流動のイイ女

妻子もちと別れ⇒いじめで会社を退職⇒脱無職⇒上司と不倫関係⇒約3年の不倫にピリオド⇒復縁、妊娠⇒未婚の母に

不幸への序曲

2008-03-14 | 新しい仕事
新しい制服をもらわないまま、アタシは入社した。
とりあえずアタシは役員の人たちに紹介をされ、それぞれの志を聞かされた。
前歯のない不潔なオッサンはホワイトボードにアタシと一緒に仕事をする人の名前をズラズラを書いていった。
そこでメインの二人の名前を言われ、さらに一人の名前をペンでグルリと囲った。
「あのね、この男にね。注意する。コイツね、ハッキリ言ってね、性格悪いから」
囲んだラインをペンでコツコツと叩きながらオッサンは言った。
その名前は、以前面接をした若い男の人の名前だった。
アタシは怖気ずき、その人とあまり関わらないようにと願うばかりだった。
しかし皮肉なことに、一緒の空間にいるのはこの人が一番長いという。
怒らせないようにしなきゃ・・・アタシは戦慄した。
前歯のないオッサンは課長という役職だった。
この前歯課長から一番最初に教わった仕事は・・・謝ることだった。
アタシの所属する会社は、若い男の会社の子会社だから、アタシがミスをした時は、前歯課長と一緒に謝りに行くらしい。
アタシだけ謝らなくとも、アタシの上司が一緒になって頭を下げれば、若い男も少しは寛大になるという。
なんて会社だ。
前歯課長はよくアタシの前に仕事をしてた女の子の相談を受けていたらしく、それはすべてあの若い男によるパワハラということだった。
パワハラ・・・・そんな会社に・・・。
アタシは中小企業の面接を初めて受けたが、入社当日に後悔するとは夢にも思わなかった。
苦しかった無職生活。
やっと抜け出したかと思ったのに。
新しい人生が前の会社よりも酷い会社だとは。
アタシはつくづく不幸だと思ってしまった。

ようやく事務の女の人が来て、制服のサイズを聞いてきた。
試着もさせてもらえなかったので、とりあえず9号といい、安全靴も適当に言っておいた。
それからヘルメットをもらい、至る所で指差し呼称をするように言われた。
アタシ・・・本当に一般事務員なのか?
会社の敷地は恐ろしいほど大きく、所属する会社と、実際に働く事務所は端から端の距離があった。
歩いたら10分くらいかかる。
この距離を見越して出勤しなければならない。
アタシは早起きしなければ・・・と思うのだった。
とりあえず初日なので午前中はすべて説明で終わり、本格的な仕事は午後からだという。
アタシは弁当を注文していたので、女子が食べる小さな部屋で待機しているように言われた。
11時40分ごろ、一人の女性が部屋へ入ってきた。
昼休みは12時からなのに、もう休憩。
信じられなかった。
どうしてサイレンが鳴る前に昼休みに入ってしまうのか。
前の会社では到底考えられないことだ。
ずいぶんと規律が緩いな・・・と思ったのだが、これはまだ序の口だった。
お昼は事務員と一緒ではなく、アタシの会社のさらに下請けの掃除会社の人たちと食べた。
とりたて会話もなく、食事終了。
昼休みも終わり近くになって、前歯課長が迎えに来た。
課長の運転するライトバンに乗り込み、いざ本当の職場へ。
ヘルメットを置き、あらかじめ持ってきた事務所内用の靴に履き替える。
どうやらナースシューズのような楽な靴でいいらしいのだが、アタシは転職用に1足靴を購入してしまっていたので、それを履くことにした。
中に入ると、まずは中年の男の人がいた。
自分の父親と同じくらいの年齢。だから「お父さん」と呼ぶことにしよう。
そしてもう一人・・・・例の若い男だ。
男の割りに髪が長めで、しかもサラッサラ。
矯正でもかけてんのか?ってくらいの綺麗な髪だった。
そしてイケメン。気のせいだけど、ラルクのテツに似ている。
だから「テツさん」と呼ぶことにする。
このお父さんとテツさんが、親会社の社員で、他の7人はいろいろな会社に所属していた。
男性で一番若いのがテツさんで、後は40代くらいだろう。
とても今から顔と名前が一致できるとは思えない。
課長とテツさんが少し話をして、課長は帰っていった。
「maiさん、ちょっと」テツさんに呼ばれ、面接を行った応接室へと通された。
椅子に座り、テツさんはホワイトボードになにやら文字を書き始めた。
それは自分の会社と、それぞれの子会社等で、持ち株が何株とかどうでもいい話を始めてきた。
もしかしてコレ・・・覚えないといけないの?
昼下がりで眠かったアタシはちょっと失敗したと思ってしまった。
さらにテツさんは書き進み、何をしている会社で、アタシが仕事をする課はこのような目的を持って、このような仕事をしていると、ずいぶん噛み砕いて説明してくれた。
アタシは、運送屋がうちの会社に物を運ぶ時の受付をするらしい。
運ちゃんは気性が荒いと何度も聞かされていたので、アタシは不安で不安で仕方なかった。
そして同じくらい、目の前にいるイケメンも恐かった。
テツさんはあらかた話し終わると自分も座り、唐突に「ごめんね」と言ってきた。
ワケも分からずに『はい?』と言ってしまうと、現状について話してきた。
「実は、今回は増員ということで面接を受けてもらったんだけど、一緒に仕事をしてくれるナオさんという女性がね、急に休職してしまったんだよ」と。
『え』アタシは凍りついた。
「本当はこんなハズじゃなかったんだ。こっちとしても想定外で、maiさんにはいきなり迷惑をかけてしまった。本当にごめんなさい」
謝られても困った。だって何が仕事なのかサッパリだもん。
でも、要は引継なしで仕事をしろということだ。
これはかなりキツイ。
さらに後悔した。

そしてこのナオさんの休職の理由を知った時、さらに後悔することになる。
こうしてアタシの新社会人生活は幕を開けたのだった・・。

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