音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

ハウスメーカーの賃貸

2010-03-06 23:43:30 | レオパレス、賃貸住宅
これまでレオパレス21や大東建託などの転貸業者について色々書いてきていますが、先のエントリーで「レオパレス以外に積水ハウス、ダイワハウス、へーベルハウスについてどう思いますか?」というコメントをいただきました。同様の疑問を持つ方々が後背に多くいるかもしれませんので、思うところを少しばかり。

今までキツイことを書いてきていますが、私は賃貸住宅の存在を否定するつもりは毛頭なく、事情があって家を買ってしまいましたが、心情的には「賃貸派」です。事実「賃貸住宅の可能性」という対話式エントリーも過去にUPしています。

5年ほど前に某政令指定都市市内に比較的まとまった土地を持つ親戚が、レオの営業攻勢にさらされ契約を強く迫られていました。母親を通じて相談を受け、企画書から図面まで一色を郵送してもらい、私なりの所見をレポートにまとめてフィードバックしたのですが、それを多少アレンジしてブログに掲出したのがこの記事です。そのときは後段をかなりカットしているのですが、そこには具体的な処方箋というかアドバイスを記していました。私はその敷地の現場を見ていませんでしたから、もちろん各論とはいっても一般論の域を出ませんでしたが。

親戚にアドバイスしたことの一つが、「賃貸を検討するのならレオ以外にハウスメーカーの賃貸を競合させて話を聞いたらどうか」というものでした。これはハウスメーカーが良いという意味ではなく、レオ1本ではなく他の切り口による提案を受ければ、相手のペースに乗らず相対的に検証できるでしょうということです。

ここで繰り返しになりますが、一般の方にも理解していただくために簡単に転貸業者のビジネスモデルをおさらいしてみます。


①業者の営業が街中を物色し空き地や老朽賃貸をみつける→法務局で謄本・公図を閲覧し所有者をチェック→地主に直接「アパート建てませんか」とアプローチ

②相場の15~20%を保証賃料として、満室だろうが空室があろうが建設戸数の保証賃料を期間中保証するのが、家賃保証もしくは一括借上。仮に近隣相場賃料6万円の8割である4万8千円×戸数がオーナーの収入として約束される。


業者の方は20%の手数料で募集管理をまかないますから、レオの平均入居率が限りなく80%に近づくまで落ち込んでいる現状は、たしかに逆ザヤといっていいほど厳しいものだと思われます。ただし、あまり知られていませんが、一括借上契約にはお約束といっていいほど一般的な慣習があり、それは「免責期間」と呼ばれるもので、業者の大きな収入源になっています。これは何かというと、スタートから3ヶ月間はオーナーに賃料を払わなくていいという規定です。どんな賃貸住宅でもたいがいは新築物件は満室になりますから、最も入居率の高い状態なんですが、その間が丸々業者の収入になります。賃料が6万円のアパートを10戸として3ヶ月間で180万円を最初の時点で荒稼ぎしてしまうのです。

しかし「家賃保証」はあくまで撒き餌であり、レオのような転貸業者の儲ける主戦場は「建築」に他なりません。だから、アパートを建てる際にハウスメーカーを相見積もりの仲間に入れることの意味は、労多くして利少ない戸建建築で四苦八苦しているハウスメーカーとレオを比べたときに見えてくるものが色々あるだろうということなのです。

ハウスメーカーとて、積水や大和などの大手も大量採用・大量退社の典型で、10年たったら新卒同期は3分の1になると云われています。今どきの就活用語のホワイトかブラックといえば後者にカテゴライズされてしまうでしょう。さらに最近の住宅展示場は撤収が相次ぎ櫛の歯が抜けるようになっています。新設の展示場も吃驚するほど出展数が少なく、大型ショッピングセンターの前という好立地であっても、土日にほとんど来場者をみかけません。これまではドメスティック産業の典型といわれていましたが、住友林業など大手の何社かは本格的に海外進出を開始していますし、1+1は2にならず合併効果が薄いといわれ、過去に大型のM&Aがなかった住宅業界ですが、今後は大型再編が起こるかもしれません。

しかしいくら斜陽産業であっても大手でサバイバルしている人材は相当に有能で、彼らを活用しない手はありません。土地活用を考えたとき、できたらハウスメーカーの10年選手以上のベテランを探して相談したらよいと思います。積水ハウスや大和ハウスなどは新卒から商業店舗開発や賃貸部門に配属される社員もいますが、たいていの住宅会社では最初は基本の戸建注文住宅営業に従事させますから、そこで修行した人間はあらゆる意味でタフですよ。それに賃貸を検討されるのは必ずしもお百姓さんだけではありません。相続を受けたりして、たまたま遊休地を持っているサラリーマンというケースも首都圏では結構多いので、そういう属性の方とも対等にお話ができるだけのインテリジェンスを備えた担当を探すところから始めてもいいでしょう。レオから一方的にアプローチされて、よくわからずにひたすら受身に終始している人が多いように思います。

レオや大東の営業マンのキャリアパスは、ひたすら前記①②を繰り返すだけであり、住まいというものの本質を理解していません。部資材や外観バリエーションも貧弱ですから、あまり勉強していない人も多いというか、むしろ余計なことを考えずに「アパート受注マシン」に徹することを求められているのです。一方で、お客が自らの懐から金を出し、長期ローンを組む一般エンドユーザーに対峙し、シビアな要求水準に応えてきた経験を持つハウスメーカーの注文住宅営業マンは、資金や税金、建築のノウハウはもちろん、「住宅」を複視眼的に捉えていますから、賃貸の相談をして得るものは少なくないと思います。

ハウスメーカーの賃貸のデメリットは建物の価格が高いということでしょうか。大手メーカーはほとんどが上場企業ですし(レオや大東も上場企業ですが。。)悪い評判がたって戸建営業に影響するのを恐れていますから、賃貸であっても躯体構造のグレードをそれほど落とせないのです。賃貸住宅の単純年利回りは、年間賃料収入÷建築費で計算されます。いかにハウスメーカーブランドであっても同じ地域において、建物の差によって賃料が20%も違うわけではありません。賃貸(特にワンルーム)は立地の要素が大きいためです。そうなると建築費の安いレオは、収支シミュレーションがよく見えて優位に立つわけです。

ただし、長期的に何がメリットで、どんな土地活用がベターなのかというのは、見せ掛けの収支表だけでは計れないものがあります。低層の賃貸住宅ならば、鉄骨の積水ハウス、大和ハウス、木質のミサワなどプレハブ系の大手から1社、旭化成、三井ホーム、住友林業など優良と目されている大手から1~2社、比較材料としてコインパーキングのパーク24、三井不動産販売(リパーク)などから1社、計4社ほどを担当者(営業)とともに選んで、コンペにしたら良いと思います。競合相手の存在は、月末や決算月を理由にした強引なクロージングの抑止力にもなりますから。要は「家賃保証」に騙されていとも簡単にレオに落とされる地主さま、1億2億の事業なんですから、もっとリサーチしましょうよということです。




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2 コメント

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東横インの場合 (meici)
2010-03-14 18:15:49
相続全く関係ない私ですが、この手の話はどうしてか喰い付いてしまいます。

東横インも、土地の所有者にホテルを建ててもらって、東横インが30年契約で借りるという方式だったようですね。
で、急拡大したわけですが、経営がアレですから、ついに創業者が逮捕とあいなり、存続の危機となった。ここで、各ホテルのオーナー達は創業者の持ち株51%を20億で買い取って経営権を握った、とありましたが、20億をあの社長に・・と思うと腸煮えくりかえったでしょうねえ。

地方都市の一等地を持つオーナーの皆さんは、今後、東横インの経営に参画出来るわけですから、ここからが本番なんでしょう。オーナーさんも、懐事情が様々でしょうし、会社運営は難しそうですね。
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コメントありがとうございます。 (音次郎)
2010-03-21 20:34:39
>meiciさん、毎度です。
そういえば西田社長はその後どうなったんでしょうね。かなり前ですが、東横インのことを書いていたのを思い出しました。
http://blog.goo.ne.jp/masakichi917/e/227226422f8617e8011099929020233e
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