K-BALLET COMPANYの公演を観にいくのは約1年ぶり。毎年クリスマスに公演される『くるみ割り人形』など、観にいくチャンスはあれど、決して安くはないチケット。やはり回数が観にいけないのであれば、熊川哲也さんが出ている時に観にいきたい、と思ってしまい約1年ぶりの鑑賞になりました。
今回の演目は『ジゼル』。オーチャードホールという素晴らしいホールでの公演でもあるので、席をとるのにもこだわってみました。
といっても2F最前列は無理な話なので、2Fバルコニー席の最前。二人がけの席なのでまるで招待席のような気分。手すりがちょっと気になるけれど、舞台には被らなかったので、開幕をしたら全く気にならず、完全に自分の世界での鑑賞となりました
実際のバレエを観たことがなくてもバレエ漫画にハマった事のある人ならば、『ジゼル』という作品名は知っている(と思います)、ロマンティックバレエの代表作の一つ。現在踊られているバレエの中でもっとも古い形式のバレエです。
熊川さんのバレエが観られるというだけでも静かな興奮状態なのだけれど、それプラス、熊川さんの芸術監督としての力が発揮されている舞台美術や衣装などの楽しみ、そしてなんといっても『ジゼル』では、群舞の美しさと重要さが多分に含まれているバレエ。K-BALLET DOMPANYの質の高さをより感じられると思うと更に興奮が増しました
先日もちらっと書きましたが、この日はジゼルを演じるはずだったヴィヴィアナ・デュランテさんが5/9日の公演で左腓腹筋部分断裂という診断を受け、この日のジゼルは東野泰子さん。ヒラリオンはスチュアート・キャシディさん。アルブレヒトは勿論熊川哲也さん!というキャスティング
英国ロイヤル・バレエ時代からパートナーを組む“デュランテ×熊川”、黄金コンビの『ジゼル』を観たかったのも確かだけれど(なかなか観れる機会もない(しかも全幕)ので・・・)、そんな気持ちが吹っ飛んでしまうくらい、東野さんのジゼルは素晴らしかったです
『ジゼル』第一幕。
葡萄の収穫を祝う村では、恋人同士のジゼルとロイス(アルブレヒトが公爵という身分を隠し名乗っている名前)が楽しげに語らっています。ジゼルの母の信頼も厚い森番のヒラリオンはジゼルに想いを寄せていますが、二人の中を裂くことは出来ず悔しい思いをしています。
収穫祭の女王に選ばれたジゼル。村人たちの前で可憐に踊ります。
最初に幕が開いた時、あまりの舞台の美しさにため息が出ました。奥行きがある舞台を生かした森とその木漏れ日。ジゼルの家は家の中を想像したくなるほどです。
そして東野さんのジゼル。 小柄できゃしゃな身体つきからして愛らしい村娘ジゼルそのもの。主役を演じる方は技術的なことは勿論だけれども、持って生まれた身体がその役柄を演じる条件になってくると思いますし、こんなにぴったりな人はいるだろうか~
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と、心奪われてしまいました。(笑)
第一幕でのジゼルの踊りは、愛らしさが溢れる踊り。 軽やかな足の動きが特徴。東野さんの踊りは体重を感じさせないくらいにクルクルと軽い。(ここで第二幕へへの期待も大きく膨らみました♪)なのに素晴らしい安定感。全くブレません。元気で可愛らしい中にも、心臓が弱いジゼルのはかなさが、東野さんの身体を通して出てきているところに自然と引き込まれていきます。
狩りの知らせを告げる角笛に慌てるロイスを見てあやしく思ったヒラリオンは、ロイスの家に忍び込み、そこで狩りに来た一行(貴族)と同じ紋章が入った剣を発見。ロイスが村人ではなく、貴族である証拠をつかみます。
狩りをしている一行はクールランド公爵とその娘バチルド。バチルドに気に入られたジゼルはネックレスも貰います。一行が去ったあと戻ってきたロイスにネックレスを見せるジゼル。そこへヒラリオンがやってきて剣とネックレスの紋章が同じだということを告げ、更に角笛で公爵一行を呼び寄せ・・・。
バチルドとロイス(=アルブレヒト)が婚約者同士だと知ったジゼルは、錯乱し、弱かった心臓も耐えることが出来ずに・・・死・・・。
『ジゼル』を知っているとはいえ、次の展開にドキドキするのはやはり真に迫る踊りとそれにぴったりとくっつき離れない音楽との融合なのでしょうか。ドラマチックな効果は素晴らしいです。
ジゼルがロイス(=アルブレヒト)との楽しい思い出を思い出しながらも錯乱し、村人達の間を気がくるわんばかりに駆け抜けるところがとても良かったです。ただこれは後から思ったことですが、東野さんのかもし出す雰囲気かもしれないですが、錯乱する様子が大人しかったかな~と・・・。ド素人が生意気ですが、そんな事を思いました。
そして熊川版『ジゼル』の大きな特徴。有名なジゼルのヴァリエーションをバチルドの前で踊るというところです。物語れの流れを切らない、自然な流れの中でのヴァリエーションは、より素晴らしさを増したように思います
熊川さんの演出、振付は、マイムの部分がとても解りやすく、細かく内容を知らずとも話の流れがわかるし、とてもバレエというものが身近に感じるし、物語が自然に流れていく感がとても心地がいい。
かといって芝居とは違い言葉があるわけではないので、マイムを通して自分なりの理解を求め、ほどよく頭を使うところが良い、というか面白いところ。バレエの魅力。熊川哲也さんの演出はこのさじ加減が絶妙だと思います。
ここで休憩。
コーヒーを飲みにラウンジへ行くと、なにやらポストカードを手にしている人がっ!! カウンターを確認!ロールケーキを頼むとポストカードかメモ帳がもらえるらしい~
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ということで、ロールケーキを注文♪ ポストカードをいただきました~
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(写真参照※ポストカードは“眠りの森の美女”)
大満足気分で第二幕です。(笑)
『ジゼル』といえば第二幕。
結婚を出来ずに亡くなった乙女の魂(=ウィリ)がやどる森の中のジゼルのお墓が舞台。
ジゼルの墓に最初にやってくるのはヒラリオン。ウィリの女王ミルタの命令でヒラリオンは死に追いやられてしまいます。
ここでまたまた熊川版の特徴。ジゼルの墓前で眠るヒラリオンのところに、もうウィリたちが現れます。音も無く現れ、隊列をなしたウィリたちに、青白い世界が冷たく恐ろしいものに変わっていきます。
ミルタの命令によりウィリ達はヒラリオンを踊り躍らせ、死にいたらしめますが、この時のヒラリオン役、キャシディさんが素晴らしかった!本当にウィリたちに操られているかのような錯覚を起すほど、音楽と調和したジャンプ。手足の動き。「どうやっているんだろう?」(笑)と、真面目に思ってしまうくらい、見事でした!
そしてそして、いよいよアルブレヒトがジゼルの墓前に現れます。両腕に沢山のユリを抱えジゼルの墓前に祈るアルブレヒト。そこに現れるジゼルの亡霊。
この時、“うわっ”と心の中で声をあげてしまいました。 ジゼルの登場が本当にフワっと、人を感じさせないような登場だったから。。。
ウィリとなったジゼルを表す前方に高く掲げられた腕。 捕まえようと思っても捕まえられないフワリとした動き。嘆きと哀しみに溢れるアルブレヒトの表情と絡み合い、どんどんジゼルの世界に引き込まれていきます。
そして男性舞踊手最高の見せ場。アルブレヒトがウィリたちに操られ、踊らされ、人間とは思えないような大ジャンプを見せます。
熊川さんの足が上がった途端、もう会場は拍手拍手拍手
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大歓声です
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まさに超人!
あれだけの高さを飛びながら、アルブレヒトとしての感情を表し、美しきジャンプをする。。。
「一体どんなことになっているんだろう。」「本当にウィリたちに操られているんじゃないか・・。」
そう思いたくなるほど、本当に本当に素晴らしい
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そしてそしてこれ以上に素晴らしいのが、アルブレヒトとジゼルとのバ・ド・ドゥ。ウィリに踊らされるアルブレヒトは魂だけのジゼルと踊ります。
アルブレヒトのリフトでまさに宙にうかぶようなジゼル。
もうこれはですね、観た人にしか解らないです!本当に凄い
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本に本当に凄いんです、あのリフトがっ
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舞台の端から端へ、ふわりふわりと浮かぶジゼル。 流れるような動きは熊川さんのリフトの素晴らしさです!
男性舞踊手の手を感じさせないんです!
足の指に均等に力が入らなければきっと出来ないであろう、床にピタッとついて微動だにしない足が下半身の安定感に繋がっているのでしょうか。
リフトだけでなく、回転のサポートも他の舞踊手からすると格段の差です! 本当に素晴らしい!大感動です
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第二幕で自然と拍手が生まれるところがあります。
それは『ジゼル』ではとても大きな役割と美しさを誇る群舞。 ウィリたちが隊列を成し、舞台の左右から静かに交差していく場面は、あまりの美しさに拍手がおきました。本当に素晴らしい~! K-BALLETの質の高さをはっきりと感じる場面です。
クラッシックバレエおいては『ジゼル』に限らず、群舞の美しさを楽しむところはありますが、『ジゼル』の群舞(第二幕)は特別だと思います。 なぜならばウィリだから。 ウィリは人間ではなく聖霊。 一糸乱れずということだけでなく、風のように波のように、そこに存在しているけれど存在してはいないような・・・。一人でも大きく乱れるような事があれば、ウィリの世界が、二幕の世界が完全に壊れてしまうと思うからです。
しかし、本当に素晴らしい世界でした!
バレエは総合芸術というけれど、本当にその通りだと、観にいくたびに思います。身体ひとつにしても「人間の身体ってこんなに美しくなるものなの?」と思い、
決して華美ではない舞台美術の美しさは、そこで踊るダンサーと相まって初めて最高の光を放つ。
オーケストラはダンサーたちの呼吸と同じように流れ、時には擬態を表す音にもなる。
これは贅沢の極みです。
バレエを観にいったことがない人がいたら、一度は是非
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古典バレエはちょっと・・という人でも、『ドン・キホーテ』や『海賊』は内容的にも踊り的にも楽しいと思うし、クラッシック音楽が好きな人は『第九』・・・。
って、どれもK-BALLETメインの紹介しちゃってますが。
それだけK-BALLETのバレエは、「これがバレエというものだったのか~!」と思わせてくれるものだと思います。
あぁ~・・・『第九』も観にいきたいなぁ・・・・。
でも・・チケ代が・・・・。
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お財布とにらめっこしながら、そのうち絶対に観にいきたいと思います。
2009.05.15(金) 18:30 Bunkamuraオーチャードホール
CAST
ジゼル:東野泰子
アルブレヒト:熊川哲也
ヒラリオン:スチュアート・キャシディ
ウィリーの女王ミルタ:浅川紫織
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高畑淳子さんから熊川哲也さんへのお花
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たかの友利さんから宮尾俊太郎さんへのお花