mardidupin

記憶の欠片あるいは幻影の中の真実。

《陶酔》

2014-05-25 03:29:35 | 〈紅緋色の部屋〉


それは
  壊れかけた水密戸から白水が流れるような陶酔
それは
  愛された後の記憶の欠落
それは
  月が燃える高音
 薄闇に抱かれている恐怖にも似た
それは
  海底に眠る真珠貝のまわりで聴こえる
 生まれたばかりの真珠々の小さな声


嗚呼
  秘かに囁く愛しさ
それは
  弾けた熱情、そして淫らな欲望が取り囲んでいる
 肉体そのものの震動が静かな悲鳴をあげる
揺れる花弁が漏らす罪の声のようだ


  貴女は定まらぬ視線で、ふらふらと天窓の紐を引きながら
  「夜が入ってくるかも知れない」、と言う
海の音と風の音が聞こえる窓際で
  「月が静かに元に戻る音がする」と。


  壊れゆく魂
そして
  今、生まれた魂

それは
  未来へ向かうのか、過去へ戻されるのか
それとも
  違う世界へ
無限の宇宙へ向かうのか、
  貴女の肉体の聖なる部分へ留まるのか


  「ここにいたい」
貴女の言葉が響きわたる
  秘めやかに小さな呼吸を繰り返す
 薄明かりが差し込む頃
  貴女は溶け始めるに違いない

それまで
  月下の眠りに堕ちよう 貴女とともに...

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