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まかろんのお茶会

日々の小さなことを詩モドキにしてます。
皆さまのお茶菓子代わりに楽しんでもらえたら嬉しいです。

新作 ~ 「妖精の結婚式」 その86

2014-07-19 22:07:50 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
で、続き。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その86

  薄ぼんやりした 長い昼は
  だらだら色を落とし 夜へと移った
  さやかさんは 手早く片づけ
  会社の外へと 飛び出した
  今日こそ あの庭に行かなくちゃ

<つづき>

静かな住宅地 雨続きの夜に
庭木たちが ひんやり沈んでいた
このハッカ水のような 空気は
どこかやたらと のどが渇く
さやかさんは頭を振って 生垣を覗いた

この前と同じ 何も見えない
今晩はー と軽く声をかけ
裏木戸から 中に入った
一気に 光の世界に変わる
さやかさんは 小道を歩きだした

昨日の雷 どうだったんだろ
目を凝らして 花を見る
光ってはいても 真昼のように
細部まで 見えるわけじゃない
日光ってすごいなと さやかさんは思った

所々 花がよれたり倒れたりしてた
よし ちゃんと荷物をおいてこよう
さやかさんは 足早に家屋に向かった
こないだのテーブルでもいいけど
ふと思い出し 小道をそれた

おいていった傘が 転がっていた
あーやっぱりねと 傘を閉じる
カエル君たちは 大丈夫だったのかな
と思っていると テーブルの下から
ギターの音が 聴こえた

あっここかと 覗きこむ
丸いギターを抱えた 紅いカエルと
小さな緑のカエルが 座り込んでた
紅いカエルは さやかさんに気づき
嬉しそうに 手を振った


<つづく>



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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その85

2014-07-19 22:05:17 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
続きです。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その85

  バラと梅酒のビンを テーブルに乗せた
  バラはやっぱり電灯の下 毒々しく
  梅の実はビンの中 思わしげに揺れていた
  喜ぶ物を一つでも渡せる 良かった
  さやかさんはぱくり おかずを口にした

<つづき>

翌日は金曜日 夏至の前の日だった
朝起きると 薄日が街に
雷など知りませんと 射していた
道路はまだ 濡れていた
さやかさんは 雨具を詰めて家を出た

電車はいつも通り 混み合っていた
人々の生活を乗せて 動いている
会社に着くと 何かが切り替わる
何かが切れて 何かが目覚める
植物みたいだと さやかさんは思った

光を浴びて 生きる糧を生む昼間と
密やかに 暗い天地に身を伸ばす夜
くるくると 光と闇が回っていく
光と闇に翻弄されて どっちがホントか
くらくらしてる 不夜城に住む人間たち

まだ 心がひりっとする
さやかさんは 胸に手を当てた
草木たちのように 割り切っちゃう?
そうすれば この痛みはなくなるの?
仕事仕事と 痛みをやり過ごす

陽が射してたのも ほんのわずかだった
薄明るい曇りに時折 雨がさぁっと降って
またのっぺり薄明るい 雲の空に戻る
週末前の淀みと きりきりした活気の中
仕事はかちかち 時をデジタルに刻んだ

薄ぼんやりした 長い昼は
だらだら色を落とし 夜へと移った
さやかさんは 手早く片づけ
会社の外へと 飛び出した
今日こそ あの庭に行かなくちゃ


<つづく>



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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その84

2014-07-18 21:47:22 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その84

  生温い風の中 電車がホームにやってきた
  混んだ電車は 傘と汚れた湿気で
  二倍混み合ってるように 感じる
  それでもと さやかさんは思った
  それでも 電車は来てくれた

<つづき>

電車は のろのろと動いてる
ぎゅう詰めの体勢で ただ耐える
すえた匂いと所構わない水滴が 気持ち悪い
だけど 誰かが電車を動かしている
あたしが帰ろうと思った 雷雨の中で

ここにいる皆が 人間らしく帰れるように

あたしは カエルじゃないな
ひりっと痛みを 心に感じながら思った
妖精でもない
雨をさけて やっと生きてる
ただの フツーの人間だ

カエル君 ごめん・・・
さやかさんは 人々の頭の間から
やっと見える 窓越しの街を眺めた
今あの庭で みんな働いてるのかな
ごめん あたし帰っちゃうよ・・・

雨は 家に着く頃には小降りになってた
靴やスカートは ぐしょぬれだった
バスタオルで 水気を拭きまくる
食べ残したお弁当を テーブルに出した
今度こそ 普通に食べられそうな気がした

バラと梅酒のビンを テーブルに乗せた
バラはやっぱり電灯の下 毒々しく
梅の実はビンの中 思わしげに揺れていた
喜ぶ物を一つでも渡せる 良かった
さやかさんはぱくり おかずを口にした


<つづく>



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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その83

2014-07-18 21:42:28 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
続きでーす。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その83

  カエルだったら 良かったのに
  さやかさんは 土砂降りの雨を見つめた
  そしたら ぴょこぴょこ跳んでくの
  雨なんか全然 気にしない
  いっぱい一生懸命 働くのに

<つづき>

さやかさんは ため息ついた
そんな仮定なんか 意味がない
もう今日は帰ろうと がっかり思った
だって あたしは人間だもん
カエルじゃないんだもん・・・

駅へ行こうと 傘を開いたとき
一瞬辺りが 鋭く光った
えっと思う間もなく ドーンと音がした
これでもう小降りになるかな
そう思うけど 雨は一向に降り止まない

生ぬるい風が 吹き抜ける
頭のてっぺんが ちりちりする
パリパリパリッと 音がして
暗い光がまた 閃いた
ドドーンと遅れて音が辺りを揺るがした

人が急ぎ足で 通り過ぎていく
いつまでここで 待ってればいい
まだ空気が 何だかおかしい
暗い街の中 しがみつく狭い軒下
もういいやと 駅に向かった

帰宅ラッシュの駅は 濡れた人々で
いつも以上に 混み合っていた
手にした携帯に 目を落としながらも
かせをかけられた 人々のやるせなさが
ホーム中に 立ち込めていた

生温い風の中 電車がホームにやってきた
混んだ電車は 傘と汚れた湿気で
二倍混み合ってるように 感じる
それでもと さやかさんは思った
それでも 電車は来てくれた


<つづく>



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新作 ~ 「妖精の結婚式」 その82

2014-07-18 21:34:03 | 未完「妖精の結婚式」 2014梅雨
続きです~。


2014年6月10日~ブログ直接投稿 「妖精の結婚式」 その82

  昨日 ほとんど食べなかったじゃん
  急に減らすの 良くないよー?
  ううん違うの とさやかさんは言った
  ちょっと体調がね・・もう大丈夫
  そっとおかずを 口に運んだ

<つづき>

まだちょっと この一口が
重い気がする でも大丈夫
一口一口 噛みしめる
ちょっと痛い ちょっと重い
生をつなぐのは こんなにも重い

大丈夫じゃないかもしれない・・
さやかさんは はしを置いた
窓の外は どんよりしてた
まだ降らないでと さやかさんは思った
降るんなら 帰る頃には止んでいて

一日の仕事が やっと終わった
夏至前でもさすがに 暗くなっている
パソコンの電源を切って 外に出た
雨は降ってないと 手をかざした
でもこの感じ・・と思った そのとき

ポツン と雨が道路を叩いた
ポツンパタンと 大粒の雨
人々が慌てて 傘を開き始める
バタバタバタと 見る間に
激しく雨が 降りだした

傘・・は 持ってるけど
さやかさんは 傘をぎゅっと握った
これじゃ あの庭まで歩いていけない
ずぶぬれになる覚悟なら ともかく
さやかさんは 近くの軒下で立ちつくした

カエルだったら 良かったのに
さやかさんは 土砂降りの雨を見つめた
そしたら ぴょこぴょこ跳んでくの
雨なんか全然 気にしない
いっぱい一生懸命 働くのに


<つづく>



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変更:2018年8月14日
ずぶぬれの覚悟があるなら ともかく → ずぶぬれになる覚悟なら ~
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