甚五郎のネズミはうまかった ~技量と智恵~【K's EYE】

2009-12-26 22:52:40 | K's EYE
 新型インフルエンザワクチンを全国民が接種するために、
 輸入ワクチンに期待が集まっていますが、

 海外で副作用が多く報告され、調査が進められていた
 イギリスのグラクソ・スミスクライン社(GSK)製のワクチンには、

 本来は見られない原因不明のにごりが生じたり、
 国内で行った動物実験でも予想以上に死亡率が高かったようで、

 今後一般の意見も公募して、しっかりと検討がなされることとなりました。

 下火になってきたとはいえ、
 ワクチンを確実に接種して感染拡大を防ぎたいところですね。

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【今日のちょっといい話】

◇甚五郎のネズミはうまかった ~技量と智恵~

 名工といえば左甚五郎(ひだりじんごろう)。
 日光東照宮の“眠り猫”、上野寛永寺の“昇り龍”など、
 あまりにも有名である。

 江戸初期、播磨国(はりまのくに・兵庫県南部)に生まれた。
 本名は、伊丹利勝(いたみとしかつ)。
 生まれつき左ききで、左手一本で仕事をしたので、左甚五郎と呼ばれる。
 彼も「左」を自分の姓にしたという。

 菊地藤五郎(とうごろう)は、甚五郎と並んで、
 当時、彫刻界の双璧といわれた。

 碁、将棋、野球、相撲、剣道、プロレスなど、
 何事も他人(ひと)は、競争させ、応援したがるものである。
 ひいき筋はそれぞれ、日本一の名工と誇り、
 時にはエスカレートして、血なまぐさい争いまで起きる始末。

“だいたい、日本一が二人いるのがおかしい。決着つけてほしい”の要望が、
 世間に満ちていた。

 耳に入った将軍は、両人を呼んで、こう命じた。
「どちらが日本一か。その場で、ネズミを彫刻してみよ」

 両者は必死で、ノミをふるう。
 チョロチョロと、今にも動き出すような二匹のネズミを一見して、
 将軍は驚いた。
 まったく甲乙つけがたい、みごとなできばえであったからだ。

 困惑の将軍に、側近の智恵者がささやく。
「ネズミのことなら猫が専門家。猫に鑑定させたらいかが」
 大きくうなずいた将軍は、さっそく広場に二匹のネズミを、離して置かせ、
 猫に狙わせる。

 放たれた猫はまず、藤五郎の彫ったネズミに直進した。
“藤五郎が日本一か”と思った瞬間、
 どうしたことか、パッと吐き捨て、甚五郎のネズミに突進、
 ガブリとくわえて、飛んで逃げ去ったのである。

 万雷の拍手と歓声が、甚五郎にあがった。

 藤五郎のネズミは、木で彫ってあったが、
 甚五郎のは、鰹節(かつおぶし)で作ってあったのだ。

 技量だけでは、真の名人とはいわれない。
 臨機応変の智恵が必要なのである。


【編集後記】

 警察庁の調べによると、
 今年の自殺者は11月時点ですでに3万人を超え、
 12年連続で3万人以上となりました。
 このままいくと過去最多になる可能性も出てきましたね…。

 景気悪化を原因に挙げる人もいますが、
 それなりに景気が回復していたときでも、
 やはり3万人は超えていたことを考えると、
 問題はもっと根底にあるような気がします。