「化粧水でしょ、乳液でしょ、美容液と下地・・・」
はあ。
「ファンデーションとチークとアイライナーとマスカラが4本」
4本!?
なぜ4本。
「4本いるんです!」
若い娘いわく、下地代わりのマスカラ、長さを出すマスカラ、
ボリュームを出すものとカールさせるもので4本。
付ける順序も決まっているという。
それ、重みで落ちてくるんじゃないの?とからかう。
この娘ははっきりした顔立ちをしているので
そんなに付けなくてもいいように思えるのだが。
ちなみにわたしはノンマスカラ派。
以前は付けていたが今はやめてしまった。
確かに付ければ目元がパッチリした感じになるのだが
あまり化粧栄えする顔ではないので、全体のバランスが崩れる。
ビューラーを使うのもやめてしまった。
なので、わたしのまつげはいつも斜め下に向かっている。
面倒なわけではない。
肌の手入れや化粧は好きだし、時間もある。
かつては何本もマスカラを持っていたし、ビューラーも何種類か持っている。
嫌になったのだ。
まつげをくるんくるんさせている自分が。
たかがまつげに一生懸命になっている自分が。
しかし、今それを必死になっている小娘を馬鹿にする気はまったくない。
美容も化粧も「たかが」にムキになる積み重ねだ。
アイライン一本で自分に自信が持てるなら引いたほうがいい。
もしかするとわたしもまたいつか、
マスカラを日常的に使うようになるかもしれないし。
今は、マスカラを付けて自信を持つ自分が嫌なだけだ。
そもそも、旅行に持って行くものの話をしていたのだ。
一泊でも結構な荷物になってしまうという話になって
若い娘が、化粧品がかさばると言い出した。
旅行の荷物でいつも思い出すのが、以前勤めていた店の店長だ。
社員旅行の集合場所に、その店長だけ手ぶらで現れた。
「店長、荷物は?」
皆の問いかけに、着ているジャンパーのポケットを左右交互に叩いて見せて
「パンツ、髭剃り」。
かっこいい。
こういう風に、わたしも生きたい。