万葉集ブログ・2 まんえふしふ 巻九~巻十

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1790 遣唐使母

2010-11-26 | 巻九 相聞
天平五年癸酉遣唐使舶發難波入海之時親母贈子歌一首(并短歌)

秋芽子乎 妻問鹿許曽 一子二 子持有跡五十戸 鹿兒自物 吾獨子之 草枕 客二師徃者 竹珠乎 密貫垂 齊戸尓 木綿取四手而 忌日管 吾思吾子 真好去有欲得

秋萩を 妻どふ鹿(か)こそ 独り子に 子持てりといへ 鹿子(かこ)じもの 我(あ)が独り子の 草枕 旅にし行けば 竹玉(たかたま)を 繁(しじ)に貫き垂れ 斎瓮(いはひへ)に 木綿取(ゆうと)り垂(し)でて 斎ひつつ 我が思ふ我子(あこ) ま幸くありこそ


733(天平5)年・癸酉。遣唐使船が難波を発ち、海に入る時、母親が(同行の)息子に贈る歌一首(ならびに短歌)

「ハギを妻にした牡鹿は、一人の子供を持つといいます。(私は)シカではありませんが、私には息子が一人(しかいません)。“草枕”(一人息子が)旅立ってゆくので、竹玉を、たくさん通して垂らし、斎瓮に木綿を垂らして、神を祭ります。(神様、どうか息子をお守りください)

私の大切な息子よ。無事であってください」

●733(天平5)年4月3日に出発した「第十回遣唐使」の一員の母親が詠んだ歌

●第十回遣唐使:船数は4 遣唐大使は多治比広成 副使は中臣名代 派遣者は平群広成・大伴古麻呂 随行者は興福寺僧栄叡・普照ら