象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

”腐ってもロシア”の悲しい未来予想図〜ロシアの分裂と最悪のシナリオ

2023年08月07日 05時06分11秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 今回のロシア=ウクライナ戦争でプーチン政権が敗北すれば、”ロシアは解体され、41の新しい国家に分裂する”と、ロシアの元下院議員で、ウクライナ側に外国人義勇兵として参加する「自由ロシア軍」幹部のイリヤ・ポノマリョフ氏(47)が来日し、夕刊フジの取材で語った。
 更に、”プーチンは派閥の衝突を起こす事で、自分の政権を保ってきた。あらゆる派閥は互いに争い、プーチンはその上に立って裁く立場だ。ただ、プーチンを守りたがるエリート層はいなくなりつつある”と分析する。
 一方で、「ロシア後の自由な民族」フォーラムでは、北方領土問題にも言及し、”占領された北方領土問題の即時解決を求める”との文言も加えられた(夕刊フジ)。

 あくまで、ロシアが勝手に自滅し、今以上にウクライナ軍が辛抱強く優位に戦いを進め、無事に勝利したらの話だが、事はそう単純なのだろうか?
 ロシア分裂後のシナリオだが、41の共和国や民主国家に(仲良くだが)分裂したとしても、プーチンの様な独裁者が現れないとも限らない。つまり、敗戦後の経済やインフラ処理や(ブタペスト覚書の様な)不平等な核配備問題をめぐり、41の国が争う事も大いに考えられる。
 つまり、41の国に分裂した場合、これらの国々を支え、統制できる経済力を持つ大国は(台湾有事を控え、経済的に困窮しつつあるアメリカを除き)中国しかいない(多分)。故に、多くの分裂した国々は目先の資金に盲目になり、中国の軍門に下るのだろうか。


核分散という最悪のシナリオ

 一部のコメントにもある様に、ロシアがボコボコに瓦解すれば、権力争いや民族紛争、それにテロや小競り合いがロシア内外で頻発する。更に、(戦争で多くの犠牲を払った)ウクライナが第二のロシアにならないとは言い切れないし、多くの戦争難民や避難民が日本に押し寄せる事も考えられる。
 更に、経済制裁で困窮するロシア経済を支え続けてきた中国が大人しく静観する筈もないし、かつての経済力と(プーチンという)共通の敵を失ったヨーロッパは足並みが乱れ、掣肘合戦を繰り広げないとも限らない。

 一方でそれ以上に最悪なシナリオが、”核兵器の拡散”と(ワグネルの様な)軍閥の跋扈である。今回はプーチンが上手く抑え込んだから良かったものの、核や軍閥がロシア中に拡散したらと思うとゾッとする。
 プーチンが敗北し、ロシアが分裂して、複数の自治共和国が核を巡り争い始めたら、西側はどう対応するのか。それらの国々は親米欧ではなく、親中国になる可能性がある。もしそうなれば、西側は今以上に、こうした混乱の事態をコントロールできなくなる。
 言い換えれば、ロシア分裂のシナリオは中国が望むシナリオかもしれない。
 以下、「プーチン体制が”崩壊”した後・・・専門家が出した”一つのシナリオ”」を参考にまとめます。

 一方で、ある専門家によれば、”ロシアの分裂は殆どあり得ない”という。というのも、西側がロシア崩壊を仄めかす程に、ロシアの民族主義者らにはプーチンの言説がアピールするからだ。
 プーチンの独裁体制が崩壊するのはいいとして、その後のロシアが混沌としたミニ独裁国家の集合体になったら、欧州と世界の平和と安定にとって、結局は(イスラミックステーツの様に)危険な地域に舞い戻ってしまう。
 ただ、米シンクタンクは、今回の戦争では”ロシアもウクライナも完全勝利はありえない”との報告書を発表した。ロシアはウクライナの政権を打倒し、属国にするのに失敗した。一方、ウクライナもロシア政権を打倒するには、あまりに力不足であるからだ。
 更に報告書では、”クリミア半島などの奪回を棚上げしてでも、停戦協議を目指すべきだ”と提言する。

 だが、もしロシアの政権が内側から崩壊するのであれば、ウクライナが直接手を下さなくても、西側の封じ込め政策により、ロシアが内部崩壊する可能性がある。故に、戦争を継続するロジックは再び蘇る。但し、その為には相手が自ら倒れるまで、ウクライナはひたすら消耗戦を戦う必要に晒される。
 故に、ロシアの内部崩壊を想定した場合でも、問題は巡り巡って”ウクライナの政権と国民が、終りが見えない消耗戦に耐えられるかどうか”に帰着する。
 事実、ウクライナの南部の反転攻勢もロシア軍の地雷原と要塞化した防衛線に封じこまれ、多くの犠牲を出し、前進を拒まれている。

 太平洋評議会が今年1月、世界の専門家167人を対象に実施したアンケート調査では、”今後10年以内に崩壊する国家”のトップはロシア(21%)で、第2位のアフガニスタン(10%)よりも高かった。
 かつて、冷戦期アメリカの外交官ジョージ・ケナンが1946年に有名な”長い電報”で提唱した封じ込め政策は、半世紀後の1991年にソ連崩壊となって結実した。崩壊を導いたのはソ連自身の内部分裂だったが、封じ込め政策の有効性は歴史的にも実証済みである。
 今回の封じ込めもソ連と同じ様に、ロシアの内部分裂を誘うのだろうか?
 それは米欧協力の他に、ロシア支援に動いている中国封じ込め政策の有効性にもかかっている。更にはグローバルサウスと呼ばれる途上国や新興国への対処もある。
 つまり、(封じ込め)政策の方程式が半世紀前よりも遥かに複雑になっているのは明白である。
 以上、現代ビジネスからでした。


最後に〜負けても腐ってもロシア

 現在のロシアは21の共和国と195民族から構成される連邦国家とされる。但し、クリミア、ドネツク、ルガンスクとプーチンが強引にロシアに帰属化した州を除く。
 モスクワから東に800㎞ほどの場所に位置するタタールスタン共和国は(最終的には撤回したが)ソ連崩壊時に一度は独立を宣言。世界有数のガス田を有し、戦争後はタタール人の間で独立を求める声が高まっている。
 また、タタールスタン共和国に隣接するバシコルトスタン共和国も地下資源に恵まれ、主要民族であるバシキール人を中心に独立志向が高く、ウクライナ側の義勇兵として身を投じる若者も多い。
 他にもカスピ海に面したダゲスタン共和国やウラル山脈の北西部にあるコミ共和国、それにモンゴルと国境を接するトゥヴァ共和国や日本の8.2倍の広大な面積を持つ東シベリアのサハ共和国もロシアの体制が揺らいだ場合、独立する可能性があると欧米の情報機関なども指摘している。
 更に、プーチンに忠誠を誓うカディロフ氏が首長を務めるチェチェン共和国も独立すると予測する専門家も少なくない。

 故に、冒頭で予想された様に、もし41カ国に分裂すつ様な事があれば、国境や資源などを巡り、分離国同士で新たな戦争なんて展開もありうる。
 現在、紛争状態にある中央アジアのアゼルバイジャンとアルメニアもソ連からの独立国で、90年のユーゴ紛争の様な状態に陥る事もゼロではない。また、極東を含むシベリア地域では分離・独立の混乱に乗じ、中国が介入するのは容易に想像できる。
 つまり、核兵器の拡散以外にも、ロシア解体には、共和国同士の分離・紛争という世界情勢の更なる混乱という新たなリスクがある。
 ”負けても腐ってもロシア”という過去の苦い歴史を見ても.先が全く見えない暗い未来予想図が待ち構えているのである。



8 コメント

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Unknown (1948219suisen)
2023-08-07 05:52:55
端的に言うとロシアが倒れたら今より悲惨な戦国時代に突入するということでしょうか?

日本の戦国時代は一応徳川家康の天下統一で完となったのですが、ロシアは、世界は、どうなっていくのでしょうか?

最終的には核戦争に依る人類滅亡?

明るい未来が見えてきませんね。
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ビコさん (象が転んだ)
2023-08-07 09:39:59
ロシアが自滅したら
という事でしょうね。
国力の差からして、ロシアがウクライナに負ける確率は非常に低いので、負けるとしたら内部崩壊みたいな自滅しかあり得ない。
特にアメリカは、クリミア半島をロシアに差し出しても和平交渉で終わらせたいと願ってます。長引けば、台湾有事に集中出来なくなりますから。
それこそ中国の思うツボですよね。
ま、どっち転んでも、ロシアに明るい未来はない様な気がします。

ところで、”アメリカ謝れ”の記事、私も全くの同感です。
アメリカが核投下の謝罪をしない限り、核問題の基本的な解決はないでしょうね。

いつもコメントいつもありがとうございます。
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見方を変えれば (腹打て)
2023-08-08 11:13:17
ロシアの防御線を破ってしまえばだが、一気にクリミアを陥落できるんではないか。
今回の戦争では明らかにロシア兵のモチベが低いから、プーチンが思うような展開には程遠い。
戦力差といっても、中国やイランの協力がなければ今頃はクリミア陥落も有り得たろうね。
その中国も今回の戦争が長引くことは望んでない筈で、台湾問題では先手を取れなくなる。
それはアメリカも同様で、これ以上長びくと台湾有事どころではなくなる。

一方でウクライナとすれば、どんなに長びこうが、ウクライナ奪還は最低限のノルムで、ロシア壊滅は国民の長年の願いでもある。
またプーチンとしては、当初のプランが白紙に戻った事で、今ではクリミア死守だけが唯一残されたカードのように思う。
そう考えると、ウクライナが防御線を突破しクリミアに攻めいれば、プーチンのプランは全て狂う。
意外にも聞こえるが、プーチンは最悪のシナリオも視野に入れ、早期和平を望んでるのではないだろうか。 
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腹打てサン (象が転んだ)
2023-08-08 14:49:32
確かに・・
流石にプーチンも中国のお家事情に逆らう事は出来ず、クリミアとドネツクとルガンスクのロシアへの帰属という今回の侵略戦争開始以前の条件での和平を望んでるでしょうか。

もしそうなれば、結局は悪のプーチンも経済には全くの無策だったとなりますね。
”カネがなけりゃ戦は出来ぬ”という事を思い知った大失態になるのかもです。
所詮、侵略戦争とはこんな程度なんですかね。
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プーチン追放のリアル (paulkuroneko)
2023-08-09 09:09:42
情報筋の話によれば
ロシアはクリミア半島を失いそうになれば”核を使うだろう”とされます。
しかし、クレムリンの反戦派エリートたちは”戦争は完全に間違いだった”とも語っている。その一方で、”強いロシアは不可欠だ”とも語っています。
米露間で1ヶ月に2度のペースで極秘交渉が行われ、この交渉にはラブレス外相も含まれるとされますが、会議の結果はホワイトハウスにも伝えられているとも噂されてます。

秘密協議ではプーチン大統領が最大の障害になり、行き詰まった。しかし、クレムリンのエリートらが別の指導者を支持するなら、”プーチン追放は不可能ではない”とも一部では囁かれています。
結局、プーチンという悪の根源を取り除くだけで、事が上手く収まるのかは疑問ですが、和平交渉に向け、1つの選択肢にはなるでしょうか。 
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paulさん (象が転んだ)
2023-08-09 11:28:44
ロシアの分裂を避ける為に、”強いロシア”は不可欠でしょうが、今の”腐ってもロシア”の状態では”強いロシア”は旧ソ連時代の幻影のような気もします。
今のロシアは完全に中国に依存してます。多分、中国が見捨てたらロシアはロシアではなくなる。
一方でプーチンは追い詰められなくとも狂ってるから、この狂人を排除したとしてもその傷跡はロシアにとって大きくなダメージとして、深く長く残るでしょうね。

確かに、旧ソ連崩壊の時、ロシアは崩壊していなかった。ソ連が分裂しただけで大国ロシアは上手く生き延びました。今、そのロシアが分裂し、自壊する危機にあります。
強いロシアを存続する為に、敢えて国民が選んだプーチンですが、彼ら彼女らはプーチンの蛮行を知ってて、彼を支持しました。
これはナチス時代のドイツ国民がしでかした罪と同じですね。
しかし、ヒトラーが自決し、ナチス崩壊後のドイツは今やヨーロッパNo.1の国家に君臨しました。それも平和な国家です。
そういう意味で考えると、言われる通り、”プーチン排除”は理想的なカードかもしれませんね。

色々と教えてくださって感謝です。
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プーチン排除の可能性 (UNICORN)
2023-08-10 10:44:05
6月に米中外相会談が行われた時、何か新しい展開があるなって思ったんですが、この時点ですでに極秘交渉が行われたと見るべきか。
多分、この交渉の内容はホワイトハウスだけじゃなく中国にも伝わってると思うので、今や”プーチン排除”は世界レベルでの課題かもしれない。
言い換えれば、プーチン排除は核攻撃抑止の最大のカードでもあるから、クレムリンのエリートらもプーチン排除の可能性を除外しない。
こうして時間軸を逆行させると、辻褄があってくるから不思議です。 
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UNICORNさん (象が転んだ)
2023-08-10 16:05:17
”プーチン排除”が本格化しそうですね。
7日の中露会談では中国側がロシア外相に、(中国が極秘で参加してた)和平交渉の内容を説明したらしいです。
これを見ても判るように、混乱し疲弊したプーチン政権の外堀が確実に埋まりつつあります。
一方で、それにタイミングを合わせるかのように、ウクライナはクリミア半島とヘルソン州を結ぶ二つの橋に対する攻撃を行った。

ウクライナは一気にクリミアを奪還し、プーチン政権を骨抜きにし、”プーチン排除”に持っていきたいでしょうね。
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