医療と適当に折り合いをつける内科医

医師国家試験浪人後の適当な医療を目指す内科医を追います

やさしさのゆくえ

2005-05-01 04:57:15 | 日記
梅干を買いにとある店に行くと随分盛況な店で店員さんも非常にいそがしそうに働いていた。お目当ての20%塩分の梅干を見つけレジに行くと、研修生なるバッジをつけた娘がしかめっ面をしながらなれない手つきでレジを打ってくれた。私はコンビニでもどこでも好感がもてる人には必ず「ありがとう」という事にしていて、まだなれない仕事を頑張っている彼女に微妙な共感もあってかいつもより3割増に気持ちを込めて「ありがとう」と言ってみた。この時のポイントは3つである。商品を受け取ってほんの少し間をあけて。笑顔で。相手の目をみて言うこと。すると随分いい顔で嬉しそうにしてくれるではないか。こっちも何だか嬉しくなってしまった。

実は私が考えている医療のイメージは以上のようなものです。それは生活レベルから始まっているし、大袈裟にいえば、この一言のおかげで元気が出て明日風邪をひかずに済むかもしれないと。だから私にとって医療行為などというものはそこいら中に転がっている身近なもので、医療なんていう大層な名前をつけるのもおこがましいくらい。世間様みんな医者ですよ。昔ブログに書いていた「何故医者はこんなにも忙しくなってしまったのか」という答えに世間様のやぶ医者が増えつづけているからじゃないかとちょっと思っています。

飲み屋でもそうですし、いろんな恋愛本なんかでも書いてありますが、男が女と仲良くなる一番いい方法は女の愚痴を聞いて共感してやる事、だそうです。確かに仲良くはなれるんですが、、、私はあまりオススメはしません。何故ならその人は「愚痴を聞いてくれる→彼はやさしい→もっと優しさを確認したい→もっと愚痴をしゃべろう→ますます劣悪さ、不幸を探し身をゆだねる」とデフレスパイラルのような状態に陥るのです。聞いているこっちも最初はまだいいのですが、だんだん嫌気がさしてくるでしょう?だから飲み屋でコンビニバイトのお姉ちゃんが愚痴を言い始めたらこう切り替えしてください。「どんな時に楽しかったり嬉しかったりした?」実は先の「ありがとう」のテクニック、こんな流れで教えてもらったんです。私はレジうちの仕事はしたことがないわけで、想像力も貧困なのでこうやって教えられてようやく気づいたのです。知らない世界のことは知識として聞かないとわからないですし、人を少しでも幸せにするのはこういうレベルでは技術ですよね。

話をもどすと、要は愚痴を聞くのはやぶ医者の仕事だといいたいわけです。愚痴が人と人をつなぐ接点であれば人はそれをますます求めるのですから。病院にもいるでしょう。そういう患者さん。病気だけを接点にするとだめでしょうね。病気になると人と接せられる、病気になると親切にしてもらえる。それを求めて身体が病気を欲しがっているような人。逆にいえば病気にならないと人と接せられない、親切にしてもらえないわけで。やな世の中です。そして病気かどうかを判断できるのは医師だけ。医師は免罪符発行人ですな。

高年齢の患者さんを診るときによく上の先生に言われるのは「自分の祖父母だと思って相手しなさい。そうすればちゃんと接することもできるでしょ」と。でもそれはちょっと違うんじゃないかなぁ。いまどき自分の親や自分の子供にも優しく出来なくなってしまった人種が沢山いるでしょう。お節介に公共広告機構でも「子供の愛し方がわからなければ、まず抱きしめてあげてください」なんてCMをやってるし。もう技術がないんですよ。それに気持ちだけでどうにかなるのなら世の中こんなに失恋が蔓延したりはしないはずです。伝えるのは技術です。人が元気になるとはどういうことか、それに関する知識は余りに少なくなってしまっているとおもいます。

元気とはどこから来るのか、それを学びまた返していく行為、これも医療だろうなと思うのです。病棟を回っていて色んな患者さんと話をします。私の場合一人につき30分以上だらだらしゃべったりしているのですが、それでも重症な患者さんにはどう接していいのやら悩んで沈黙してしまう事もあります。ただ、少しでも状態がよいときはこういうことにしています。「今日は○○さん、元気そうな顔がみれてよかったです。僕もすごく嬉しいです」大抵の患者さんは嬉しそうにしてくれます。ただ、もっといいセリフ、言い回しあるでしょうね。人にもよりますし。

1 コメント

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Unknown (りっきー)
2005-05-01 09:51:33
先日は楽しかったね!また戻ってくるときあれば声かけてください。



ここのブログを読むたびにいろんな気づき・学びがあっていいなぁ、とつくづく思いました。

僕自身、結構愚痴を聞いたりしているタイプ(愚痴を言うほうも多いけど)なんで参考になりました。



「マイナス(-)=愚痴」を受け止めて打ち消すより、「プラス(+)=感謝・ほめ言葉など?」を与えるほうが手っ取り早いし、効き目も大きいよなぁ、と思わされます。

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