昨日、朝起きて朝日新聞を目にした瞬間、目に飛び込んできたのが、「二重図面で偽装工事」という大見出し。何事かと思って読んでみると、横浜市にオープンしたばかりの東横インが、検査後に条例に違反する改造を施していたという記事でした。政治ブログの論客で和光市議のtakeyanさんも、この問題をいち早く指摘しています。本日も朝日は、続報で一面と社会面、さらに社説まで使ってこの話題を取り上げているようです。たしかにこれはよろしくないことだということに異論はありません。不正だということはホテルも認めています。ただ新聞が、今流行りの「偽装」というキーワードを使って、鬼の首でも取ったように一面と社会面で書きたてているのには少々違和感を感じてしまいました。
記事によると、「建築確認制度をないがしろにする行為ではないのか」という記者の意地悪な質問に、対応にあたった東横インの取締役は「そこまで深く考えなかった。条例違反だが、建築基準法違反ではないと考えている」と答えています。それは一理あって、身障者用設備や駐車場を設けるというのは、横浜市条例や高齢者・身体障害者の円滑な利用を意図とするハートビル法に違反するものではありますが、建築基準法に抵触はしていないからです。一般に条例や建築協定は、それぞれの趣旨により、基本の法律である建築基準法よりも厳しい基準となっています。条例は趣旨に基づき、より高度な公共精神によって守られる性格のものであるため、違反した場合の罰則も軽いのです。たしかに、このようなケースは、個別案件として軽微な違反であっても、蟻の一穴のように、より重大かつ深刻な不正・偽装につながっていく恐れがあるため、現在大問題となっている耐震偽装に関連して、ニュースバリューありと判断して、大きく取り上げたのかもしれません。
東横インの西田社長が「時速60㌔制限の道路を67~68㌔で走ってもまあいいかと思っていた」語っていることをとらえて、朝日の社説子は拳をぶんぶん振り回し、力みかえっているのですが、私が、司法や行政、そしてマスコミに期待するのは、「時速60㌔制限の道路で67~68㌔」の車よりも、150㌔超の車をまず追っかけてほしいということです。証券行政とマーケットの問題、BSE問題、耐震強度偽装問題など、国民の安全や資産がおびやかされている極めてシリアスかつ喫緊の課題が目白押しの時に、このような枝葉の事例に大げさなキャンペーンをはっているのはいかがなものか。そんな暇があるのであれば、もっと巨悪に切り込んでみろよというのが、紙面の扱いの異様な大きさに対する私の違和感でした。
この記事を読んで「けしからん!」と憤った向きに、逆に問うてみたいのですが、「あなたはスーパーやサービスエリアに設置されている身障者用の駐車場に、近いからといって平気で車を停めたり、その時点で車両が混んでいないからといって、電車の優先席に座ったりしたことが、過去一度もありませんか?」ということです。
東横インは、女性支配人をはじめとするスタッフのきめの細かいサービスに定評があります。私も過去に利用して、リーズナブルな料金の割には、ホスピタリティーを感じた経験を持つ者ですので、身体の不自由な方や、お年寄りの来客があった時、東横インが彼らをないがしろにするような接客をするとは思えません。反対に、義務づけられた施設はあるものの、おざなりな接客をするホテルもあるかもしれません。第一、お年寄りや身体の不自由な方は、最初からこのようなビジネスホテルを利用しないのではないでしょうか?もし、自分や肉親がその立場であれば、ただ条例通りに優先駐車場と、僅か1室だけ身障者用の客室を設けました的なビジネスホテルよりも、もっと受け入れ体制が充実しているホテルを使おうと思います。事実、ビジネスユースが圧倒的に多い同ホテルの各チェーンの利用実績は1年に1名程度だといいます。ロケーションが、横浜スタジアムにほど近いオフィス街という件のホテルも身障者の方の利用は、実際にはほとんどないことが予想されます。
さらに、写真と図面を見る限り、思わず東横インが違法改造するのも無理はないと擁護したくなるようなキツイ状況があります。というかこれは、横浜市条例の不条理さへの企業防衛といってもいいかもしれません。
推定11.5㍍程度の接道間口(道路に面している部分)のうち、条例で義務づけられた身障者用の区画に間口3.5㍍、機械式駐車スペースの間口が推定6㍍で合わせて9.5メートルを塞がれてしまうのです。わずかに残った幅員2㍍の通路を通って7㍍ほど奥にホテルの玄関ドアがあります。竣工直後と思しき写真では、袋小路の奥にあるラーメン屋がよくやるように、表通りに「ホテルがここにありますよー」ということを知らせる立看板を出しています。どんな商売をやるにしても、前面道路に面した間口の8割がコンクリートで塞がれたうえに、玄関までのアプローチに7㍍近く要する設計を義務付けられたら、それはかなり厳しいのではないでしょうか?(芸能人御用達の隠れ家的なバーなんかは却って都合がよいのかも知れませんが)
出張の時にビジネスホテルのロビーで、新聞など読みながらくつろいでいると、時間帯によっては、1時間に3~4人くらい「今日空き室ありますか?」とフロントで尋ねている飛び込み客がいることがわかります。皆がネットで事前予約しているわけではなく、街中のビジネスホテルは一見(いちげん)さんの宿泊客も結構いるのです。外から入りにくく目立たないのは、店舗としては死活問題です。駐車場がなくなり、市道に面した正面側が全てガラス張りになり、ロビーが広がった開業当日の写真を見て、怒られるかもしれませんが、こうしたくなるだろうなと思ってしまいました。外からもホテルとすぐわかるようになり、フロントの様子も伺えます。間接照明もつけて華やかさも出ています。
記事が指摘しているのは、ホテルというある種公共の施設こそが、高度な遵法精神をもっているべきではないのかという問題提起をはらんでいると思うので、そのこと自体に意味がないとは思いません。
しかし、この改造をどう解釈するのかということについて、個人の住宅の例を出して考えてみたいと思います。例えば、住宅地に建ち並ぶ一戸建て住宅群。たいがいの家は敷地内のカーポートに屋根がついています。ありふれた光景ですね。但し、柱と屋根のある駐車場は建築面積に算入されるため、建ぺい・容積率いっぱいに本体の建物を建てている場合(たいがいは限られた土地に可能な限り延床面積を広くとろうとします)は、駐車場に屋根を設置すると、建ぺい率オーバーになってしまいます。そのため、役所の完了検査が終わって検査済証を取得した後、ほとぼりが冷めた頃合いに、「カーポート2期工事」というべき「改造」に着手します。それが完成すれば、この状態は立派な「既存不適格」です。大手の会社のまともな現場担当者であれば、自社はもちろん、子会社のリフォーム会社にも、このような付帯工事は受注させません。出入りの外構業者を「斡旋」して、「直接やってください」とリスクヘッジをして、顧客の強い要望に対応することにしているはずです。ただ、カーポート屋根の柱の位置などは、後の「改造」のため、予め打ち合わせておくことになります。既定路線というやつですね。
或いはこんなケースはどうでしょうか。俗に「真ん中部屋」というのがあります。住まい手が健康で文化的な生活を送るために、居室は必要な採光をとらなければならないとされています。建築基準法では、居室床面積の7分の1の有効採光をとるべしと規定しています。ただし、開口部の全てから有効採光がとれるわけではなく、隣地や道路境界からの距離などによって、窓の面積のうち一部は採光窓とならない場合があります。よって、採光に有効な窓の面積が上記の基準に達していなければ、居室として成立しないことになります。マンションや住宅の図面で南北の部屋に挟まれた真ん中のさほど狭くもない部屋が、図面上は「納戸」「ウオークインクローゼット」となっているのがそれです。いわゆる「納戸申請」と呼ばれるものですね。または、南面の部屋と真ん中部屋を、襖などで仕切って続き間とし、一体の居室として採光を計算し、確認申請の許可をとるというテクニックを使う場合もあります。
完成後に「納戸」を旦那の書斎にしようが、子供部屋にしようが、それは本人さえよければ自由であり、特段の問題はありません。しかし、襖で2室を一体化することにより、有効採光を確保していた場合、こんなケースがあります。竣工時に幼少だった娘さんが年頃になって、「私の部屋がリビングと襖1枚だけで間仕切りされているのは嫌だ」と言い出したとしたらどうでしょう。この施主が襖を壁に換えるリフォームを行ったとすれば、厳密にいうと「違法改造」で、これも既存不適格となります。違法ではありますが、他人の誰にも迷惑はかけていませんし、間仕切り壁は耐力壁ではありませんから、構造的には関係ないとしても、開口部だった時よりも、一応壁になるわけですから、多少なりとも建物の強度がUPするかもしれません。
現実にはこういった「不正」が取り締まられることはまずありません。役所から抜き打ちに検査が入り、カーポートの屋根を撤去させられたなどということは、少なくとも私は聞いたことがありません。建築中・竣工後の検査だけでも膨大な件数をこなさなければならないのに、建った後の物件を監視し、摘発、指導することなど、不可能でしょう。一般に住宅地において、より厳しい地区協定や条例を皆が守るのは、建前とは別に「近隣に刺されたくない」という心理が働くことも大きいのです。近隣との関係が抑止力になって、イリーガルな増改築を控えるような人は、隣家の日照や安全などに目立って影響を与えることでなければ、案外抵抗なく、自分の都合を優先しているのではないでしょうか。
立法趣旨を理解し、法律や条令は守るという遵法精神を一人一人が持つことは理想でしょう。東横インのケースでは、前述のように、ホテルという公共的な存在は、個人よりも高い次元で、コンプライアンスとCSR(社会貢献)に取り組まねばならないので、いくら商売上、不条理な規制であっても、それに従わなければならないし、特に日本ではユニバーサルデザインの歴史が短く、身障者や高齢者に対応するインフラがまだまだ貧弱ですから、その分野は行政が積極的に旗をふっていくことが必要ということも理解しているつもりです。もちろん、あくまで健常者の利便性のみを追求せよと言いたいわけでもありません。
ただ、この条例が市街地のビジネスホテルにとって、あまりに過酷であることは指摘しておきたいと思います。例えば、前面道路に二面以上接している場合に限るとか、規模による差をつけるなどといった、敷地条件や用途を考慮した合理的な規制を検討してもよいのではないかという感想を持ったのが一つ。それから、社会を取り巻く重大な問題が目白押しの折に、この東横イン問題をセンセーショナルに扱うマスコミに、ニュースの比較考量を求めたいと思ったのです。
記事によると、「建築確認制度をないがしろにする行為ではないのか」という記者の意地悪な質問に、対応にあたった東横インの取締役は「そこまで深く考えなかった。条例違反だが、建築基準法違反ではないと考えている」と答えています。それは一理あって、身障者用設備や駐車場を設けるというのは、横浜市条例や高齢者・身体障害者の円滑な利用を意図とするハートビル法に違反するものではありますが、建築基準法に抵触はしていないからです。一般に条例や建築協定は、それぞれの趣旨により、基本の法律である建築基準法よりも厳しい基準となっています。条例は趣旨に基づき、より高度な公共精神によって守られる性格のものであるため、違反した場合の罰則も軽いのです。たしかに、このようなケースは、個別案件として軽微な違反であっても、蟻の一穴のように、より重大かつ深刻な不正・偽装につながっていく恐れがあるため、現在大問題となっている耐震偽装に関連して、ニュースバリューありと判断して、大きく取り上げたのかもしれません。
東横インの西田社長が「時速60㌔制限の道路を67~68㌔で走ってもまあいいかと思っていた」語っていることをとらえて、朝日の社説子は拳をぶんぶん振り回し、力みかえっているのですが、私が、司法や行政、そしてマスコミに期待するのは、「時速60㌔制限の道路で67~68㌔」の車よりも、150㌔超の車をまず追っかけてほしいということです。証券行政とマーケットの問題、BSE問題、耐震強度偽装問題など、国民の安全や資産がおびやかされている極めてシリアスかつ喫緊の課題が目白押しの時に、このような枝葉の事例に大げさなキャンペーンをはっているのはいかがなものか。そんな暇があるのであれば、もっと巨悪に切り込んでみろよというのが、紙面の扱いの異様な大きさに対する私の違和感でした。
この記事を読んで「けしからん!」と憤った向きに、逆に問うてみたいのですが、「あなたはスーパーやサービスエリアに設置されている身障者用の駐車場に、近いからといって平気で車を停めたり、その時点で車両が混んでいないからといって、電車の優先席に座ったりしたことが、過去一度もありませんか?」ということです。
東横インは、女性支配人をはじめとするスタッフのきめの細かいサービスに定評があります。私も過去に利用して、リーズナブルな料金の割には、ホスピタリティーを感じた経験を持つ者ですので、身体の不自由な方や、お年寄りの来客があった時、東横インが彼らをないがしろにするような接客をするとは思えません。反対に、義務づけられた施設はあるものの、おざなりな接客をするホテルもあるかもしれません。第一、お年寄りや身体の不自由な方は、最初からこのようなビジネスホテルを利用しないのではないでしょうか?もし、自分や肉親がその立場であれば、ただ条例通りに優先駐車場と、僅か1室だけ身障者用の客室を設けました的なビジネスホテルよりも、もっと受け入れ体制が充実しているホテルを使おうと思います。事実、ビジネスユースが圧倒的に多い同ホテルの各チェーンの利用実績は1年に1名程度だといいます。ロケーションが、横浜スタジアムにほど近いオフィス街という件のホテルも身障者の方の利用は、実際にはほとんどないことが予想されます。
さらに、写真と図面を見る限り、思わず東横インが違法改造するのも無理はないと擁護したくなるようなキツイ状況があります。というかこれは、横浜市条例の不条理さへの企業防衛といってもいいかもしれません。
推定11.5㍍程度の接道間口(道路に面している部分)のうち、条例で義務づけられた身障者用の区画に間口3.5㍍、機械式駐車スペースの間口が推定6㍍で合わせて9.5メートルを塞がれてしまうのです。わずかに残った幅員2㍍の通路を通って7㍍ほど奥にホテルの玄関ドアがあります。竣工直後と思しき写真では、袋小路の奥にあるラーメン屋がよくやるように、表通りに「ホテルがここにありますよー」ということを知らせる立看板を出しています。どんな商売をやるにしても、前面道路に面した間口の8割がコンクリートで塞がれたうえに、玄関までのアプローチに7㍍近く要する設計を義務付けられたら、それはかなり厳しいのではないでしょうか?(芸能人御用達の隠れ家的なバーなんかは却って都合がよいのかも知れませんが)
出張の時にビジネスホテルのロビーで、新聞など読みながらくつろいでいると、時間帯によっては、1時間に3~4人くらい「今日空き室ありますか?」とフロントで尋ねている飛び込み客がいることがわかります。皆がネットで事前予約しているわけではなく、街中のビジネスホテルは一見(いちげん)さんの宿泊客も結構いるのです。外から入りにくく目立たないのは、店舗としては死活問題です。駐車場がなくなり、市道に面した正面側が全てガラス張りになり、ロビーが広がった開業当日の写真を見て、怒られるかもしれませんが、こうしたくなるだろうなと思ってしまいました。外からもホテルとすぐわかるようになり、フロントの様子も伺えます。間接照明もつけて華やかさも出ています。
記事が指摘しているのは、ホテルというある種公共の施設こそが、高度な遵法精神をもっているべきではないのかという問題提起をはらんでいると思うので、そのこと自体に意味がないとは思いません。
しかし、この改造をどう解釈するのかということについて、個人の住宅の例を出して考えてみたいと思います。例えば、住宅地に建ち並ぶ一戸建て住宅群。たいがいの家は敷地内のカーポートに屋根がついています。ありふれた光景ですね。但し、柱と屋根のある駐車場は建築面積に算入されるため、建ぺい・容積率いっぱいに本体の建物を建てている場合(たいがいは限られた土地に可能な限り延床面積を広くとろうとします)は、駐車場に屋根を設置すると、建ぺい率オーバーになってしまいます。そのため、役所の完了検査が終わって検査済証を取得した後、ほとぼりが冷めた頃合いに、「カーポート2期工事」というべき「改造」に着手します。それが完成すれば、この状態は立派な「既存不適格」です。大手の会社のまともな現場担当者であれば、自社はもちろん、子会社のリフォーム会社にも、このような付帯工事は受注させません。出入りの外構業者を「斡旋」して、「直接やってください」とリスクヘッジをして、顧客の強い要望に対応することにしているはずです。ただ、カーポート屋根の柱の位置などは、後の「改造」のため、予め打ち合わせておくことになります。既定路線というやつですね。
或いはこんなケースはどうでしょうか。俗に「真ん中部屋」というのがあります。住まい手が健康で文化的な生活を送るために、居室は必要な採光をとらなければならないとされています。建築基準法では、居室床面積の7分の1の有効採光をとるべしと規定しています。ただし、開口部の全てから有効採光がとれるわけではなく、隣地や道路境界からの距離などによって、窓の面積のうち一部は採光窓とならない場合があります。よって、採光に有効な窓の面積が上記の基準に達していなければ、居室として成立しないことになります。マンションや住宅の図面で南北の部屋に挟まれた真ん中のさほど狭くもない部屋が、図面上は「納戸」「ウオークインクローゼット」となっているのがそれです。いわゆる「納戸申請」と呼ばれるものですね。または、南面の部屋と真ん中部屋を、襖などで仕切って続き間とし、一体の居室として採光を計算し、確認申請の許可をとるというテクニックを使う場合もあります。
完成後に「納戸」を旦那の書斎にしようが、子供部屋にしようが、それは本人さえよければ自由であり、特段の問題はありません。しかし、襖で2室を一体化することにより、有効採光を確保していた場合、こんなケースがあります。竣工時に幼少だった娘さんが年頃になって、「私の部屋がリビングと襖1枚だけで間仕切りされているのは嫌だ」と言い出したとしたらどうでしょう。この施主が襖を壁に換えるリフォームを行ったとすれば、厳密にいうと「違法改造」で、これも既存不適格となります。違法ではありますが、他人の誰にも迷惑はかけていませんし、間仕切り壁は耐力壁ではありませんから、構造的には関係ないとしても、開口部だった時よりも、一応壁になるわけですから、多少なりとも建物の強度がUPするかもしれません。
現実にはこういった「不正」が取り締まられることはまずありません。役所から抜き打ちに検査が入り、カーポートの屋根を撤去させられたなどということは、少なくとも私は聞いたことがありません。建築中・竣工後の検査だけでも膨大な件数をこなさなければならないのに、建った後の物件を監視し、摘発、指導することなど、不可能でしょう。一般に住宅地において、より厳しい地区協定や条例を皆が守るのは、建前とは別に「近隣に刺されたくない」という心理が働くことも大きいのです。近隣との関係が抑止力になって、イリーガルな増改築を控えるような人は、隣家の日照や安全などに目立って影響を与えることでなければ、案外抵抗なく、自分の都合を優先しているのではないでしょうか。
立法趣旨を理解し、法律や条令は守るという遵法精神を一人一人が持つことは理想でしょう。東横インのケースでは、前述のように、ホテルという公共的な存在は、個人よりも高い次元で、コンプライアンスとCSR(社会貢献)に取り組まねばならないので、いくら商売上、不条理な規制であっても、それに従わなければならないし、特に日本ではユニバーサルデザインの歴史が短く、身障者や高齢者に対応するインフラがまだまだ貧弱ですから、その分野は行政が積極的に旗をふっていくことが必要ということも理解しているつもりです。もちろん、あくまで健常者の利便性のみを追求せよと言いたいわけでもありません。
ただ、この条例が市街地のビジネスホテルにとって、あまりに過酷であることは指摘しておきたいと思います。例えば、前面道路に二面以上接している場合に限るとか、規模による差をつけるなどといった、敷地条件や用途を考慮した合理的な規制を検討してもよいのではないかという感想を持ったのが一つ。それから、社会を取り巻く重大な問題が目白押しの折に、この東横イン問題をセンセーショナルに扱うマスコミに、ニュースの比較考量を求めたいと思ったのです。
あの社長の不遜な態度も「あー、ばれちまったよ。ついてない」という種のものだったと思います。
このような状況の中、さまざまな局面で恣意的な摘発や逮捕があり、また、恣意的な告発があります。
その結果生み出されているのは人治国家という現状であり、法をバカにする人々の社会ということになります。
たまたまばれてつるし上げられているこの社長を「仕方がない」と表現するのはいわゆる大人の対応ですが、逆に袋叩きになることで、この業界の人々が違法行為を避けようとするのであれば、意味がないことでもないかと思います。
確かにハートビル法は過酷です。また、建築法規には現実的でない面もあります。しかし、それは実は法改正を求めていくべきであり、また、あるいは地方議会が条例の制定時にしっかりと予見できることを予見して対応しておくべきなのであると、地方議員としては考えたいです。
ちなみに、今回問題を大きくしてしまったのは事件の内容より、むしろ社長の不遜な会見だったのでしょうね。
最後にマスコミですが、残念ですが、なかなかおっしゃるようなバランス感覚は期待できそうにありません。いつもブログでも申し上げているのですが、読者・視聴者がそれなりのバランス感覚を持つしかないと考えています。
他でも先生が書いておられるように、悪法もまた法であるのは確かだと思います。
ただ、私も昨日今日とTVを見ていないので、西田社長がトンデモ会見やったのを知らなかったんですよね・・・・。
>逆に袋叩きになることで、この業界の人々が違法行為を避けようとするのであれば、意味がないことでもないかと思います。
おっしゃる通り、このネットでの大変な盛り上がりは、業界の意識変革につながるかもしれません。
自分もあまりこの問題ばかりを取り上げすぎて、他の大事な大事な問題をないがしろにされては困ると思っている一人です。ただ…あの世紀の大失敗記者会見はやっぱりツッコミを入れざるを得ませんでした。なんせ、バリアフリーに背を向けるようなメチャクチャ発言のオンパレードだったもので…
コメントありがとうございました。
経済誌で顔は見たことあるのですが、例のニュースを早く見ないといかんですね。そんなに酷かったんですね。
さて,東横インの問題,東横イン側に非があることは明らかなので,それについてはけしからんといえるでしょう。
しかし,ご指摘のとおり,マスコミの報道は,残念ながら違法の事実のみを指摘し,あたかも「第二の姉歯」と扱いたいに過ぎないような気がしてなりません。
条例に問題点はないのか,東横イン以外のホテルや施設は大丈夫なのかなどもっと多角的に検証し,報じていくべきであろうと思います。
次に、条例を通すための図面と条例を通した後の図面が最初からあった、ということは明らかに条例違反を意図的に犯す気満々だったわけで、この辺東横イン側に法遵守の精神が全くない、と言われても仕方のない話です。
で、マスコミですが…アレだけ頭の悪い記者会見をされればセンセーショナルに書きたてても止むを得ないでしょう。当然もっと他にやることあるだろ?という意見には賛同しますが。
冷静で公平な視点での記事に感銘を受けました。
一点からだけではなく、多角的に見るようにしないと
判断を誤りますね。
社長の会見で、かなり敵を作ってしまったようです。
私は企業経営者たる者は順法精神を持たねばならないと思いますが、
東横インの西田社長に関しては、その欠如を全国的に自ら知らしめてしまったと思います。
確かに必要以上に厳しかったり、抜け穴があったりと法令の不備はありますが、
だからといって企業トップがそれを破ることは許されてなりません。
今回の件ならば、市の関係部署と綿密なコミュニケーションをとるべきだったと思います。
通常条例違反であれば、よほどのことがない限り、プレスリリースされませんから。
文書での改善命令が下されてもです。
マスコミはもっと重大な問題を取り上げるべきだ、
という考えは一理あると思います。
実際、ライブドアもBSEもヒューザーも落ち着いて、
旨みがなくなった時点で似たような事件が発生したので、
これは大々的に行くべきだという発想はあったと思います。
それでやってみたら、社長が「非常に面白い」人物で、
これは売れるぞ!ってなってしまったんでしょうね。
あの社長のせいで、東横インが潰れないことを願います。
ご指摘ありがとうございます。たしかにこの条例は首都圏だけでなく、全国的な潮流のようですね。ということは、各地である程度の合理性と高いニーズが確認されているのかもしれません。
>感動創造さん
コメントありがとうございます。まだ記者会見の映像を見ていないのが痛いです。
今後ともよろしくお願いします。
>だんなさん
コメントありがとうございます。
貴ブログの、時事問題のエントリーが早くて濃いのを感心していました。またお邪魔します。
たしかにトップが範を示さなければ、企業体としてコンプライアンスが浸透するわけないですよね。経済誌にも再三取り上げられ、そのビジネスモデルが賞賛されてきた方ですから、影響力は大きいことを自覚しなくてはならなかったと思います。
>resagriさん
コメントありがとうございます。
よほどTV的には美味しい映像だったんですね。広報は何をやっていたんでしょうか。
まあ、立志伝中の人物のようですから、誰も何もいえないのかもしれませんが・・・。