波士敦謾録

岩倉使節団ヨリ百三十余年ヲ経テ

双面神(Janus)としての朝鮮半島

2005-07-15 01:17:16 | 雑感
 報道媒体上では,今月末に予定されている北朝鮮の核をめぐる6ヶ国協議再開が伝えられている.昨日網誌「木走日記」を覘いていてふと思ったのであるが,普通の国ならば当然併用する筈である「飴」と「鞭」の合わせ技を行使しない日本は,結局,一人取り残されて馬鹿をみるのではないか.自分の持てる力(鞭)を発揮せず,米国という虎の威を借りて事態の打開を図ろうとする対応は,北朝鮮のような国際上の常識を覆す破天荒の国に対しては,全く迫力が欠けたものとして映るだろう.何故なら,このような国が理解する説得手段とは,「武力」という究極の説得手段でしかない筈だ.北朝鮮と相即不離の契りがあるような旧社会党系議員は論外として,北朝鮮に籠絡されてしまっている保守系国会議員を落選させない限り,また,反北朝鮮で日本人をまとめてしまうような衝撃的事件が出来するか,あるいは米国から厳しい叱責・恫喝でもない限り,日本の対応に余り変化は期待できない.米国・中共ともに,当該外交要件を長期に亘り放置し,事態の打開を殊更急いでないことを考慮すると,巴基斯坦(Pakistan)の核保有の際と同じく,保有した以上致し方ない,話し合いを続行する姿勢を世界に対して見せることが非拡散体制維持のために重要という現状追認的な本音もあるのではないか.結局,日本にとって最も注意を要するのは,南北朝鮮が今後どのような擦り寄り方を画策しているのか,かも知れない.
 韓国の最近の動きを見ていると,北朝鮮の存在を認めながらも(本音は,南北統一して今より貧乏な生活に戻りたくない.独裁国の北には世論・民意というようなものは存在しないので,首領の金正日を治外法権の荘園領主として満足・説得さえすれば事足りる),北に対する従来の反共拒絶反応を同胞愛の慈悲と南北共通の敵日本への憎悪の駆立てで限りなく薄めて南北間の敷居を北向きに低くし,かつ中共との共存の妥協点を探り,疑似連邦国家化を目指しているのではないか,と思われてならない.経済では南が牽引車となり,安全保障では北の「暴れん坊将軍」金正日に「憎まれ役・汚れ役」として「(騙り?)核兵器」を振り翳して他国を威嚇してもらい,日本からみかじめ料をせしめるという連係策である.即ち,羅馬神話の双面神(Janus:http://www.answers.com/Janus)という趣の,支那人の御株を奪う,朝鮮半島版一国二制度である.最近親北路線で北への投資に執心中の統一教会は当該一国二制度の蝶番役を果たしているとも見える.事実,文鮮明は,1991年の訪北の際,故金日成に対して,朝鮮半島が統一された暁には,僕最高主席,君副主席云々と述べたことが記録されている(先日触れたAmerican Prospect誌の論文30頁右側参照).1990年代の比律賓(Philippines)の場合,天災も重なり,同国民の選択に従って米国は軍事的に撤退したが,もし将来,議会制民主主義の韓国が選挙で合法的に今以上の容北・離米路線を選択した際,米国はどのような対応をするだろうか.
 
© 2005 Ichinoi Yoshinori. All rights reserved. [Last Update:07/15/2005/ EST]