FAKE? or Truth?

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『ムサシ London. N.Y. Ver.』

2010-06-10 23:35:38 | その他演劇・バレエ等
『ムサシ London・N.Y. Ver.』 2010.6.9. @さいたま芸術劇場

1年2ヶ月ぶりのさいたま芸術劇場 & 『ムサシ』。
会場内には故 井上ひさしさん逝去の記事の掲示と井上ひさしさんへのメッセージを受け付けるBox、 London公演の批評が掲示されていました。

London公演の各誌の批評はどれもかなり高い評価だけれど、批評内容(捉え方)が微妙に違うのがまた面白い。
蜷川幸雄さん独特の舞台美術の世界、東洋文化の理解と解釈、出演者の技量の高さなどなど、演劇の本場Londonでこれだけの評価を受けることに、ただの観劇者の私もつい口元が緩む。 やっぱり日本人としては嬉しいですよね~。 どんなに末端の一観劇者でも。






さてさて、今日の席は・・・。 「
チケットを購入したのは4ヶ月前の2月。 すっかり忘れていましたが今日は・・・“最前列”でした・・・。

最前列は芝居ではあまり良い席とは言えないけれど(やっぱりベストはセンター7列目前後。 蜷川さんのクラスの舞台になると、10列目くらいで両端の動きがちょうど目に入る感じでもあるので、辛いところはありますが、昨年複数回観ているのもあり、なんとか今日はOK(今回は1回観劇ですが)って感じでしょうか。

とはいえ、最前列の楽しみもあります。
役者の表情が手に取るように見えることは言うまでもありませんが、今回は更にリアルに感じるところが盛りだくさん

小次郎が武蔵に書いた果たし状。 「おぉ~! 本当にちゃんと書いてあるんだ~~!」 全ての文字が半紙が透けて見えるし、“佐々木小次郎”の署名ががっつり見えた時はちょっと感激。(笑) 何も書いてないとは勿論思ってはいなかったけど、あれだけ文字がはっきりと見えるとなんか嬉しくなっちゃったりして。(笑)

それと“風”。 『ムサシ』では場面の変化、時の流れを現わすのに“風”がとても重要な役割を果たしています。 竹やぶがサワサワと音をたて、風の音をより風として感じる演出は何度体感しても素晴らしいの一言。・・・が、その“風”をどの席よりもリアルに感じるのが最前列。 実際に少しだけ風が吹いているみたいなんですが、それよりも竹やぶ。
サワサワと揺れだした竹やぶの影が座席を呑みこんでいるので、まるで舞台の中にタイムスリップしてしまったような感覚になってしまうんです♪ これはなんとも言えない心地よさ。 人というのは聴覚で感じる事を視覚で感じたり、視覚で感じることを聴覚で感じることが出来るんですよね。 改めて感じた発見でした。

そして、つぶやきと足音の体感。 主人公がセリフを喋っている時に舞台の脇で繰り広げられる細かい演技の中でのつぶやく役者さんの声。掛け合いをする声。 「こんな事喋ってたんだ~」と小さな発見。 だだだーっ!と走った時には座席が揺れます。(笑)
3時間にも及ぶ芝居。 つぶやきなんかより息遣いが聞こえてもおかしくないくらいなのに、 走った時に揺れるくらいなら、すり足の音が聞こえてもいいくらいなのに(←びっくりするほど聞こえません!)・・・。 凄いですね、役者さんて。(感動)

そんな感動を随所に挟みながら3時間の芝居は吸い込まれるようにあっという間でした。

今回、小次郎役が勝地涼くんということで、芝居にどんな変化があるだろうと思って期待をしていきました。
当たり前のことだけれど、役者が替わるだけで芝居って変わりますね~♪ 小次郎だけでなく沢庵宗影(=六平直政)も配役が交替しているので全体的な雰囲気がまた違います。 期待は裏切られませんでした


慶長十七年(一六一二)陰暦四月十三日正午。 豊前国小倉沖の舟島。真昼の太陽が照りつけるなか、宮本武蔵と佐々木小次郎が決闘。
「遅いぞ 武蔵!」 小次郎のこのセリフを聞いた瞬間、 一瞬の違和感とも似た戸惑いを覚え(頭の中に小栗くんの声がこびりついてるんですよねー)、「強い小次郎だっ」と感じました。 声の張りかたも迫力があるし、目がギラギラしているんです。 強い小次郎そのもの。 こんなに強そうな勝地くんを観たのは初めてで(TVの役とかだと可愛らしいイメージ)、ちょっと衝撃。

勝地くんは声も出ているし聞きやすい。 想像していたよりも太い声。 立ち回りも力強く、役柄に合っていると思いました。(London誌の批評も高かったです♪)
でも・・・。 これは好みでしかないと思うのですが、2009年の『ムサシ』の小次郎(=小栗旬)と今回、2010年の『ムサシ』の小次郎(=勝地涼)。 どちらが好み(勿論役どころとして)かというと・・・うーん・・ どちらかというと・・・私は小栗旬くんの演じた小次郎でした。

場面場面で「おっ!ここは勝地くん演じる小次郎の方がいいな~」と思うところは多々あるんですが・・・。なんていうんだろう・・・。
このお芝居事態がコミカルな要素を含んでいるので、それを含めた全体的な雰囲気かな。 小栗くんてちょっと飄々としたところを持っていると思うんですが、熱き小次郎を演じたときに、うまくその部分が作用しているというか、うまく力が抜けている風に感じるというか。 熱すぎないところが好みなんですかね、私。
なので、コミカルな動きやセリフの“5人6脚”の場面や、“殺陣の稽古がダンスになってしまう”場面とか、“継承権十八位”に自分がいると思い込み舞い上がってしまい腑抜けになってしまった場面とか、小栗くんはちょうどよく演じていた部分が勝地くんはちょっと堅い感じがしてしまって・・・。 まぁ、これもただ単に好みなんだと思うのですが。

ただ芝居全体もそういう雰囲気で流れるので 、勝地くん演じる小次郎がギラギラしていればいるほど、相対するムサシ 藤原くんの凛とした立ち姿、奥に秘めたる静かな炎を燃やす姿がより活きていました 
なんだってこうも美しく、立っているだけで“その人”を表す立ち姿が出来るんだろう。 策士と言われた武蔵を本当に見事に、最初から最後まで表現していました。

前回の武蔵よりも更に磨きがかかっている演技に目が離せなくて困りました。 ちょっとした所作も見逃せなくて・・・。 最前の私の目は魚眼状態になりそうなくらい。。。 疲れました。(苦笑)

今回、藤原竜也という役者の凄さを見せつけられた最高の場面があります。 それは筆屋乙女に「父の仇を打つため・・・」と頼まれ、指南役を買って出た小次郎に「何か策はないのか?」と言われた武蔵が「無策の策ならある」と言い、上段に刀を構えるですが・・・。

それまで少々笑いを含んだ芝居の空気がピタッと一新するんです。 
スっーっと静かに刀を抜く。その瞬間に空気が変わる。 凄い・・
表現の仕方が難しいのだけれど、照明がどうとか音楽がどうとかそんなもので変化するんではなく、全てが呼吸。 藤原くんの演技の呼吸。 “一体どうするの?”と舞台の上も舞台の下でも皆が思い、見つめる緊張感のある瞬間を生み出しているのが藤原くんの演技の呼吸。 間の取り方。 観る者を集中させる素晴らしい演技の技 
今まで何度も藤原くんの芝居を観ているけれど、今回は群を抜いて素晴らしかったと思います。 痺れましたっ


故 井上ひさしさんが書き上げた『ムサシ』。 井上さんが書き上げるものは、いつもその時代の世を指し示していると私は思うのだけれど、この『ムサシ』 にもそれを感じます。

結界が解けてしまい、亡き者たちが言う言葉。
「命ある時にはその大切さが分からず、無駄にしようとします。」
「(こうなってみて)辛いことも、悲しいことも・・・ どんな毎日でも全てが輝いて見えるのです。」
「どうか争い事は止めてください。 命を無駄にしないでください。」


”命の大切さ “が軽々しくなってきたと感じる、日本人へのメッセージ。
そう捉え、強く心に受け止めていたけれど、それは先に上演されたLONDONでも同じだったようです。“命の大切さ”を唱える白石加代子さんの言葉に感動したと評されていました。

日本をはじめ、先進国では自ら命を絶つ者が増え、途上国ではいまだ内戦が終わらない国も・・・。
実際の戦いは起きていないとはいえ、国と国の戦いも小さなキッカケで起こる可能性だって充分にある今の世の中。 ううん。そんな大きな事だけではなく、身近な事でも沢山ある。誰かに対するちょっとした怒りが大きな事に繋がることも・・・。

全てに通じる事は“怒りや復讐 という連鎖の鎖を断ち切る強さを持つ” ということ。  また今回の『ムサシ』で心に刻みました。


この日は前楽。 満場の拍手とスタンディングオベーションの中、3度目のカーテンコール。ニコっと笑った藤原くん。 勝地くんに笑顔で喋りかけ、それにちょっとはにかんだような笑顔で応える勝地くん。 深々とおじきをする藤原くんの左手は勝地くんの腰をぽ~んと叩いていました。 まるで「やったな♪!」って声が聞えてくるような瞬間でした



改めてやはり『ムサシ』という作品は、傑作だと思います。 
そしてやっぱり今回も複数回観るべきたっだ・・・!と若干後悔・・・

パンフレットも迷って迷って買わずにきましたが(芝居内容は前回と同じなので・・・)、これもまた若干後悔中 
良い芝居を観ると、素敵な後悔が色々出てきます

いつかまた、再演してほしいなぁ~。 N.Y. 凱旋公演? 早すぎるか。(笑)

最後に・・・。 
N.Y.公演の成功を心から祈ります。

(※今回は再演なのでストーリーについては触れていません。 もし気になる方がいらっしゃいましたら、ブログ内 『ムサシ』で検索 or 2009年3月記事内から検索をしてください)

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~ムサシ~
慶長十七年(一六一二)陰暦四月十三日正午。
豊前国小倉沖の舟島。真昼の太陽が照りつけるなか、宮本武蔵と佐々木小次郎が、たがいにきびしく睨み合っている。小次郎は愛刀「物干し竿」を抜き放ち、武蔵は背に隠した木刀を深く構える。武蔵が不意に声をあげる。「この勝負、おぬしの負けと決まった」。約束の刻限から半日近くも待たされた小次郎の苛立ちは、すでに頂点を達していた。小次郎が動き、勝負は一撃で決まった。勝ったのは武蔵。検死役の藩医に「お手当を!」と叫び、疾風のごとく舟島を立ち去る武蔵。佐々木小次郎の「巌流」をとって、後に「巌流島の決闘」と呼ばれることになる世紀の大一番は、こうして一瞬のうちに終わり、そして・・・・・物語はここから始まる


宮本武蔵・・・・・藤原竜也
佐々木小次郎・・・勝地涼
筆屋乙女・・・・・鈴木杏
沢庵宗彭・・・・・六平直政
柳生宗矩・・・・・吉田鋼太郎
木屋まい・・・・・白石加代子

平心・・・・・・・大石継太
浅川甚兵衛・・・・塚本幸男
浅川官兵衛・・・・飯田邦博
忠助・・・・・・・堀文明
只野有膳・・・・・井面猛志


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