新刊の森

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重田園江の多彩な考察が楽しそうな「隔たりと政治: 統治と連帯の思想」

2018年11月24日 | 新刊書
隔たりと政治: 統治と連帯の思想
著者 : 重田園江


フランスの思想家のミシェル・フーコーを初めとして、
近現代の政治思想の研究者である重田園江さんが
連帯と統治について、さまざまな観点から考察した文章を集めた一冊。
連帯の哲学についての本格的な考察から、ナウシカとテロリズムについて考えた文章まで
多彩な探求を読むことができます。
とくに第三部の「ナウシカとニヒリズム」が楽しそう。


単行本(ソフトカバー): 384ページ
出版社: 青土社 (2018/11/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4791771176
ISBN-13: 978-4791771172

作品紹介・あらすじ
人間は孤独だが、ひとりきりでは生きていけない。
自分とは境遇の違う人と共に生きるにはどうすればいいのか。遠くにいる人とつながることなどできるのだろうか。すぐそこにある隔たりから、政治思想の問いは出発する――。規律社会の統治のテクノロジーを鋭く読み解きながら、紛争や暴力を治め、分断に抗う連帯の可能性を構想する試み

【目次】

はじめに

Ⅰ 隔たりと統治

第Ⅰ部について

第一章 監視と処罰の変貌
はじめに/監視と処罰の断絶という様相/ゼロ・トレランスと割れ窓理論/割れ窓理論とコミュニティパトロール/環境犯罪学と犯罪の「機会性」/厳罰化と被害者重視の犯罪政策/おわりに

第二章 リスクを細分化する社会
はじめに/社会的リスク/社会に固有のリアリティ/多様化した社会における連帯/社会保険制度の理念/ゴルドンと多様性の統計学/リスクを細分化する社会/リベラルな保険制度における「個人」

第三章 市場化する統治と市場に抗する統治
はじめに/現在の位置/自由主義への不信/フーコーの統治性論/ポランニーの市場社会論/おわりに

第四章 大学改革における統治性――官僚制と市場のレトリックをめぐって
はじめに/大学改革における「経済の論理」/これは大学の「ネオリベ」改革なのか/「市場の論理」とはなにか/大学間競争/規律と専制/責任の不在――ポスドクの就職難と法科大学院/失敗した改革――天下り不祥事とネイチャーによる国際評価/おわりに

第五章 政治と行政について――「官邸」と「官僚」
はじめに/官僚の不祥事/「政治主導」の弊害/「政治」と「行政」/法学における「政治」の場/執政権力と官僚



Ⅱ 隔たりと連帯

第Ⅱ部について

第六章 「隔たり」について

第七章 なぜ社会保険に入らなくてはいけないの?
誰でも損はしたくない/社会保険は損得の問題なの?/働く場での相互扶助の起源――コンフレリィ/労災の責任は誰に?/個人の選択の自由とは?

第八章 協同組合というプロジェクト
協同組合の歴史についての思い込み/新自由主義的な語りの起源/新自由主義における個人と消費/一九世紀前半の産業世界の無秩序/協同組合という組織化への試み/会社か協同組合か

第九章 現代社会における排除と分断
戦後日本における思想史研究の役割分担/文化へのシフトと政治思想/八〇年代以降の社会批判の諸言説/新自由主義の統治――排除対包摂/現在――分断対連帯/連帯のイメージ――「異なるもの」と「同士」/政治思想の未来

第一〇章 連帯の哲学
切り裂かれた無知のヴェール?/社会連帯思想/ロールズの『正義論』/社会的な視点と連帯



Ⅲ 隔たりと政治

第Ⅲ部について

第一一章 ナウシカとニヒリズム

第一二章 暴力・テロル・情念――『革命について』に見る近代
情念の近代/「同情‐憐れみ」の政治/絶対の善とテロルの嵐/映画『タクシードライバー』/現代思想が向かうべき問い

第一三章 なぜ政治思想を研究するのか
なぜにいまさら読んでいるの?/考える葦って誰のこと?/イエスとロベスピエールのあいだ?/政治思想を研究するとは?

第一四章 天空の城、リヴァイアサン

第一五章 『リヴァイアサン』の想像力



ブックガイド
おわりに
索引

重田園江さんには次のような著書や訳書があります。

■理性の両義性
齋藤純一編
岩波書店 2014.1 岩波講座政治哲学, 5
■社会契約論 : ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ
重田園江著
筑摩書房 2013.11 ちくま新書, 1039
■災害に向きあう
直江清隆, 越智貢編
岩波書店 2012.7 高校倫理からの哲学, 別巻
■ミシェル・フーコー : 近代を裏から読む
重田園江著
筑摩書房 2011.9 ちくま新書, 922
■連続討論「国家」は、いま : 福祉・市場・教育・暴力をめぐって
杉田敦編 ; 石川健治 [ほか述]
岩波書店 2011.4
■フランス社会連帯主義
重田園江著
勁草書房 2010.10 連帯の哲学 / 重田園江著, 1
■フーコーの後で : 統治性・セキュリティ・闘争
芹沢一也, 高桑和巳編 ; 重田園江 [ほか著]
慶應義塾大学出版会 2007.9
■フーコーの穴 : 統計学と統治の現在
重田園江著
木鐸社 2003.9 明治大学社会科学研究所叢書
■親密圏のポリティクス
齋藤純一編
ナカニシヤ出版 2003.8
■偶然を飼いならす : 統計学と第二次科学革命
イアン・ハッキング著 ; 石原英樹, 重田園江訳
木鐸社 1999.5
■共に生きる
川本隆史 [ほか] 執筆
岩波書店 1998.7 岩波新・哲学講義 / 野家啓一 [ほか] 編集, 6
■連帯の哲学
重田園江著
勁草書房


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