象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

貧困と直感と信仰は、陰謀論を呼び覚ます

2024年05月09日 04時25分52秒 | 独り言&愚痴

 「鵜頭川村事件」でも書いたが、特にムラ社会の住人は上様の権力に加え、しきたりや迷信に弱い。更に、それらが祟りに結びつくと極端に怯えてしまう。
 そういう私も田舎者だから、こうした過疎社会の陰謀に怯える気持ちは痛いほど理解できる。一方、某らの陰謀説を期待するのもまた、大衆の愚かな集団心理でもある。
 だからとて、陳腐で幼稚な陰謀論を拡散する理由にはならない。

 新型コロナ渦が世界中に拡散した時も、”悪魔の祟りじゃ”とばかりに様々な陰謀説が拡散した。
 私はそんな幼稚で貧相なデマに振り回されるフォロワーらに持論を説いたが、露骨な拒絶反応を示すだけで、まるで”ヘビに関数論を説く”様なものであった(笑)。
 勿論、陰謀論を拡散するインフルエンサーらも問題だが、そうした稚弱な陰謀論に振り回されるバカ正直な住人はもっと深刻である。故に我ら大衆は、”田舎もんはバカだから陰謀説に振り回される”と結論をつけたがる。
 悲しいかな、大半は当ってると思うが、僅かな例外も存在するのではなかろうか。

 そこで今日は、”頭がいい人や知能が高い人でも陰謀説にハマるのか?”を検証する。
 かつて、オウム真理教事件の時に、高学歴の若者が集まってた事が話題に上り、”社会に不満を持ったインテリこそが陰謀論にハマりやすい”との論説も少なからず議題に上がった。
 だが、これを科学的に証明できるのだろうか?以下、「頭の良い人は陰謀論にハマるのか・・・」より大まかに纏めます。


心理学から眺める陰謀論

 ”新型コロナは利権団体によるデマ”とか”ワクチンにはICチップが入っている”など、新型コロナの感染拡大を機にSNSなどで大きく広まった陰謀論。
 そんな陰謀論にハマりやすい人の特徴をあぶりだした、日本人社会心理学者の論文が学術誌「アプライド・コグニティブ・サイコロジー」(応用認知心理学)に掲載された。
 そこで明らかになった”陰謀論にハマりやすい”人の特徴とは・・・
 前述したデマは、明らかに荒唐無稽で無理筋な話だが、大きく拡散した背景には、”頭が良すぎて陰謀論にハマる”のか”社会に不満があるとハマる”のかも考慮に入れる必要がある。
 そこで、これらを心理学の視点で検証する。 
 調査は、ネットで参加を募った1400人を対象に、有効だった937人の回答を基に分析。
 質問項目は100問で、陰謀にまつわる質問の他、”バットとボールは合わせて1100円で、バットはボールより1000円高い。ではボールは幾らでしょう”といった熟慮(=よく考える)性を試される質問に、社会への不満を聞くものや収入や学歴まで多岐にわたる。
 質問を作るに、2つの仮説を出発点にした。1つは”よく考える人は陰謀論を信じづらい”という事と、もう1つは”社会的な不安や不満を抱えてる人は陰謀論を信じやすい”という事。それに加え、裏テーマとして(冒頭で述べた)”社会に不満を持つインテリは陰謀論にハマりやすい”を検証した。

 結果から言えば、”陰謀論を信じやすい人たちは熟慮性が低い”傾向にあり、直感的に物事を判断する人ほど(特にコロナに関する)陰謀を信じやすい傾向にある事が分かった。これは科学的推論を問う質問や、合理性を問う質問についても、同様の傾向が見られる。 
 逆を返せば、”物事を論理的に考えられる人ほど陰謀論にハマりにくい”事が証明された。
 また、社会不安や不満が高い人ほど陰謀論にハマりやすいという結果も出た。特に顕著に出たのは、アノミー(=世界は悪くなってるという信念)が強い人ほど、陰謀論に傾倒しやすい傾向にある。
 だが、この2つの傾向の組合せによる増幅効果を見い出す事は出来なく、(裏テーマの)”社会不満を持ったインテリこそが陰謀論にハマりやすい”事は表れなかったとされる。

 因みに、バットとボールの問題の答えですが、直感的には100円かな?と思いがちだ。が、仮にボールを100円にすると差額が900円になるので、答えはバットが1050円でボールは50円となる。
 悲しいかな私は、こんな幼稚なトリックに引っ掛かってしまったのだ。
 つまり、熟慮性云々というより(数学と同様に)”直感で物事を捉えるとバカを見る”の典型でもあろう。


結論として

 従来は、陰謀論にハマりやすい人を語る時、イメージで語られる事が多かった。社会に不満を持ってる人とか、生活が苦しい人とか・・・だが、今回の調査で顕著になったのが”熟慮性の低い人は陰謀論にハマりやすい”との結果である。
 社会的な不安や不満を持つ人も熟慮性が低い人も、どちらも陰謀論を信じやすい傾向はあった。が、結果を見ると、熟慮性の方がより一貫して影響する事も分かる。
 一方で、社会不安を引き起こす低所得や低階層といった問題を解決するには、社会全体が変わらなくてはいけない。しかし、熟慮性を磨く事は誰にでもできる。
 そういう私はもっと反省してます(悲)。

 つまり、情報を自分の中でかみ砕いて理解する事で、新聞やTVやネットなど情報が溢れる中で、情報に触れるだけでなく、なぜその様な情報が発信されるのか?誰が発信しているのか?どのくらい正しいのか?というのを、自分の頭で考える事が”熟慮”する事に繋がる。
 一方で、心理学は人の心を読む学問でもある。心理学のトリックの1つに、相手の心を読んでる様に見せる手法をメンタリズムとかメンタルマジックと呼ぶ。
 例えば、ランダムに選んだ学生に4つの積み木から1つ選んでもらう。自分は悩んでるふりをして、学生が選んだものを当てる―という簡単なマジックだが、“タネ”は簡単で、教室にいる協力者が選んだものをサインで教えるというもの。
 結果、95%以上の学生は”目線や表情から心を読まれた”と予想した。一方で、タネを明かした後の調査では”心理学=心が読める”という信念は大幅に減少し、更に、超常現象や陰謀論についての信念も低下した。また、トリックを楽しんだという気持ちからか、マジックへの信頼は下がらなかったという。

 リテラシー(読み書き能力)を磨く事は当り前の様に思えるが、ある出来事について批判的又は懐疑的に考える事は重要で、情報のとらえ方には常に慎重を期す必要がある。
 以上、読売新聞Onlineからでした。


されど陰謀論

 新型コロナ渦に関しては、直感で考えても陰謀論に陥る事はなかったが、先程のバットとボールの問題は答えを急ぐあまり、「モンティのパラドクス」同様に、簡単なトリックにまんまと引っ掛かってしまった。
 勿論、陰謀論にハマる人が”熟慮性が低い”と決めつける事には疑問も残るが、追い詰められた人間は何かに縋る必要がある。同じ様に、結果を求められた人間はすぐにでも答えを出そうと焦ってしまう。
 つまり、熟慮性が高い人でも直感で物事を判断する傾向に陥るのではないか?言い換えれば、熟慮性と直感は独立して考える必要がある。

 奥田英朗さんが言う様に、”信仰とは挫けそうな気持ちを奮い立たせる個人の抗い”であり、決して弱さではない。だが、その信仰が単に陰謀や策略により踏みにじられたら?
 仮にマジックやトリックなら、一時的なもので笑って済ませるが、長年信じてきた事が簡単に裏切られたとなると、”熟慮性が低い”とか”論理的思考に欠ける”とかの問題は何処かに吹っ飛んでしまう。
 つまり、陰謀論を信じる事は信仰の1つであり、自分を奮い立たせ、自身を持する重要な支えでもある筈だ。

 今回は心理学から眺めた、陰謀論にハマりやすい人を分析した結果だが、”熟慮性が低い人”との結論は、単純すぎると思えなくもない。
 アンケート結果には現れなくとも、”社会に不満を持つインテリ”がオウム真理教にハマったのは紛れもない事実であり、”信仰心の強いインテリ”が陰謀論にハマらないとも限らない。
 全てはアンケート結果の統計のとり方にも依存するが、集計データを主観を持って眺めただけでは、正確な答えは見い出せる筈もない。
 勿論、”バカだから陰謀論に陥る”と決めつけたがる専門家の上から視線の心理も理解できなくもないが、世の中も陰謀論もそんなに単純ではない筈だ。
 一方で、熟考され尽くした陰謀論だからこそが世界中に拡散すると仮定すれば、熟慮性と陰謀論の関係は曖昧になる。


最後に

 人は直感や見た目で物事を判断する様に出来ている。が故にバカを見るのだが、そういう事が判ってても、その習性は治らない。「屈辱の数学史」でも、それは証明されてはいる。
 統計は慎重に判断しないと解釈を間違うし、アンケート調査では”平均的な人”は存在しない。つまり、人間とは平均を知るのが無意味な程に個人差の大きい存在である。
 故に、1400人を対象に調査した所で、陰謀論と”熟慮性”の因果関係を見出すには無理があるとも言える。

 陰謀論にハマるのは人間の心理か?弱さか?情けか?それとも信仰か?運命への抗いか?思考の浅薄さか?いや単なる偶然か?
 結局、様々な角度から統計学や数学モデルをも駆使して検証しない限り、陰謀論の本質を抜き出す事は不可能にも思える。少なくとも、心理学だけでは曖昧すぎる。
 そういう私も、既に陰謀論の中に潜むトリックに引っ掛かってるのかもしれない。



6 コメント

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貧乏と辛抱と野望は三位一体三位一体 (阿保で野暮で無謀な肱雲)
2024-05-09 08:28:59
真珠湾奇襲攻撃は米帝ルーズベルトの陰謀に引っ掛かったのでしょうか
2.26皇道派は東条ら統制派グループの陰謀にハメられたのでしょうか
ゼレンスキーの野望とプーチンの野望は米帝バイデン民主党の策謀に乗せられているのでしょうか
ユダヤロスチャイルド家の野望とキュリー夫人やオッペンハイマーのソレとは
何処がドウ違うのでしょうか
そのユダヤロスチャイルドの資金援助でマルクス・レーニン共産主義革命がなされ
且つ又そのロスチャイルドに連なるユダヤ系金融資本が
100年以上にも渡り造り上げたとする資本主義vs共産主義という
20世紀の対立構造も陰謀なのでしょうかネ~
鵜頭川ムラ事件が他人事ではないと、自分の住む四国愛媛の肱川流域村落社会に置き換え
原子力ムラにぶら下がる地域実力者達の蜷局を巻く利権絡み陰謀小説を
書けないもんかノ~なんて考えるド暇な🦅
伊方原発反対勢力の口封じ殺人事件に巻き込まれるなんていうサスペンスドラマとか
アホな🦅では無理なので転象先生に書いて貰いたいぞナモシ~「柳河村殺人事件」
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人間の認識能力 (平成エンタメ研究所)
2024-05-09 09:04:53
人間の認識能力というのは頼りないものなんですよね。
自分の見たいもの、信じたいことしか頭に入らない。
だから争いことや戦争が絶えないんですよね。

僕も大谷選手の件では間違えましたが、松本人志氏の件で『告発したA子さん、B子さんは文春のでっちあげで存在しない』という言説が出て、結構な人が支持した時は、この国の知性の劣化は凄まじいと思いました。
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過疎化した村落の行く果て (UNICORN)
2024-05-09 18:51:23
こういう怖さを
平面的な2次元の怖さっていうのでしょう。
リアルではなくても、ひたすら怖い。
日本の地方の田舎の怖さって
こういうタイプが多いのかも知れない。
単一民族同士で、殆ど同じ血縁同士の対立だから、余計に厄介な争いごとが起きる。
こうした小競り合いで反乱分子が出ないように、外界を遮断し、どんどん閉鎖的な村落になっていく。
昔から伝わる祭りやしきたりやお祓いなんか、村落を守るどころか、過疎化を加速させるだけで、自らの首を絞める結果となる。
これこそが過疎という名の祟りといえようか。 
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肱雲さん (象が転んだ)
2024-05-10 04:49:50
いいとこついてきますね。
策略と陰謀の違いもあるんですが、前者は作戦に近く、後者は騙しに近い。
真珠湾と2.26は、陸軍と青年将校らの暴走によるものが大きいと思います。
今から思えば、海軍と陸軍で内紛を起こしてくれた方が太平洋戦争はなかったかもで、そうでなくとも避けられたケースは幾らかはあった筈ですが・・・
ロシアウクライナ戦争もバイデンの策略上の失敗と、プーチンの策略上の暴走の様なものでしょうか。

”原子力ムラを取り巻くに利権絡みの小説”ですが、巨悪に群がる利権団体と高齢化を排除しようと策略する若者らのエゲツない闘争を描いたら面白くなりそうですね。
因みに、柳川市は昔は柳川村と言ってたような・・・
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エンタメさん (象が転んだ)
2024-05-10 04:53:05
認識と認知の違いもあるんですが
前者は物事の本質を見極める事で、後者は白か黒かを明確に判断する事とあります。
熟考という点では認知の方がずっと浅いんですが、我ら大衆は物事を見た目や印象で判断する癖があるす。
つまり、人は多くの場合、認知で動くと言えるでしょうね。

大谷の件も、殆どの日本人は認知で判断しました。でも認識という点で言えば、大谷選手が数カ月に1度でも口座確認する癖をつけとけば、ここまで大事にならずに済んだかもですが
私は未だに、大谷の代理人ら(水原容疑者も含め)周囲が裏組織とグルになってたのでは?と勘ぐる所もあります。
因みに松本の件ですが、私の認識が甘かったみたいで、実際にかなりの悪事を働いてたみたいですね。
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UNICORNさん (象が転んだ)
2024-05-10 04:54:40
過疎という名の祟り
つまり、そういう事ですよね。
薄っぺらな恐怖と言えばそれまでですが
とにかく怖い。
日本の地方の近未来を具現してるようで、本当に怖かったです。
勿論、矢萩一族の安っぽい演技もハナにつきましたが、安っぽい分奇妙なまでに怖かった。

産廃企業や第三セクターなどを含めたリゾート計画だけでなく、原子力ムラもそうですが、こういう事をする度に村落は益々孤立化し、死滅する。
結果、”神様の祟りじゃ〜”となります。
結局は、貧しいなら貧しいなりに存続するというのが、過疎化した村落の理想郷だと思うんですが・・・
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