たまたま前稿「ロシア人は頑固者が多い、その2」を書いている際に、知人であるロシア人の日本文学者から電話がきた。
ロシア人論の話題の中、知人の文学者は、彼の知り合いの袴田茂樹氏の著作にロシア人の優れた分析が見られるとの話に及んだ。わたしは、予てから氏の旧政権時代の著作に関して、ロシア人的な思考が色濃く反映している点に興味を抱いていたのだが、その点に関して逆に質問してみた。
「袴田氏の著作はあなた達ロシア人にとり、分かり易いのではないですか。なぜならば、著述を裏打ちしている思考がどうもロシア人的だと感じられるのだが、つまり日本人の学者的ではないのだけれど」と、わたし。
「ほほう、確かに彼の著作は少なくともわたしには分かり易い。そういう観点から読んだことはありませんでした。それでは彼と反対の立場に立つ、日本人のロシア学の研究者がいるのですか」と、知人のロシア人。
「ロシア学で反対の立場とは言えないにしても、袴田氏の著作に反論している学者がいますよ、○○○先生です。」と、わたし。
氏のインタービュウーを拝見していても、その断定的で直裁的な言及は深くかつ幅広い知識の裏付けと、感性に富んだ直感力の両方兼ね備えた学者であることを思わせる。その意味では妹である、イリーナ・ハカマダの方がロシア人には珍しいと言って差し支えないほど、切れのあるロジックを展開するタイプの政治家だ。
お断りしておきますが、わたしはここで氏を誹謗中傷する、何らの意図もございませんのでご了承下さい。それどころか、こと崩壊前の著作に関して、各所の指摘の中に未だ秀逸なものがあると、敬愛しております。お気に障りましたらごめんなさい、袴田先生。
参考までに「文化のリアリティ」」袴田茂樹著-筑摩書房