mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

《violin》

2014-03-31 04:54:04 | 〈紅緋色の部屋〉
深夜ニ時 雨がわたしのviolinを濡らした。

  violinは、この身の中で目覚めていて
  哀しく切ない悲鳴をあげているの
  あなたのことを求め続けているの
  わたしの声の代わりに幾つもの旋律を弾き続けているの

  なのにあなたはただ子ども扱いして優しいばかり
  violinの切ない旋律を聴こうともしない
  あなたの名を求め続けるわたしの曲を聴こうともしない

  violinはもうあなたの曲を奏ではしない
  語りかけることも歌いかけることもしない
  あんなにも震えながら恋する煌めきを歌っていたのに
  わたしの心の震え わたしの身体の震え そのままに震えていたのに


  わたしはそんなviolinの神秘なる響きに
  愛されていることの幸せを重ねていたのかも知れない
  わたしは全てを信じていた 愛以上の愛


  恋する女の誰にとっても儚く甘い夢のようなものだと

  ああ いっそ夢と知りつつ淫らな夢を見ながら死んでしまいたかった
  夢の中であなたの恋人でいられるままに
  いっそこの夢から覚めたくはない
  目覚めれば、この愛
は儚く消えて 信じるものも求めるもの すべて消えるのだから

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