪せることのない普遍性が同書や作家にはあるのでしょう。

そう考えると、これから20年後、宮崎勤はこの世にいないだろうし、渦中のホリエモンや小嶋も、もしかしたら安倍晋三さえも消えていて、今日のニュースの扱いではワリを食ってしまったが、東野圭吾だけが一線に残っているかもしれないなと思ったりもします。


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4 コメント

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Unknown (ケイジ)
2006-01-19 01:05:17
”音次郎の夏炉冬扇”毎回、本当に面白いです!!



音次郎さんお勧めの 白夜行 がドラマになりましたね。 音次郎さんに勧められ翌日書店に走ったのですが、分厚いページ数に意気消沈。そそくさと引き返してきました。

いずれ読むつもりです。

「容疑者X・・・」も面白そうですね。
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Unknown (音次郎)
2006-01-19 01:21:31
ケイジさん、コメント毎度です。

たしかに白夜行は読むのにパワーを要しますね。ケイジさんのキャラクターからすると、

東野圭吾が肩の力を抜いて買いたという、

ユーモア短編集をおすすめします。

『毒笑小説』、『怪笑小説』、『超・殺人事件』いずれも文庫ですが、この3点で1500円超えますから、アマゾンも送料無料ですよ。
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また読むブログが増えてしまった (大西宏)
2006-01-19 17:20:58
トラックバックを辿ってきたら、面白い !思わずブックマークに。

ブログやっていて悩みは読みたいブログがどんどん増えていくことです。

ぜひ続けて下さい。楽しみにしています。
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Unknown (音次郎)
2006-01-19 18:25:59
コメントありがとうございます。

著名な大西さんに過分なお言葉頂戴し、恐縮です。コツコツとやっていきたいと思っています。またお邪魔します。
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