アメリカで働く臨床栄養士のブログ

内科ICU栄養士。食が大好きな一男一女のママ。日本と異なる医療・栄養事情、過去に書いた情報は既に古いことも…あしからず。

私的サマリー:呼吸器系重症患者(09年5月)

2009年05月30日 | 臨床栄養:呼吸器系
私的サマリー:呼吸器系重症患者(09年5月)

~~栄養士としてできること~~
◎高脂質・低炭水化物の栄養剤は使わない。
◎アルジニンなど免疫系の入った栄養剤も試してみる(敗血症の時は注意)。でも長期使用への問題視、量や組成の問題などあるみたい。
◎食物繊維は使わない、または微量のものがベターかも(呼吸器系に限ったことではないが)。
◎カロリー投与は目標値の50%以上。でも70%以下くらいを目安に。
◎静脈・経腸栄養の両方で、グルコースの過剰投与に注意。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~

・呼吸器系向けの栄養剤(pulmonary formula)は高脂質、低炭水化物であるが、その効果をサポートするエビデンスはない。2009年のASPEN会議でも、ICUでのpulmonary formulaは支持されていない(1,2)。

・2009年のASPEN会議では、major elective surgery, trauma, burns, heand and neck cancer, and critically ill patients on mechanical ventilation(ARDS:急性呼吸窮迫症候群 and ALI:急性肺障害とか)の患者に対して(severe sepsisの患者は注意しながら)、immune modulating(arginine, glutamine, nucleic acid, omega-3 fatty acids, and anti-oxidentsなど)の高濃度栄養剤(水分調整のため:いつも必要とは限らない)の使用、少なくとも50-60%の必要カロリー量の投与を勧めたようだ。

・一部のRDはICUでPaO2/FiO2 ratioの計算をしているようです。多くの論文等では <200はARDS、<300はALIらしい。でもPulmonogistsによって基準は違う。 ・栄養投与の目標は、十分なたんぱく質投与、栄養の過剰摂取避けて過剰二酸化炭素の生産を避ける(VENTをWEANする間)、そして高血糖を避けること(3)。

・呼吸不全(respiratory failure)の場合に一番大切なのは、過剰栄養投与を避けること。過剰投与は二酸化炭素を溜め込んでしまう。特に、高炭水化物の経腸栄養剤、デキストロースベースのTPNで重要。グルコースが酸化されるとエンドプロダクトは炭水化物と水なので。特に重症なARDSの患者はOxepaのようなスペシャリティー栄養剤を短期間使うと効果的かも。

・免疫アップを期待してICUで使われている栄養剤にarginineなどが含まれているものがあるが、過剰使用も懸念されているとのこと。量の問題、それとも種類の問題?!短期間ってのがポイントなのかな?!。これからのリサーチで解明が進むかな。まだまだ分からないことが沢山ですね。

・集中治療室での食物繊維投与は注意が必要。食物繊維はいつでも素晴らしいと思いがちだがいつもそうではない。重症患者の場合は、腸管内のperfusionが十分でないこともあるので、低食物繊維のフォーミュラを使うべき(クリティカルケアの市販フォーミュラは低食物繊維になっている場合がほとんどだけど、スペシャリティー栄養剤は値段が高い!)。

・ventilatorをweaning offするときは、isocaloric, standard polymeric formulaがいいって教科書には書いてあるよう(2)。2009年も同じかな?

・すかさずAbbottのrepさんなどが "recommendations for the use of oxepa"を配布している。。とクラスメートが話していました。body temp, heart rate, resp. rate, PaCo2, diagnosis, ALI/ARDS, PaO2/FiO2などなどのっているそうです。さすがです。今年のASPENのステートメントを受けて、免疫サポート系が入っている栄養剤は、これからもっとICUに入ってくるだろうし、クラスメートも使っている人が増えているようです(ちょっと前まではあんまり効果無いって言われていたような。毎年変わりますね)(4)。

1. Parrish, C. Nutrition Support for the Mechanically Ventilated Patient. Critical Care Nurse 2003;23:77-80.
2. ASPEN Nutrition Support Core Curriculum: A case based approach-The Adult Patient.
3. Jeejeebhoy, K. Permissive underfeeding in the critically ill. Nutrition in Clinical Practice 2204;19(5):477-480.
4. Pontes-Arruda A, DeMichele S, Seth A, Singer P. The use of an inflammation-modulating diet in patients with acute lung injury or acute respiratory distress syndrome: a meta-analysis of outcome data. Journal of Parenteral and Enteral Nutrition. Volume 32, Number 6. Nov-Dec 2008. pp 596-605

最新情報:4年大卒業にも栄養士(DTR)受験資格あり

2009年05月28日 | お仕事
今日、最近大学を卒業した人から職場で聞いた情報です。

アメリカの4年大学でDPD(管理栄養士専攻みたいなもの)を卒業した人に、栄養士(DTR)の受験資格が与えられることになりました。

登録栄養士になるための学部(DPD)を卒業後に、RDになるためのインターンシップに応募しますが、高倍率ですので救済策ができたのでしょうか…。DPDを卒業した場合、本来DTR受験に必要な450時間のインターンシップが免除されます。

こちらがアプリケーションです。
http://www.cdrnet.org/pdfs/DTRPathway3.pdf

DPD卒業後、すぐにRDになれなくても、DTRになれますね。
ちなみにDPDはDidactic Program in Dietetics Graduates の略です。

あと、今までRDインターンシップの最低期間は、フルタイムで6ヶ月でしたが、もっと長くなるそうです。

今日は内科・産婦人科・精神科

2009年05月24日 | お仕事
今日は内科・産婦人科・精神科。
相変わらず糖尿病の患者さんが多いものです…。
なんだか糖尿病についての話ばかりしていた気がします。

今日は、食事か十分に摂れずに体重が激減した患者さんをみました。
どうやら、同居人が愛想をつかして出て行ってしまったみたいで、食事が取れなかったようです。病気により、自分で買い物や料理が出来なくなったようですが、「同居人の食事はまずくて食べられない」、「料理が下手すぎる」、「自分は料理が得意で何でも作れる」と言っていました。ときどき、人間関係や家族との仲がとっても悪い患者さんがいますが、大変ですね…。

あと、今日は他のRDが提案した栄養処方を覆す羽目になってしまいました。あるRDが、チューブ栄養の患者さんを、2週間の間に4回みたようですが(今日も不含めて)、どう考えてもよくないアウトカムになる可能性があると思いました。同日に2人のRDがみて、違う栄養処方を出すのは理想的ではありません。栄養処方を変更する前にそのRDに連絡を取ろうと思いましたが、もう帰宅していたようです。週末明けに、患者さんのケアについて話し合いたいと思います。

大学院の今セメ無事終了

2009年05月21日 | 大学院
無事に今セメを終えることが出来ました。成績もよい評価をもらい、嬉しく思っているところです。

しばし夏休みですが、静脈・経腸栄養クラスで学んだことなどを再度レビューして、このブログにアップしたいと思っています。やっぱり、日本語で活字にすると記憶に残りやすいみたいなので…。

あと、来セメがはじまる前に、ある栄養系の試験を受けようと考えているところです。でも、息子が一日中遊びたいモードなので、テストは先送りするかも。息子が寝ている間に十分な時間がとれるかなぁ~。これから、動物園に行ってきます。

仕事でNCP(栄養ケアプロセス)の使用

2009年05月19日 | お仕事
ここ数日は、急性期内科と産婦人科を担当しています。急性期内科は以前担当していたので、やっぱりとても働きやすかったし、ナースやPTなどに「最近どうしてるの~」と何度も聞かれて、なんだか嬉しかったです。

仕事では、少しずつですが、学校で学んだことを活かしています。以前と比較して、患者さんの、口の中、皮膚、浮腫などに注意を払っています。患者さんへとの会話の質も少しアップしたかなと思っています。

先週から、私の病院ではNCP(ニュートリションケアプロセス)の栄養診断(PES)をアセスメント内に含むことになりましたが、実際やってみるとちょっと難しいところがありますね~。例えば昨日は、Malnutrition(低栄養)と診断したかった、まぁ若い肥満の患者さんがいました。検査値(アルブミン、Hct/Hgb、Fe、TIBC、MCV、BUN、Creなど)、最近の体重減少、食事内容、薬物使用などを基にすると、Malnutrition(低栄養)だろうなぁと思いましたが、患者さんの症状からして(腹部の強い痛み、吐き気等はあっても、下痢は無し等)、もしかしてシリアック病、IBD、または腸系の癌だった場合は、Malnutritionのetiology(病因)が間違いになるなぁ~と感じたので、結局Inadequate food intakeという診断にしました。

もう一人の患者さんは、ひどい下痢、それに伴う食欲不振から体重が超激減していて、検査値(アルブミン、Hct/Hgb、Fe、TIBC、MCV、BUN、Cre、Folate, VitB 12など)や患者との会話を基にすると、栄養診断をMalabsorption(消化不良)にしたかったケースがありました。しかし、etiology(病因)として癌の可能性があると思ったので、結局これも間違いになる可能性があると思ったので、Altered GI functionで代用してしまいました。

どちらも、まぁ似ような感じかな~というところですが、やっぱり思うところは違うんですね…。

ちなみにシリアック病やIBDは診断が難しく、患者さんが退院する時になってもはっきりしない場合もよく見られます。また、癌の診断もすぐに出ない場合もあって結構日にちを要する場合もあるようです。上に書いた2人の患者さんは、入院3日ほどで、医師が次から次へと検査をオーダーしているところでした。

ところで、日頃このフロアを担当しているRDが職員食堂で出される料理の栄養分析をしているためです。ちなみに、職員向けの食事はとってもカロリーが高いことが分かって、みんな少々動揺しているようです。

どうやら他のRDの想像をはるかに超える高カロリー料理ばかりだったようですが、食物栄養に強い日本の管理栄養士なら、おそらく見ただけで大よそのカロリーは予想できるのではないかと思います。人間栄養に強いRDもよいですが、やっぱり「食」に強い管理栄養士にも強みは多くあると思います。とにかく、今回はみんなのリアクションに驚きました…。


勤務先でもカルテの記入方法に変化

2009年05月14日 | お仕事
私の勤務先でも、これまでのカルテ記入(SOAP)にNCP(Nutrition Care Process)を一部組み込んでいくことが今週決まりました。このNCPというスタイルは、単にカルテの書き方だけではなく、栄養士のクリニカルジャッジメントや総合的な栄養ケアを高めるツールだと感じています。ちなみに、ADA(アメリカ栄養士会)は、2012年までに全てのRDがNCPを使用することを目標としているようです。

SOAPだと、(S)では患者さんが~~と言った、(O)では医療行為、診断名、検査値などツラツラ~と書いていきます。(A)はアセスメント、(P)はプランです。

NCPには4つのプロセスがあります。
1)栄養アセスメント:栄養療法に関連する検査値、症状、患者との会話、体重などをズバリアセスメントする。
2)栄養診断:その名の通りアセスメントに基づいた栄養診断を出す(今のところ診断名は60あります)。
3)栄養処方・栄養ケア(英語ではintervention):栄養処方を出し、その栄養ケアの方法を具体的に書く。栄養素だったらカロリー、タンパク量、ビタミン・ミネラルの量をずばり数字で表す。検査値・体重の改善なども、目標をずばり数字で表示する。
4)栄養モニター・評価:これからモニター・評価していく方法、他のコメディカルとの連帯などを決めます(もちろん栄養士もコメディカルです)。

私の病院では、このプロセスの2番目である栄養診断を現在使用しているSOAPの(A:アセスメント)に含むことになりました。NCPは、SOAPの一部に組み込むこともできますが、将来的には4つのプロセスのみに以降していくと思います。

今日はCICUと外科

2009年05月12日 | お仕事
今日はCICUと外科を担当しました。

CICUでは一人をチューブ栄養から経口食に、もう一人をTPNから経口食にするためのアセスメントをしました。後者の患者さんは数日前からTPNをはじめたようですが、個人的には全くTPNを使う必要がないと思いました。慎重型(?)の医師や、TPN&チューブ栄養を処方することを好むRDもいたりと、、、まぁいろいろあるところです…。

外科では糖尿病と診断されたばかりの患者さん、手術後の患者さんなどをみました。やっぱり食事に関する話をするのが楽しいなぁと思いました。

お昼は、ワーキングランチで、子供のアレルギーに関する講義を受けながらのランチミーティングでした。ウチの息子には、今のところ卵と乳製品のアレルギーがあります。食事やおやつに、卵と乳製品が使えれば楽だな~と思うこともありますが、日本的な食べ物だけではなく、メキシコ、イタリアン、タイ、ベトナム、中国料理などを組み合わせているので、食材や料理のオプションが多いのはラッキーだと思っています。

今までは、日本で治療食・嚥下食などというと、和風中心が多かったと思いますが、世界の料理になじみが深い日本人が増えることで、かな~り食事のオプションが増えると思います。例えばアメリカには、やらわかい料理が多いので、そのままでも「やわらか食」になるなぁ~と思ったりするこの頃です。


不定期パートタイム

2009年05月05日 | お仕事
今日は不定期パートタイムとして出勤してきました。今日行ったのは、精神科。精神科の患者さんの多くは、治療によって症状が安定している場合が多く、たまに不思議な事を行ったり、独特な考え方が強い人もいますが、多くの場合は栄養の話は難なくできます。

今日は3人の患者さんと40分くらい話をして、その他10名くらいの患者さんとも短めに話して、カルテを書いたり、栄養処方を変更しているうちに、あっという間に8時間が経過していました…。長く話した3人の患者さんは、まだ診断されていないけれど糖尿病の可能性がある人、とっても中性脂肪が高い人&他の疾患(900以上。でもこれまでの最高は1500とか…)、摂食障害の人でした。

精神科は、ダイエットテクの時やRDになったばかりの時に担当していました。その頃は、とにかく急性期医療に関わりたいと思っていましたが、今は精神科での栄養管理も奥深く感じます。