魯露西亜夢酔談

何でも話そう、ロシア状況のあれこれ
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ロシア大統領の政治権力

2006-03-31 22:12:07 | ロシア

3月11日の日経新聞朝刊に「ロシア、製造業も国家主導」と言う記事があった。

プーチン政権主導による、国営ガスプロムによるロスネフの吸収合併および、その後のユーコス子会社シブネフチの買収というエネルギー産業の再編を経て、再び政権主導のもと主要産業の管理を強化しようとしている。ソ連崩壊による混乱の中で民営化され、弱体化していた主要産業に対する国の統制を取り戻し、産業振興を図るというプーチン政権の戦略だ。

戦略産業として、宇宙開発、原子力、軍事、航空機、自動車産業等が含まれる。戦略産業中39の産業に対する外資参入を制限(自動車は除く)したのだが、特筆すべきはプーチン大統領が直接、外国企業の投資を承認する制度を設けるとすることの言及だ。

この国のプーチン大統領に対する権力の集中が進んでいる。プーチン大統領は2000年5月、大統領令を発令し連邦構成主体を7つの連邦管区に分けて、連邦管区大統領全権代表職を設け、連邦管区大統領全権代表に構成主体政府の監督と職務の調整を委任した。それぞれの管区の全権代表は、大統領により任命される。さらに2004年12月12日、プーチン大統領は知事など地方の首長を、事実上大統領の任命制にするという法律に署名し、屋上屋を重ねる形で行政の中央集権化を実行している。元来この国は地方政治が藩閥政治に近い形で運営されてきた長い歴史がある。広大な領土の政治と経済の一人の人間による直接統治は、皇帝統治の時代 Цаствование でもソ連共産政権時代でもなしえなかったことです。

勿論わたしはここで、権力の集中=独裁=非民主的=悪いことと、言うような平たい見地をしているわけではありません。むしろ近代国家の歴史の中でも類を見ないほど、政治と経済の権力集中を自己に向けつつあるプーチン大統領の意図が、この国に存在する様々な弊風、弊害、弊習の打破であることが痛いほど伝わってきます。我が国のように全てが公官庁という目に見えない主体に掌握、主導されるシステムと違い、個人という良くも悪くも明確な権力の主体がそこに存在すると言うことです。好調な経済を背景に社会改革を進めようとするプーチン大統領ですが、今世紀でももっとも賢明な政治家として歴史に名を残すか否か、その試金石の一つは大統領の再任問題であろうか。統治が成功して、法律を改正再々選を考えるに至るならば、その道は独裁者の道に続くのかもしれない。権力は金をもたらし、金は腐敗をもたらす。

ともあれ、恵まれた経済環境とプーチン大統領という指導者を抱いたロシアの今後10年に目が離せない。ロシア経済を分析してみると、大化けしそうなロシア株がごろごろあるのも事実だ。今後それらにも、おりにつれ触れてみたいと考えています。


恋のバカンス

2006-03-31 10:04:43 | 音楽と絵画

作曲家の宮川泰氏が3月21日、75歳で死去した。

1960年代にロシアでヒットした、「カニークルィ・リュブビー Каникулы любви」と言う歌がある。この歌は、現在のロシアの若者もたいてい知っている。宮川氏作曲の「恋のバカンス」とロシア語のこの歌はメロディーが同じことは知っていたのだが、元歌がロシアだと長い間思いこんでいた。ロシア人に「恋のバカンス」の話をすると、本家はロシアに有りとみんな言う。「百万本のバラ」の例もあるし、そうかもしれないと長い間思っていた。今回初めてその真相にふれることが出来た。

http://www.yomiuri.co.jp/tabi/world/abroad/20060130tb0e.htm

もっとも、「百万本のバラ」の方はラトビアのライモンド・パウルスの作曲になる1981年にリリースされたラトビア語の「マーラが与えた人生」がオリジナルだ。ラトビア出身のアイヤ・クレレが歌っている。このあたりかなり面白い。ロシア人はアラ・ブガチョワが歌って大ヒットしたМиллион алых роз” はロシアの歌だと思っているし、それを加藤登喜子が日本で歌い、ヒットした。今では日本人はたいてい、「百万本のバラ」は日本の歌だと思っている。下記のサイトを訪れるとアイヤ・クレレのラトビア語での原曲「マーラが与えた人生」を聞くことが出来る。

http://byeryoza.com/topic/log2006/mara.htm

ともあれ、謹んで宮川泰氏のご冥福をお祈りいたします。


ロシア語の入力

2006-03-29 09:11:42 | 日常生活

今日は日本語または英語キーボードで、キリル語を入力するお話です。

日本語版Windows95/98/ME/2000/XPが インストールされたパソコンでの標準のロシア語入力は、JTsUKENG keyboard と呼ばれる標準ロシア語タイプライター配列での入力になります。ロシア語を使用したいと思う多くの方は、この標準ロシア語タイプライター配列になじみが無いかと思われます。そこでローマ字入力に近いキーボード配列での、 Phonetic または YaWERTY keyboardと呼ばれる入力方法をご紹介します。つまりこの入力方法だとそれぞれ下記のような配列になります。

a → а,  s → с,  d →  д ,  f →  ф,  g →  г ,  h → х,  j →  й,  k →  к ,  l → л

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、上のような配列です。クリックしてください、拡大します。

方法はまず「地域と言語のオプション」で入力言語でロシア語を追加してください。XPでの使用の詳細はTechnoWare社のサイトを参照してください。次に下記のサイトでkbdrunph.zip ファイルをダウンロードしてください。

 http://www.siber.com/sib/russify/ms-windows/keyboard/#nlsnt

WinNT用と記載されてますが、XPで問題なく使用できます。ダウンロードしたkbdrunph.zip をデスクトップにでも解凍してください。KBDRUNPH.REGKBDRUNPH.DLL の二つのファイルが出来ます。KBDRUNPH.REG をクリツクすると新しい配列がレジストリーに登録されます。次にKBDRUNPH.DLL をwindowsのディレクトリー下のsystem32のルートにコピーしてください。再起動後にタスクバーの言語をロシア語に切り替えて入力すると、見本の様な配列になっているはずです。以上で作業は終わりです。

多くのロシア人も、このロシア語の表音キーボード配列を好んでいるようです。勿論英語圏の人たちは圧倒的にこのキーボード配列でキリル語を使用しています。英語や日本語のローマ字入力に慣れたわたしたち日本人にもこの、入力方法が楽だと思われますが、いかがでしょうか。


ロシアで鳥インフルエンザ

2006-03-18 11:04:02 | ニュース

ロシアの農場、家畜の定期検査で鳥インフルエンザを予防

こんなタイトルの、ロイターの記事が目についた。ダチョウの雛の写真が面白い。ロシアでは今年に入りすでに50万羽以上の鳥が処分されているとのこと。関連ニュースで極東のサハリン州でも高病原性鳥インフルエンザを警戒するニュースが入っている。各地での被害が心配だ。


ロシアの食べ物

2006-03-15 19:07:33 | 日常生活

ママがスィロトカ・パド・シュバイСелёдка под шубой を作ったので、ご紹介しましょう。下の画像が材料。

画像中真上から時計回りに、ニシンの塩漬け(サリョーナヤ スィロトカ солёная селёдка、 ゆでたニンジン(ヴァリョナヤ モルコフ вареная морковь)、生タマネギ(スヴェジィ ルーク свежий лук)、赤ビート(クラスナーヤ スヴェクラ красная свекла)、ゆで卵(ヴァリョナエ ヤイツオ варён ое яйцо)、茹でたジャガイモ(ヴァリョヌィ カルトフェレ вареный картофель)以上ですが、赤ビートは缶詰のものを使用してます。 

状態がわかるように、ガラスの器に作ってもらいましたが、各食材が層をなしています。一番上が赤ビートです。上のビートの様子が毛皮に似ていることから、この料理の名前が付いているのかもしれませんが、直訳すると「毛皮のコートの下のニシン」

こんな感じで食べたりしますが、ちょっと見はケーキみたいですね。この料理ロシアではちょっとした集まりや、パーティーとかお祝いとかの席につきもの、本当によく食べます。

ついでにこれが、サリョーナヤ スィロトカ солёная селёдка ですが、飾り付けはママが遊んでます。普段はこんなにきれいに作りません!


ニシン

2006-03-14 17:34:16 | 日常生活

ひろさんのブログに啓発されて、食べ物の話題です。

ロシア人がよく食べる魚に、ニシンСелёдка (スィロトカ)がある。市場で生ニシンを買い二三日塩漬けしたものを食べる。もっとも、ロシアでもごく一部の地域を除き、生ニシンといえども鮮魚ではなく、あくまで解凍魚のことです。我が家でもスーパーで生ニシンを入手出来たときは、この塩漬けをこしらえる。時期には北海道産の鮮魚が、スーパーに並ぶこともあるが形が小さく値段も高い。たいていノールウエイ産の解凍ニシンを買う。

昨日ママと、某有名お高いスーパーに行った際、なぜかこの時はお安く一匹98円でゲットしたノールウエイ産ニシン。このぐらい形がよいと脂ののりも良く美味しい。ママはこのときとばかり、10匹買い占めていました。食べ方はごく簡単、塩漬けニシンを刺身状に切り、みじん切りのさらしタマネギとともにレモン汁をたらして食べる。場合によりサラダオイルをかけたりする。お酒のつまみにも合いますが、パンにはさんで食べたりもします。この塩漬けニシン、茹でたジャガイモとビートで作る、スィロトカ・ポド・シュバイСелёдка под шубой というロシアのサラダがありますが、これも良く食べます。


ザックス

2006-03-13 20:02:49 | ロシア

ロシアもしくはロシア人となんらかの関係がある方は、ザックスЗАГСオヴィールОВИРと言ったお役所の名前を、耳にしたことがおありでしょう。

最近このザックスЗАГС ( Записей Актов Гражданского Состояния ) について必要があり、あれこれ調べた。この役所、英語圏では Registration Office と翻訳表記してるみたいで、なにやら自動車の登録事務所みたいな気もするし、これをまた日本語訳にすると登記所で、これだと不動産の登記事務所みたい。直訳すると「公民資格の証明・登記所」になるかな。

実際何をする役所かというと、ロシア市民の「誕生、結婚、離婚、死亡」を記録、管理、証明する役所です。そう言えば「谷間に三つの鐘が鳴る」という古い歌がありましたね、あれはアメリカの歌でしたっけ?とにかく、ロシアの各市町村に必ずこの事務所がある。州 Област、地方 Край 、都市 Город、区 Район、とそれぞれの管轄を担っている。

何が問題かというと、この役所いったい何処の省に所属するのと言う疑問だった。ロシア市民に関してはロシア連邦法で規定されているのだが、連邦法を読み返してもその管掌事項を見つけることが出来ない。常識的に考えて、内務省か司法省であろうと推測できるのだが。ロシアのサイトを、公官庁を含めて総ざらいしたがこれが一筋縄でいきません、見つけることが出来ませんでした。在日ロシア大使館に電話して、二十分ぐらい話し合ってみた(館内、館外と色々電話して調べてくれた)が、結局彼らも確認出来ませんでした。ロシア本国に電話する時間帯ではなかったので、次善の策として在京のタス通信に電話して教えを請いました。記者が「ザックスは内務省に所属していることは間違いない、内務省内にその所属部署が無いと思う、大臣直接の管掌であろう」と言う。その典拠を尋ねたのだが、親切にも調べてくれるとのことで、現時点でははっきりしません。

その点、日本では法律で明快に規定されていますね。日本で言えば法務省法務局であろうか。昭和22年に施行された戸籍法の総則で「戸籍に関する事務は、市町村長がこれを管掌する」それは「法定受託事務」であり、「法務大臣は、市町村長が戸籍事務を処理するに当たりよるべき基準を定めることができる」と規定している。この総則で興味があるのは戸籍に関して地方自治体に事務をゆだねるが、指揮権限は所轄法務局にありますよと規定しているところ。法務局と言えば、法人や不動産の登記をするところと普段考えていたけど、至極当然と言えば当然、人権を守るところでもありますね。

ちなみに「ザックスそれザックス」と言うのが、ママの答え。飛躍した返答なので翻訳すると、ある省内にしかるべく部局ががあるのではなくザックス自体を誰かが指揮しているのだ、つまり大臣かもしれないし大統領かもしれないと言うことらしい、タスの記者と同意見だ。日本人には奇異に思えるかもしれないが、案外それが正解かもしれない。だがしかし、連邦には89の連邦構成主体があるのだから、それを統括部署もなく指揮するの?と再疑問。これもまた日本人的思考でありましょうか??


お知らせ!

2006-03-12 23:09:28 | ニュース

BBS始めました。

携帯対応で画像もアップ出来る掲示板なのですが、とりあえず試験的に運用してみたいと思います。皆さんのおいでを、お待ちしております。


ロシア人の暮らし その3

2006-03-10 13:07:00 | ロシア

ソーブルСОБР (Спеч Отряг Выстрого Реагирования)内務省組織犯罪総局の緊急対応特別支隊に勤務する、親戚(母の従兄弟、つまりわたしの叔父にあたる)の話の続きです。

州都であるロシアでも五本の指に入る大都市に駐留する部隊勤務が、彼の日常生活です。組織犯罪に対応するために、ソーブルはロシアの主要な都市に配置されています。組織犯罪に対する彼らの活動はメディアで、たびたび報道されていたのですが、日本では考えられないほど強烈なものでした。

跋扈する組織犯罪者(ロシアン・マフィア)を沈静化すべく、プーティン大統領の命で組織されたこの特殊部隊、ひとたび出動となれば抵抗する犯罪者たちの投降さえ許さず、全員射殺という過激な姿勢でした。百罰一戒、見せしめのために事件のむごたらしい状況が、よくメディアに報道されていました。エリッイン大統領の当時も類似の特殊部隊は編成されていたのですが、組織犯罪総局の上層部に腐ったリンゴが混じることしばしばで、機能が不完全燃焼という状態でした。

現在では、少なくともソーブルが駐留する都市での組織犯罪の表だった犯罪活動が、見られなくなっているのは事実です。叔父の部隊が駐留する都市は、わたしの母の出身地でもあり一族が住んでいますが、混乱していた状況から治安がかなり回復されました。日常生活の不安が、払拭されたと言って良いでしょう。しかしソーブルが駐留していない、あるいはその影響力が及ばない地方小都市での組織犯罪については、まだまだ問題がありそうです。

ロシアン・マフィアは地域でのソーブルとの摩擦をさけ、むしろその犯罪活動を合法的なビジネスへと転化させました。表面的に組織だった犯罪活動が消え失せ、ある種の秩序が確立されています。勿論このことは、地域から犯罪が無くなったことを意味しません。麻薬、売春、恐喝、強盗等犯罪は絶えません。だがしかし、市民のロシアン・マフィアに対するどうしようもない無力感が失せました。

ロシアではビジネスをする際に、そのビジネスの規模が大小に関わらず、必ずと言っても過言で無いほどロシアン・マフィが介入していました。ソーブルが駐留している都市では、ソーブルが組織犯罪者あるいはまた、非組織犯罪者からそれらのビジネスを保護します。だがしかし、それなりの見返りが必要です。と言うと、なにやら代わりの悪代官が赴任してきただけみたいなのですが、より合理的で穏健なもとに秩序だっていると言うことでしょうか。

笑い話があります。「うちの会社は怖いことは何も無ぞ、ソーブルに見かじめを出してるからな」と、マフィア

前々稿で、危険なソーブルに志願する理由は何かと疑問を投げかけたのですが、こうした役得もその一つ。実際隊員の裏収入が表のサラリーの二十倍から三十倍はありそうです。もちろんそれだけではありません、各種教育機関への進学も手厚く、組織での昇進も早い。そして驚く無かれ、年金の受給資格年齢が三十五才と優遇されている。もっとも、男性ロシア人の受給資格年齢が60才で、その平均寿命が59才代であるところを考えると、ソーブル隊員の平均寿命はもしかしたら34才代かも、と勘ぐりたくなる。ある意味では合理的なんだから、ロシアは!!??


ロシア人の暮らし その2

2006-03-06 23:10:03 | ロシア

前稿でソーブルについて書いた。親戚の話をしようと、書き進むにつれチェチェンの問題が気になりだした。

まず、虎の子の精鋭部隊を毎年投入し続けなければならないほどの、かの地での軍事情勢と、ロシア軍内部の問題。そしてそうまでロシアをして、チェチェンに固執させるその理由である。

チェチェン問題がこの稿のテーマではないので、また別の機会に詳細を記載するとして、親戚から得た情報をかいつまんで話すと、国防省正規軍だけでの治安維持は損害が大きく難しいために、中隊規模のソーブル部隊を全国から選抜して編成駐留させているとのこと。内務省軍の他の特殊部隊も正規軍と共同作戦をしている、とのことだった。実際かの地でのロシア軍の死傷者は、毎年相当規模に上り、徴兵制度を揺るがすほど問題化していることも事実である。

もう一方の理由については、地政学ゲオポリティカ ( Геопоитика ) の問題である、という極めて軍人らしい答えであった。なるほど地図を眺めてみると東はカスピ海、西は黒海に挟まれたいわば、隘路をコーカサス山脈が横断している。ロシアにとり、天然の城壁に守護されているわけだ。それと、南北からカスピ海沿いに延びている鉄路がチェチェン内で交差して西に向かう、鉄道の要所でもある。

ロシアにしてみれば、城壁(コーカサス山脈)から外側(グルジア、アゼルバイジャ、アルメニア)は手放しても内側の連邦からの離脱は、地政学的にとうてい許せないと言うことか。大国の論理であろうし、軍人の思考でもあろうしかつまた、人間の本質的な思考であろうかとも、思い至った。

参照:コーカサス地域図http://www.lib.utexas.edu/maps/commonwealth/caucasus_region_1994.jpg