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演劇史上に残る芝居 『身毒丸 復活』

2008-03-15 22:09:52 | その他演劇・バレエ等
昨日は夕方から突風・雨・雷。荒れた天気に、うちのわんこもビクビクッものでしたが(苦笑)今日はうって変わってよい天気でした。

さて、今週の火曜日、11日に観に行ってきたお芝居『身毒丸』について、ちょっとだけどたっぷりと感想を・・。

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席はJ列下手。 前から10列目。サイドブロックではあるけれど、芝居を観るには最適な距離。
さいたま劇場は結構傾斜があるし、7、8列目あたりからは横に膨らみを持つように座席がサイドに広がっているので、サイドブロックでもとても観やすい。

『身毒丸 復活』と題されているように、一度は封印されていた芝居。
1997年、2002年に上演された時には観にいけなかったので、今回もの凄く楽しみにしていました。
そしてそれは全く裏切られる事は無かった。

ワシントンからの上演のオファーに以前なら「凄いな~」と思ってことが、「当然だな、これは」という気持ちに。。。。
このお芝居は外国人から見ると、日本のちょっとミステリアスな部分に足を踏み入れたような気分になるんじゃないかなぁ。
随所に観られるスローモーションな動きと、壁一枚、障子一枚隔てたところでの動きと実際には聞こえない会話の描写。
これだけでもインパクト十分なのだけれど、更に日本ならではの“間”があるんです。
この“間”がいいんですよね。 ちょっと歌舞伎の世界にも通ずるような感じでした。

藤原竜也×白石加代子主演の『身毒丸』は、1997年ロンドンのバービカン劇場で大絶賛を浴び、そのあと日本での凱旋公演。そしてその絶賛の嵐に2002年『身毒丸 ファイナル』と題し、再々公演の国内ツアー。

1997年も2002年も観に行けず、何度もDVDを買おうかどうか迷っていたのだけれど、結局買ってはいなくて・・・。
もう演らないだろうなと思う芝居や、演っても観には行けない(お芝居はお金がかかるので、全てを見に行くことは不可能・・)だろうなと思う芝居は、DVDやCSで観てしまうことがあるけれど、やっぱり“観たい”と思う芝居は可能である限り“舞台”でと思っているので、今回の『身毒丸』はやっぱりどこかでまた再々々演があると信じていたって事なのかな。^_^;
でも、その思いが叶い、本当にDVD観てなくて良かった!多分先にDVDを観てしまっていたら、ズズズーーーーと、訳も解らず引きこまれるような状態にはならなかったと思うから。(^^ゞ

芝居は真っ暗闇の中、グラインダーがバチバチと火花を散らし、静かだけれど重たい音楽が流れ出します。そこへ登場するのは街中で商売をする人々。 でもその人々はいわゆる普通のいでたちではなく、その人物自体が何かを誇張して存在している、禍々しい姿の人々。
(蜷川さんが昨年演出した『エレンディラ』の見世物小屋のシーンが頭を少しかすめました。勿論こちらのほうがとてもおぞましい世界、アングラ(アンダーグランド)な世界だけれど・・)
そこへ死んだ母の姿を追い求めながらさまよう身毒丸が登場。
“家”を望む父は母を売る店で“お母さん”を買うことを決める。かたくなに拒否する身毒丸だが、ある一人の女性に母の面影を見つけ、父はその女性を家に招き入れることに。

この時の白石加代子さんの登場に思わず息を呑みました。
「買って・・買って・・」と手を伸ばす女達の中から、凛とした姿と艶かしさを持ちながらスローモションな動きで小屋の中から抜け出してくる撫子(=白石加代子)。
「う・・・。一体これからどんな愛憎激が始まっていくんだろう・・」 
怖いもの見たさというのはこの事かもしれないです。 最初からどっぷりと人間のアングラな部分に足を踏み入れていました。


「家にはお母さん、お父さん、そして子供」 父親の“家”を望む言葉が要所、要所で使われますが、その言葉が繰り返し使われていくにつれ、複雑で哀しい気持ちに・・・。 家族というのは形では無く、心の結びつきなのに・・。ここ最近おこっている残虐な事件の深層心理にリンクするような部分です・・。

撫子は連れ子のせんさくと共に家に来ます。
ここでまた白石加代子さんの演技が印象的。 着物をさっと着替え、襷を掛け、女から“お母さん”へと変わる姿が見事でした。 舞台が暗転することもなく、そのままこの演技から半年後の家の様子へと繋がっていくのですが、まるで早送りでその年月を見ているような感じにまで繋がるところも本当に素晴らしかった。凄いです、白石加代子さん。

一つ屋根の下に暮らしながらも“お母さん”に全く心を開こうとしない身毒丸。 お母さんとして買われたことを充分に解っていながらも女としての生活を夫に求めるが叶わず嘆く撫子。
そんな撫子がある日、行水をしている身毒丸に目を奪われます。 女としての視線になる瞬間。 
このシーンのこの時の“間”が凄く良っかった! この“間”がラストのシーンに繋がっていく布石だったと思います。

毎夜行う家族あわせゲーム(現代のトランプのようなもの)で疎外感を味わった身毒丸は家を飛び出し、撫子はそんな身毒丸を探し見つける。 でも身毒丸に拒絶され激怒。尻をぶたれる身毒丸。(ここがあのチラシやDVDに載っているシーンです。) 藤原くんの表情がなんともいえませんでした。 初演の時は15歳。このシーンは子供が親にぶたれるわけだから、現在25歳になっている藤原くんが演じて違和感がないんだろうか・・。そんな事を思っていたけれど、全く関係なし! 苦渋と怒り、そして哀しみが見事に表現されていたと思います。

撫子の仕打ちから逃れた身毒丸は、仮面売りから会いたい人に逢える、どこでも行ける穴をもらい、亡き母を求めて穴に身を投じると、そこには亡き子を求め彷徨う母たちの姿。 (あの世の世界?)その姿におののきながらも自分も亡き母の姿を探します。 

「かごめかごめ かごの中の母はいついつ出やる 夜明けの晩に・・ 後ろの正面だぁれ・・・」

亡き母だと思って振り返った先には撫子・・!


ここ、めちゃくちゃ怖かったです・・。(;_:)(白石さん・・。本当に凄すぎます・・・
《本当は怖いグリム童話》というのがありますが、《本当は怖い日本歌曲》って言うのがあるんじゃないかってくらい、ゾゾ~としました。

二年の年月を経ても“お母さん”として認めてもらえない撫子は、身毒丸の無き母の遺影を顔が見えなくなるまで磨き、それを見た身毒丸は撫子を平手打ち。それを知った父は“家”を守るために母として受け入れるように身毒丸に命令をするが・・・。

“お母さん”とは認めたくなくても、“息子とは思っていても”、一人の男女としてはどこかで惹かれあっている二人。現実の世界で拒絶しあっていても、心の中では・・。

“家”という中では母と子でなければならず、そんな地獄のような状況に耐えられなくなった撫子は、
暗闇の中、母を求めてさまよう身毒丸が間違えて撫子を抱きしめてきた身毒丸に呪いを・・!

「祈る瞼があらわれて その呪い強ければ 一百三十六本の釘打ちが傷となり にわかに両目つぶれたり・・」

呪いによりのたうちまわる身毒丸。 

藤原くんは物凄い形相で、迫力で圧倒されつづけました。
瞬きもつばを飲み込むこともできず、ただただ目を見開いて、その光景を見ている自分・・。

更に芝居は一年。身毒丸が居なくなっても3人で今まで通りに暮らす家族 “家”。奇妙な光景。
そこへ地の果てをさまよっていた身毒丸が現れ、義弟を殺しに・・。

すさまじかった・・。でも恐ろしいほどの演技に目を瞑り・・ とはならず、なぜか見入ってしまう自分。
物凄い迫力で本当に怖いのだけけれど、なぜか美しくもあるんです。
本当に不思議。。。だけれど、こういうところが日本の美的感覚でもあるのかもしれないです。

身毒丸は以外に効果音や音楽が多いのだけど、その全ての音に見事にマッチした動き(演技)をする藤原くんはやっぱり只者ではないです。
少しでも音とずれたら台無しになるだろうと思われるシーンが何箇所もあるけれど、どれもピッタリ。迫力が更に増します。
ハムレットの時にも思ったのだけれど、藤原くんはとても身のこなしが軽くて立ち回りが綺麗なんですよね。
動きに余裕が出る分だけ演技にまた力が注がれているように思えます。本当に見事だなぁと感動します。

“家”が壊れ、男と女として向き合うことになった二人。
固く激しく抱き合い・・・

「お母さん もう一度僕を妊娠してください!」

このセリフは衝撃的すぎる・・。 だけれどもこれもまた舞台上の二人をみていると美しい。。
禁断の愛。
でもドロドロとしたものでもなく、悲しさだけを強調するようなものでもない。

日本人がもつ静の中の動。それが美しさに繋がっているような気がしました。

ラストは、家を失くし、名前を無くして、誰からも忘れられるために旅経つ二人は町の雑踏の中へ消えていく。。

「旅は帰れる場所があるから楽しい」 
確か寺山修司の詩にそんな言葉があったけれど、まさしくこの言葉の光景をみているようでした。
帰る場所が無い旅・・。そこは・・


白石加代子さんの凄さに脱帽。そのインパクトに恐ろしささえ感じる。でもその恐ろしさが喜びに。
藤原竜也くんの巧さと見るたびに伸びゆく才能にまた感動。 彼の芝居はいつもみるたびに芝居の奥深さと素晴らしさを私に伝えてくれます。 

今回のお芝居。一言で言ったら 「物凄いものと極上のものを観た!」
日本人でなければ演じることが決して出来ないものでした。
観ることが出来て本当に良かったです。 心から感謝!


『身毒丸』
作:寺山修司・岸田里生
演出:蜷川幸雄
出演:身毒丸-藤原竜也、撫子-白石加代子 父-品川徹 小間使い-蘭妖子 仮面売り-石井愃一 他

~2008年3月11日 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール~



公演日5日目。お花が綺麗でした


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