続き
岩稜帯を越える
小太郎山を振り返る、右に日光白根山が見えていた
岩稜帯を抜け下り気味に樹林帯に入る途中、右手下方にグランド状の旧火口が見えた。良く見ると鹿の足跡が縦横に走る中、円形の輪が幾つも見られたがあれは一体何なのか。
山頂直下で私達が出発する少し前に入山したご夫婦が早くも下って来た。「帰りはガレ場を下るのですか?」と聞くと「怖くて怖くてとても下る気にはなれないので山王峠に下ります。山頂にはあのコースを登って来た人がたくさん居て皆、帰りのコースをどうしようか悩んでいました」と言っていた。 私達も帰るルートを真剣に考えなくてはいけないかもしれない。
山頂は志津峠からの登山者と合わせて結構な人数だった。皆、程良い場所を選んで眼前の広大な景観に見入っている。私達が選んだ場所は3面が岩に囲まれた砂の上で男体山方面の眺めが素晴らしい。何故ここが空いていたのだろうと思うほど絶好の休憩地だった。
例の如く雄さんはビール、私はウメチビで乾杯。男体山に登った時、湧き上がるガスを通して正面に見えた太郎山、今その頂にいる・・・何だか嬉しくて嬉しくて仕方が無かった。
南体山と中禅寺湖
左から帝釈天、女峰山、小真名子山、大真名子山
男体山の息子、太郎さんは中々男前、孫の小太郎さんも筋がいい。娘の女峰さんが気になるところだ。何れお目に掛かる事にして今日は太郎さんと仲良く遊んで行く事にしよう・・・なんて戯言を言いながら熱い程の日差しと心地よい風を受けている内、何時の間にかウトウトしてしまった。40分ほど寝ていただろうか。お尻から発する音で目が覚めた。周りの人はまさか私が発したとは思いはしないだろう(^_-)-☆
ムシカリ
意外な展開で山王帽子山を登ることになってしまったが一山、加わるとなればそれも嬉しい事だ。シャクナゲ咲く分岐に戻り急坂を下ると初めは両側にシャクナゲが見事だったが、それは初めの内だけで次第に笹が目立つようになった。
明るく開けた笹原まで勿体ないほど下っていよいよ登りにかかる。見た目には穏やかそうな笹の斜面だが笹が煩く纏いつき歩きずらい上に傾斜がきつい。私達の前には年配の登山者が7名、皆 顔に余裕が無い。
35分間の悪戦苦闘の末、フッと出た所が山頂。山名板が有るだけで腰を落ち着ける場所も無く立ったまま小太郎と太郎を眺め山王峠に向かった。相変わらず笹の煩い下りだったがダケカンバやカラマツの緑が美しい明るい道だった。しかし幾ら環境が良くても30分の急坂の下りは嫌気がさす。山王林道を通るオートバイの勢い良い音が虚しく聞こえる下りだった。
山王峠には登山者の車がたくさん停まっていた。私達はこれから道程も読めないまま車まで戻らなければならない。疲れた身にアスファルトの林道歩きは苦痛だった。道の両側に咲く白とピンクのズミが、どんなに気分の低下を救ってくれた事か。
小太郎山が望める山王林道
山王帽子で一緒だった登山者が車で通り過ぎて行く。羨ましいが仕方がない。九十九折りの道をショートカットしながら結局1時間かかっての到着だった。サンダルに履き替やっと人心地がついたが登山よりも、むしろこの歩きでかなり足がガクガクしてしまった。
明日はNさん、Tさんと三人で八ヶ岳の茶臼が約束して有る。大丈夫なのだろうか、心配になってきた。
身体の疲れは湯元温泉の温泉寺で流す事になった。3人で満員と言う浴室は滑り込みセーフで入れたが洗い場の湯は殆ど水。それでも我慢で髪を洗った。だが白濁した湯が溢れる浴槽に体を沈めていると今日の疲れが全部とれそうな気持ち良い温泉だった。効能をみると胃腸病や神経痛等々。 3月神経の炎症で(頸椎症)苦しんだ私は何時もよりゆっくり湯に浸かった。まさに極楽極楽だった。