京都・甘楽花子にて
茂山家に伝わる文書に、九世千五郎正虎の〈鉄砲焼けの書簡〉と呼ばれるものがあり、これを若手能楽師の方々が自主的に勉強会を持って読み解いてみたのだそうだ。
それを味方健先生にチェックしてもらい、ついでにお弟子の方々にもレクチャーしてもらおう、と設定された席に紛れ込んだ次第。
どうやら〈花子〉のご主人もお弟子のひとりらしい。
〈鉄砲焼け〉とは〈蛤御門の変〉のことなのだそうだ。
蛤御門の変のとき、正虎が御用で彦根藩邸の警備にあたっている間に、新築したばかりの自宅が戦火で全焼。十世を身ごもっていた妻は焼け出されて転々とし、暫くしてようやく家族は再会できた。
このときのできごとを正虎は手紙に書いて地方の知人に送っている。能の曲名や能楽用語をもじって綴られた手紙で、これが〈鉄砲焼けの書簡〉。
途中を少し引用してみると、
……卒塔婆小町江志賀付 誠に藤の事にて皆々淡路騒
……卒塔婆や町へ火がつき まことに不時のことにて皆々慌て騒ぎ
水を烏頭にも井筒は檜垣氷室にて 生贄殊の外敦盛
水を打とうにも井筒は干上り干ムロにて 池煮え ことのほか熱(もり)
龍田一人金剛力を出し……
たった一人金剛力を出し……
といった具合に延々続く。さすが狂言師というかんじで面白かった。
この手紙の文面は、茂山千作『狂言八十年』(都出版社 S26年刊行)に活字化されている。(もちろん原文のみ)。
茂山家に伝わる文書に、九世千五郎正虎の〈鉄砲焼けの書簡〉と呼ばれるものがあり、これを若手能楽師の方々が自主的に勉強会を持って読み解いてみたのだそうだ。
それを味方健先生にチェックしてもらい、ついでにお弟子の方々にもレクチャーしてもらおう、と設定された席に紛れ込んだ次第。
どうやら〈花子〉のご主人もお弟子のひとりらしい。
〈鉄砲焼け〉とは〈蛤御門の変〉のことなのだそうだ。
蛤御門の変のとき、正虎が御用で彦根藩邸の警備にあたっている間に、新築したばかりの自宅が戦火で全焼。十世を身ごもっていた妻は焼け出されて転々とし、暫くしてようやく家族は再会できた。
このときのできごとを正虎は手紙に書いて地方の知人に送っている。能の曲名や能楽用語をもじって綴られた手紙で、これが〈鉄砲焼けの書簡〉。
途中を少し引用してみると、
……卒塔婆小町江志賀付 誠に藤の事にて皆々淡路騒
……卒塔婆や町へ火がつき まことに不時のことにて皆々慌て騒ぎ
水を烏頭にも井筒は檜垣氷室にて 生贄殊の外敦盛
水を打とうにも井筒は干上り干ムロにて 池煮え ことのほか熱(もり)
龍田一人金剛力を出し……
たった一人金剛力を出し……
といった具合に延々続く。さすが狂言師というかんじで面白かった。
この手紙の文面は、茂山千作『狂言八十年』(都出版社 S26年刊行)に活字化されている。(もちろん原文のみ)。
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