前稿でソーブルについて書いた。親戚の話をしようと、書き進むにつれチェチェンの問題が気になりだした。
まず、虎の子の精鋭部隊を毎年投入し続けなければならないほどの、かの地での軍事情勢と、ロシア軍内部の問題。そしてそうまでロシアをして、チェチェンに固執させるその理由である。
チェチェン問題がこの稿のテーマではないので、また別の機会に詳細を記載するとして、親戚から得た情報をかいつまんで話すと、国防省正規軍だけでの治安維持は損害が大きく難しいために、中隊規模のソーブル部隊を全国から選抜して編成駐留させているとのこと。内務省軍の他の特殊部隊も正規軍と共同作戦をしている、とのことだった。実際かの地でのロシア軍の死傷者は、毎年相当規模に上り、徴兵制度を揺るがすほど問題化していることも事実である。
もう一方の理由については、地政学ゲオポリティカ ( Геопоитика ) の問題である、という極めて軍人らしい答えであった。なるほど地図を眺めてみると東はカスピ海、西は黒海に挟まれたいわば、隘路をコーカサス山脈が横断している。ロシアにとり、天然の城壁に守護されているわけだ。それと、南北からカスピ海沿いに延びている鉄路がチェチェン内で交差して西に向かう、鉄道の要所でもある。
ロシアにしてみれば、城壁(コーカサス山脈)から外側(グルジア、アゼルバイジャ、アルメニア)は手放しても内側の連邦からの離脱は、地政学的にとうてい許せないと言うことか。大国の論理であろうし、軍人の思考でもあろうしかつまた、人間の本質的な思考であろうかとも、思い至った。
参照:コーカサス地域図http://www.lib.utexas.edu/maps/commonwealth/caucasus_region_1994.jpg