月扇堂手帖

観能備忘録
あの頃は、番組の読み方さえ知らなかったのに…。
今じゃいっぱしのお能中毒。怖。

ジゼル

2006年08月19日 | バレエ
第11回世界バレエフェスティバル全幕特別プロ
(大阪・フェスティバルホール)

海外から招聘されたウラジミール・マラーホフ(アルブレヒト)とディアナ・ヴィシニョーワ(ジゼル)を東京バレエ団のメンバーが囲んでの公演。

しょっぱなヒラリオンが一輪の花と狩りの獲物を、ごんぎつねよろしく黙ってジゼルの家の戸口に掛けていく。このシーンはかなり印象的で、これによって彼は粗野な悪役ではなく繊細で純情な青年になった。

一方、アルブレヒトはなんだかよくわからないが二股をかけた悪い奴で、なのに最後はヒラリオンだけが裁かれアルブレヒトは許される。とてもすわりの悪い展開ではないだろうか。もちろん、往々にして運命とはそのように皮肉なものではあるけれども、そこまで表現しきれているわけでもなく、演出におざなりな感じが否めない。

以前、熊川哲也がKカンパニーでの「ジゼル」公演にあたり、ダンサーにとっても観客にとってもシンパシーを抱きやすいアルブレヒト像の造形を心がけたという意味のことを書いていたけれども、多分、こういう違和感を想定してのことだったのだろうな。

もちろん全然別の解釈でもかまわないから、「誰かの」解釈に基づく筋の通った演出が、少なくともわたしのような初心者には必要。今回の公演ではあまり演出家の顔が見えなかった。

ダンサーひとりひとりの踊りに文句はないものの、一幕後半はかなり退屈した。Kカンパニー版は、なぜあんなに楽しかったのだろう。一幕目で退屈することはなかった。群舞が多くてボリュームがあったからだろうか、衣装のおかげだろうか、とにかく、サービス精神に溢れていた。

二幕目は美しかったけれども、やや単調。群舞の見どころもわりとあっさりしていた。ま、暗い照明の中何処にいるのかわからない黒ずくめの熊哲よりは、白タイツのマラーホフのほうが目に優しかったのは事実だ(^_^;)
最後はやはり余韻を残さずさっさと幕は下りるのであった。。。

バレエも歌舞伎やお能と同じで、ご贔屓さんがいたほうがきっと楽しいだろう。ヴィシニョーワは愛らしかった。マラーホフは、どうかな。わたしは熊哲のほうがいいかも。
なんにせよ、Kカンパニーの公演が他に比べてどのように親切かということが実感できたことでもあり、しばらくはあちらについていこうと思うのであった。

今回の企画では、同じ演出の「ジゼル」を別のペア(マニュエル・ルグリとアリーナ・コジョカル)でも演じていて、どうも噂では、15日のルグリが素晴らしかったらしい。


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