忘れ物の二百両を届けにきた馬の親方 ~誠の感化~【K's EYE】

2009-12-30 19:10:05 | K's EYE
 東京株式市場は今日が今年最後の取引、「大納会」でした。
 ここ数日の株価の値上がりもあり、
 3年ぶりに昨年末の終値よりも高い1万546円で取引を終えました。
 長引く不況にもようやく光が見えてきたようですね^^

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【今日のちょっといい話】

◇忘れ物の二百両を届けにきた馬の親方 ~誠の感化~

 優れた師匠を求めまわった熊沢蕃山(くまざわばんざん)。
“ここに師あり”と、近江聖人(おうみせいじん)・
 中江藤樹(なかえとうじゅ)の門に入ったのは、
 同宿の、商人の話を聞いたのが因縁だった。

 以下は、商人の話。

 かつて私が京都へいったとき、草津付近で、
 主人の大金二百両を紛失してしまった。
 とほうにくれ、死も覚悟していた夜半、
 旅籠(はたご)の戸をたたき、ぜひ私に会いたいという者がいた。
 出てみると、今日乗った馬の親方ではないか。

「あなたを送って家に帰り、馬の鞍を調べて見ると、
 このような大金が忘れられていた。
 確かに、あなたのものにちがいない。
 どんなにこそ、お困りのことかと駆けつけました。
 これでやっと肩の荷がおりた思いです」
 と、私の失った金子を目の前にさしだした。

 地獄で仏の私は、今時、こんな人があったのか。
 身に学問はなくとも、その心根(こころね)は
 聖(ひじり)にも劣らぬものだと感心して、
 これは、ほんのお礼のしるしと、さしだした十六両も、

「私は別に立派なことも、かわったこともしたおぼえはありません。
 あなたのものを、あなたに返すのはあたりまえ。
 お礼など、もらう訳はありません」
 と、いっこうに受け取ろうともしない。

 強く心を打たれた私は、いかにも美しい心がけなので、
 その理由をたずねてみた。

「私の郷里に、中江藤樹という先生がおられます。
 先生は、いくら貧乏したとて、よけいに金銭をねだったり、
 不正な金をわが物にしたりして、みだりに利に走ってはならない。
 守るべきは、誠(まこと)の心一つだと言われます。

 今夜きたのも、その教えのとおりにしたまでで、
 別にたいしたことではありません」
 という。

 馬子(まご)殿の行為はみな、中江先生という人の感化であるそうな。
 まったく偉い方もあるものです。

“この人をおいて、わが求むる師なし”と熊沢蕃山をして決意させたのは、
 この商人の、感動的体験談であったという。


【編集後記】

 鳩山総理が今日、今後の日本経済の成長戦略を発表しました。
 これまで軽視されがちだった、環境分野への取り組みに着目し、
 その他、「健康」に関することや、観光事業などが軸になるようです。
 今後国際的に環境問題が大きくクローズアップされれば、
 新たな需要と共に、雇用問題の改善にも繋がりそうですね。