3月11日の日経新聞朝刊に「ロシア、製造業も国家主導」と言う記事があった。
プーチン政権主導による、国営ガスプロムによるロスネフの吸収合併および、その後のユーコス子会社とシブネフチの買収というエネルギー産業の再編を経て、再び政権主導のもと主要産業の管理を強化しようとしている。ソ連崩壊による混乱の中で民営化され、弱体化していた主要産業に対する国の統制を取り戻し、産業振興を図るというプーチン政権の戦略だ。
戦略産業として、宇宙開発、原子力、軍事、航空機、自動車産業等が含まれる。戦略産業中39の産業に対する外資参入を制限(自動車は除く)したのだが、特筆すべきはプーチン大統領が直接、外国企業の投資を承認する制度を設けるとすることの言及だ。
この国のプーチン大統領に対する権力の集中が進んでいる。プーチン大統領は2000年5月、大統領令を発令し連邦構成主体を7つの連邦管区に分けて、連邦管区大統領全権代表職を設け、連邦管区大統領全権代表に構成主体政府の監督と職務の調整を委任した。それぞれの管区の全権代表は、大統領により任命される。さらに2004年12月12日、プーチン大統領は知事など地方の首長を、事実上大統領の任命制にするという法律に署名し、屋上屋を重ねる形で行政の中央集権化を実行している。元来この国は地方政治が藩閥政治に近い形で運営されてきた長い歴史がある。広大な領土の政治と経済の一人の人間による直接統治は、皇帝統治の時代 Цаствование でもソ連共産政権時代でもなしえなかったことです。
勿論わたしはここで、権力の集中=独裁=非民主的=悪いことと、言うような平たい見地をしているわけではありません。むしろ近代国家の歴史の中でも類を見ないほど、政治と経済の権力集中を自己に向けつつあるプーチン大統領の意図が、この国に存在する様々な弊風、弊害、弊習の打破であることが痛いほど伝わってきます。我が国のように全てが公官庁という目に見えない主体に掌握、主導されるシステムと違い、個人という良くも悪くも明確な権力の主体がそこに存在すると言うことです。好調な経済を背景に社会改革を進めようとするプーチン大統領ですが、今世紀でももっとも賢明な政治家として歴史に名を残すか否か、その試金石の一つは大統領の再任問題であろうか。統治が成功して、法律を改正再々選を考えるに至るならば、その道は独裁者の道に続くのかもしれない。権力は金をもたらし、金は腐敗をもたらす。
ともあれ、恵まれた経済環境とプーチン大統領という指導者を抱いたロシアの今後10年に目が離せない。ロシア経済を分析してみると、大化けしそうなロシア株がごろごろあるのも事実だ。今後それらにも、おりにつれ触れてみたいと考えています。