シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2007(大阪・フェスティバルホール)
東京バレエ団による全国縦断公演で、プログラム構成は下記のとおり。
Aプロ:「白鳥の湖」(第2幕より)「ステッピング・ストーンズ」「優しい嘘」「PUSH」
Bプロ:「カルメン」「椿姫」(第3幕よりパ・ド・ドゥ)「シンフォニー・イン・D」「TWO」「PUSH」
Cプロ:「白鳥の湖」(第2幕より)「カルメン」「PUSH」
Dプロ:「白鳥の湖」(第2幕より)「テーマとヴァリエーション」「PUSH」
ギエム初見の身としては、代表作の「白鳥」を見たくて東京のAプロチケットを取ったのだけども、上京できなくなり、ではびわ湖ホールDプロかと思えばこれは片山定期能と重なっているので、やむなく大阪公演へ。こちらはチケット入手が楽々だったのは、やっぱり「白鳥」の入っていないBプロだからなのだろう。客の入りもあまりよくなかった。おかげでゆったり観られたとも言える。
「カルメン」
上野水香というひとを山岸凉子がとても誉めていたのをどこかで読んで以来ちょっと興味を持っていた。「アラベスク」を描く気になったのは彼女を観たからだとか、「テレプシコーラ」に出てくる野上水樹の名は彼女の名からもらったとか…。
作品のことはよくわからないけれども、一見してバレリーナの好みというか身体の作り方が、Kバレエとは違うのかしらと感じた。繊細さよりも安定感が重視されているような。だから安心して観ていられる。でも、だからちょっと物足りない。よくわからない。
男性はふたりともあまりキレを感じさせない。女性の腰を回すときにあんなに動作が目立つのは男性が下手なのか、女性の回転が足りないのか…。
黒子のようにさびしいコスチュームで出てくる運命(牛)という役の高木綾というひとがシャープに見えてけっこうよかった。
バラをくわえて踊るところはなかったなぁ。
「椿姫」
これだけ演奏が生だった。やっぱり音楽は生がよい。
初めて見たギエム。このひとかーと思わせる存在感だった。ほとんど何もない舞台にたった二人であの重さを出せるのは凄いことだと思う。
振付は具象的すぎて好みではなかったけれども。
「シンフォニー・イン・D」
ちょっと言葉に困る。パズルのようなコミカルな動きは面白かったけれども、観ている側としては、ドリフターズのコントとか、ピタゴラスィッチのアニメを観ているような感覚で、東京バレエ団の出し物として観るなら、もっと完璧に揃えるところは揃えて〈芸術〉に仕立ててこないと…。あるいは衣裳で変化をつけてサービスするとか。
幕間狂言として捉えるには長すぎてくどかった。もう終わるだろうと思って拍手して終わらなかったことが2度。次の演目の準備にそれだけ時間が必要だったのか、などといろいろ詮索してしまう。
「TWO」
衝撃的な作品だった。おそらく鑑賞時間は10分くらいだったのではないかと思われるけれども、これだけで今日来た甲斐があった。
暗闇にシルヴィ・ギエムひとりが立っている。よく見えなくてどういうポジションでいるのかわからず、オペラグラスを覗くと彼女の背中が見えている。それも、「ああ、背中だ」とわかるまでにタイムラグがあるのは、なんだか見たこともないような筋肉が盛り上がっているからで、人間の背中ってそういう構造でしたか?と不思議な感覚にとらわれてしまう。
それから彼女の身体がさまざまな動きを見せるけれども、1.2m四方の枠から出ることはない。記憶では飛び上がったりしたことも多分なかった。ずっと地に足をつけたまま、上半身の怖ろしいまでの表現力。
ライティングと音響がまた素晴らしい。ごく普通の灯りを当てているだけのように見えて、神秘的な残像を残したり、気を抜けば何も見えなくなりそうなぎりぎりのところで見る者の注意を一点に集める。
音もしかり。ずっと昔にパリのラ・ヴィレットにできたばかりのジェオードを見に行ったとき(休館日だったのに忍び込んで球体に耳を当てたとき)こんな音がしていた。ぽわーーーん、ぽわーーーん、と宇宙に音があったらこんな感じではないかとイメージされるような音。
「PUSH」
これもコンテンポラリー。前半はずっとリフト状態で、男性の体力に驚く。というか、50分くらい(?)、ずっとふたりきりで踊り続けている彼女らの体力は並ではない。
暗黒舞踏嫌いの連れは、辟易していたけれども。<そういう作品。
*
全体として、ギエムというカリスマバレリーナを観にいったつもりが、彼女はバレエをとっくに超えていた。見終わって無性にダイエットがしたくなる(^_^;)
ガラ公演というのは、お能で言えば仕舞や舞囃子だけの会のようで、初心者にはやはり難解だった。今日はダンサーの競演というよりも振付師(コリオグラファー)の競演だった印象もあり。
*****
「カルメン」振付:アルベルト・アロンソ 音楽:ビゼー/ロディオン・シチェドリン
カルメン:上野水香、ホセ:木村和夫、エスカミリオ:後藤晴雄
他 東京バレエ団
「椿姫」振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:ショパン
シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル
ピアノ:高岸浩子
「シンフォニー・イン・D」振付」イリ・キリアン 音楽:ハイドン
東京バレエ団
「Two」振付:ラッセル・マリファント 音楽:アンディ・カウトン
シルヴィ・ギエム
「Push」振付:ラッセル・マリファント 音楽:アンディ・カウトン
シルヴィ・ギエム、ラッセル・マリファント
東京バレエ団による全国縦断公演で、プログラム構成は下記のとおり。
Aプロ:「白鳥の湖」(第2幕より)「ステッピング・ストーンズ」「優しい嘘」「PUSH」
Bプロ:「カルメン」「椿姫」(第3幕よりパ・ド・ドゥ)「シンフォニー・イン・D」「TWO」「PUSH」
Cプロ:「白鳥の湖」(第2幕より)「カルメン」「PUSH」
Dプロ:「白鳥の湖」(第2幕より)「テーマとヴァリエーション」「PUSH」
ギエム初見の身としては、代表作の「白鳥」を見たくて東京のAプロチケットを取ったのだけども、上京できなくなり、ではびわ湖ホールDプロかと思えばこれは片山定期能と重なっているので、やむなく大阪公演へ。こちらはチケット入手が楽々だったのは、やっぱり「白鳥」の入っていないBプロだからなのだろう。客の入りもあまりよくなかった。おかげでゆったり観られたとも言える。
「カルメン」
上野水香というひとを山岸凉子がとても誉めていたのをどこかで読んで以来ちょっと興味を持っていた。「アラベスク」を描く気になったのは彼女を観たからだとか、「テレプシコーラ」に出てくる野上水樹の名は彼女の名からもらったとか…。
作品のことはよくわからないけれども、一見してバレリーナの好みというか身体の作り方が、Kバレエとは違うのかしらと感じた。繊細さよりも安定感が重視されているような。だから安心して観ていられる。でも、だからちょっと物足りない。よくわからない。
男性はふたりともあまりキレを感じさせない。女性の腰を回すときにあんなに動作が目立つのは男性が下手なのか、女性の回転が足りないのか…。
黒子のようにさびしいコスチュームで出てくる運命(牛)という役の高木綾というひとがシャープに見えてけっこうよかった。
バラをくわえて踊るところはなかったなぁ。
「椿姫」
これだけ演奏が生だった。やっぱり音楽は生がよい。
初めて見たギエム。このひとかーと思わせる存在感だった。ほとんど何もない舞台にたった二人であの重さを出せるのは凄いことだと思う。
振付は具象的すぎて好みではなかったけれども。
「シンフォニー・イン・D」
ちょっと言葉に困る。パズルのようなコミカルな動きは面白かったけれども、観ている側としては、ドリフターズのコントとか、ピタゴラスィッチのアニメを観ているような感覚で、東京バレエ団の出し物として観るなら、もっと完璧に揃えるところは揃えて〈芸術〉に仕立ててこないと…。あるいは衣裳で変化をつけてサービスするとか。
幕間狂言として捉えるには長すぎてくどかった。もう終わるだろうと思って拍手して終わらなかったことが2度。次の演目の準備にそれだけ時間が必要だったのか、などといろいろ詮索してしまう。
「TWO」
衝撃的な作品だった。おそらく鑑賞時間は10分くらいだったのではないかと思われるけれども、これだけで今日来た甲斐があった。
暗闇にシルヴィ・ギエムひとりが立っている。よく見えなくてどういうポジションでいるのかわからず、オペラグラスを覗くと彼女の背中が見えている。それも、「ああ、背中だ」とわかるまでにタイムラグがあるのは、なんだか見たこともないような筋肉が盛り上がっているからで、人間の背中ってそういう構造でしたか?と不思議な感覚にとらわれてしまう。
それから彼女の身体がさまざまな動きを見せるけれども、1.2m四方の枠から出ることはない。記憶では飛び上がったりしたことも多分なかった。ずっと地に足をつけたまま、上半身の怖ろしいまでの表現力。
ライティングと音響がまた素晴らしい。ごく普通の灯りを当てているだけのように見えて、神秘的な残像を残したり、気を抜けば何も見えなくなりそうなぎりぎりのところで見る者の注意を一点に集める。
音もしかり。ずっと昔にパリのラ・ヴィレットにできたばかりのジェオードを見に行ったとき(休館日だったのに忍び込んで球体に耳を当てたとき)こんな音がしていた。ぽわーーーん、ぽわーーーん、と宇宙に音があったらこんな感じではないかとイメージされるような音。
「PUSH」
これもコンテンポラリー。前半はずっとリフト状態で、男性の体力に驚く。というか、50分くらい(?)、ずっとふたりきりで踊り続けている彼女らの体力は並ではない。
暗黒舞踏嫌いの連れは、辟易していたけれども。<そういう作品。
*
全体として、ギエムというカリスマバレリーナを観にいったつもりが、彼女はバレエをとっくに超えていた。見終わって無性にダイエットがしたくなる(^_^;)
ガラ公演というのは、お能で言えば仕舞や舞囃子だけの会のようで、初心者にはやはり難解だった。今日はダンサーの競演というよりも振付師(コリオグラファー)の競演だった印象もあり。
*****
「カルメン」振付:アルベルト・アロンソ 音楽:ビゼー/ロディオン・シチェドリン
カルメン:上野水香、ホセ:木村和夫、エスカミリオ:後藤晴雄
他 東京バレエ団
「椿姫」振付:ジョン・ノイマイヤー 音楽:ショパン
シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル
ピアノ:高岸浩子
「シンフォニー・イン・D」振付」イリ・キリアン 音楽:ハイドン
東京バレエ団
「Two」振付:ラッセル・マリファント 音楽:アンディ・カウトン
シルヴィ・ギエム
「Push」振付:ラッセル・マリファント 音楽:アンディ・カウトン
シルヴィ・ギエム、ラッセル・マリファント
仰るとおり、ギエムは軽くバレエを超えていました。(笑)
彼女の筋肉と運動神経を感じる舞台で、子供の頃、体操を目指していた事がうなずけるパフォーマンスだったと思います。存在感が素晴らしかった。記事を拝見して、思い出してました。
どうも、わたしの場合、興味をもつタイミングがちょっとずつ遅いようです(^_^;)
身体芸術は、今が盛りという方を逃さず追いかけねばなりませんね。
ダンスパフォーマンスの集団芸?←表現が素敵じゃないですけど。
リバーダンスのパンフレット、そういえばギエム公演のとき、もらって眺めてました。
チャンスがあったら狙ってみます♪