mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

《恋文》

2014-05-21 05:29:56 | 〈紅緋色の部屋〉
               愛しいあなた わたしの嫉妬心は
  あなたの指から唇まで、触れることの叶わぬものにさえ心に描き出されるのです。

  情熱が赤い炎を高く燃やしましょうとも、わたしの身はヴェールに包まれたまま、その薄白一枚脱ぐことも許されないのです。
  神聖上の巫女に裸体の姿を映されることはないからです。

  わたしはあなたの
あの猫たちの最後の猫にもなれませぬし
  檸檬の香りのするお茶のカップにも、その強かな筆にも、あなたの希望のままに動き始めるマリオネットにもなれませぬが

  わたしに向けられた
あなたの視線を微かに感じます。
  眠っているあなたの閉じられた眼は確かに
  わたしを見ているのでしょう

  ペンを神業のように走らせ
  わたしを生みだした愛しいあなた
  絵筆と錐を巧みに動かし
  わたしの姿と裸を現してくれた恋しい人



  わたしに名を与えてをください
  巫女と呼ばれる女になれぬ処女ではない名前を
  優しく大切に扱われている道具や玩具たちと同じように

  虚しい願いなのでしょうか
  翼が芽を出そうしております。鎖骨から引かれて苦痛は日に日に強くなって  冷酷な神々は得意そうに、わたしを責め砕き始めています。



  わたしに名をください
  愛と言う言葉を掲げ
  神々は白き翼をわたしに背負わせようと企んでいるのです


  桜色の花びら 薄紫や白黄色の花びらを舞い散らしながら踊るわたしの姿を描いてくださるように
  愛しいあなた、あなたに相応しい
  この上なく最上の
  わたしらしい名をください




原画:tinger7さんより
原画:BIackMagicさんより





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