Lespedeza Museum of Photography レスペデーザ写真美術館

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二次創作:ガールズ&パンツァー「ポンコツなんて言わせない」Part.1

2012年11月25日 22時10分00秒 | 二次創作小説

ガールズ&パンツァー二次創作第2弾。今回の主役は生徒会チームの河嶋桃さんです。

 


 

夕暮れの大洗女子学園。

戦車道の自主練の終わった格納庫にあんこうチームの装填手秋山優花里の姿があった。

「参ったなぁIV号の中に携帯忘れるなんて」

一人ぼやく優花里だったがふと自分以外の人の気配に気付く。

「あれは…?」

優花里の視線の先に愛おしそうに38(t)戦車をなでる生徒会広報担当の河嶋桃の姿があった。

「河嶋殿」

「ひっ!?」

突然声を掛けられ驚く桃。そんな彼女に優花里も慌てた。

「す、すいません!」

「あ、あなた確かあんこうチームの秋山さん?」

「はい。携帯を戦車の中に忘れてしまってとりに戻ったんです」

「そうか、もう遅いから早く帰宅するように」

「了解であります!けど、こんな遅くに河嶋殿は何故ここに?」

「あ、ああ」

優花里の問いにぎこちなく答えると桃は再び38(t)戦車をなではじめた。

「こいつの事が気になってな」

「河嶋殿も自分の乗る戦車に愛着あるんですね」

「なんだかんだでな。だが…」

「?」

「私はこいつに乗る資格があるんだろうか?」

いつになく寂しそうな声で語る桃に優花里も驚きを隠せなかった。

「秋山さん、私の射撃の成績を憶えてる?」

「えーと確か…」

そこまで言いかけて優花里はハッとなって口をつぐんだ。

桃はカメさんチームの38(t)の実質的な車長兼装填手兼砲手なのだが射撃の腕はからっきしダメで過去の練習試合や戦車道全国大会の公式1回戦でもまともに当てた事がなかった。

「今更黙る事でもないだろ?射撃の腕の悪さは自分でも判ってる」

「は、はぁ」

自嘲気味に話す桃に申し訳なく相づちを返す優花里。

「だがな、大洗女子学園の為に戦車道をはじめたのにこの体たらくでは他の面々に流石に頭があがらん。こいつも私みたいなダメな砲手がついている為に活躍出来ないのでは本望ではなかろう」

38(t)戦車をなでながらそこまで言って桃が言葉を詰まらせる。

「…私は、生徒会の一人としてもっと皆の役に立ちたい。こいつを立派に働かせたいんだ」

そう言う桃の頬につたう涙を優花里は見逃さなかった。

「大丈夫ですか河嶋殿」

「!す、すまない全国大会2回戦を前に感傷的になってしまったな」

優花里に声を掛けられ我に返る桃。そんな桃の姿をみて優花里はある決意をした。

「あの、河嶋殿」

「なんだ?」

「よろしければわたしがお力になります」

「!」

思いがけない優花里からの提案。しかし3年生である自分が後輩に助けて貰っていいのか?そんな迷いが桃にはあった。

「わ、私は仮にも上級生だぞ。その私が後輩に助けを貰うなど…」

「助け合いの精神も立派な戦車道精神です。ここまで話を聞いてほっておく訳にはいかないじゃないですか」

「…あ、ありがとう!」

優花里の言葉に思わずうれし涙を流す桃だった。


「やはり、照準器に問題がありますね」

数日後の休日、大洗女子学園の演習場で奮闘する優花里と桃の姿があった。二人で桃の射撃の問題点を洗い出していたのだが、砲撃が左にずれるクセがあることが判ってきたのだ。

「ということは、整備班の整備不良?」

「いえ、そうではありません」

そう言って優花里が説明を始める。

「河嶋殿、照準をつける際にどちらの目で合わせてますか?」

「右だが?」

「私が照準を合わせた状態で河嶋殿が再度照準を合わせた際に動かしてるでしょ?恐らく片メガネと照準器の相性があっていないんです」

「なんということだ、そんな簡単なことに今まで気付いていなかったのか」

優花里の推測を聞かされがっくりと肩を落とす桃。

「推測が正しいかどうかは試してみれば判ります、やってみましょう」

38(t)戦車に乗り込む優花里と桃。優花里が装填手で桃が砲手役。

「河嶋殿左目で照準を合わせてみてください」

「判った」

優花里に促されちょっとしんどい姿勢だが左目で照準を合わせる桃。

「それじゃいきますよ、それ!」

38(t)の37mm弾を主砲に装填する優花里。

「装填完了!」

「発射!」

かけ声と共に37mm砲が火を噴く。そして放たれた砲弾は数百メートル先の標的に見事命中。

「や、やった。やったぞ!」

歓喜のあまり涙声になる桃。

「やりましたね、河嶋殿!」

優花里もアドバイスが功を奏した事に大喜び。

そんな時優花里の携帯が鳴った。

「はい、秋山ですが。あ、ピザパットンさん?はい学園裏の演習場にいるので来て貰えますか?はい、よろしくお願いします」

「ピザを頼んだのか?」

「はい、そろそろお昼時ですし、お腹も空く頃を見計らって頼んでおきました」

「そうか、そんな時間か。そろそろ一休みするか」

「はい!」


「どうです、河嶋殿。ピザパットンのピザなかなかいけるでしょ?」

「ああ、上手いな」

日曜の昼下がり、38(t)戦車の上で女子高生が宅配ピザをほおばっている。二人とも非常に晴々とした気持ちでお昼を楽しんでいた。

「だが、毎度不自然な姿勢で照準を合わせないといけないのはなんとかしないならんな」

「その点はご安心下さい」

「?」

「照準器の覗き口は左右の変更が出来るのでそうすれば普段通りに照準を合わせられます」

「そうか、それを聞いて安心した」

そう言って桃は持っていたピザの欠片を口に放り込む。そして次のピザを取ろうとしてふと手を止めた。

「河嶋殿?」

「んふふ」

突然の桃の含み笑いにびびる優花里。

「すまない、次のアンツィオ戦の事を思い出してな。2回戦の前にちょっとした面白い催しをやってみたくなった」

「え?」

「なに、他の面々を驚かせてやろうと思ってな」

そう言いながら楽しげにピザをほおばる桃だった。

 


 

二次創作:ガールズ&パンツァー「ポンコツなんて言わせない」Part.2

に続きます。

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