ひょうたんじじい備忘録

ファイナルカウントダウンに向けて

村上春樹の『猫を棄てる』

2019-08-08 15:04:06 | 日記・エッセイ・コラム
文芸春秋6月号に、村上さんがこのタイトル、で自らのルーツを初めて綴っている。読み易い文章。
……とにかく父と僕は香櫨園の浜に猫を置いて、さよならを言い、自転車でうちに帰ってきた。そして自転車を降りて、「かわいそうやけど、まあしょうがなかったもんな」という感じで玄関の戸をがらりと開けると、さっき棄ててきたはずの猫が「にゃあ」と言って、尻尾を立てて愛想良く僕らを出迎えた。僕らより先回りして、とっくに家に帰っていたのだ。……とある。
同じような経験をしたことがある。小学生の時、どこからともなく黒猫がやってきた。そろばん塾あたりまで棄てに行ったが、人間が帰る前に猫が帰っていた。「これも何かの縁やろ」ということで、飼い始めた。祖母が抱いている写真の猫である。
また、時代と個人について。……おそらく僕らはみんな、それぞれの世代の空気を吸い込み、その固有の重力を背負って生きていくしかないのだろう。そしてその枠組みの傾向のなかで成長していくしかないのだろう。良い悪いではなく、それが自然の成りたちなのだ。……。これは司馬遼太郎がその当時の若者からされた質問に対する回答だろう。