象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

那須川vsメイウエザーに見る、ボクシングの凋落とキックの繁栄と

2019年01月01日 12時58分28秒 | ボクシング

 確かに那須川は倒され、完璧に負けた。それも僅かに1R。 勿論勝てる筈もない試合でもあった。でもキックとボクシングの土俵の違いがハッキリと露呈した”お祭り”だった。

 一方、メイウエザーは殆どトレーニングをしていない?にも関わらず、那須川を子供扱いした。狙いすました一発のボディブローだけで、那須川はピンポンみたいに吹っ飛んだ。

 当り前だ。67kg級のボクサーと57kg級のキックボクサーがボクシングのルールで戦えば、メイウエザーでなくとも楽勝だろう。


 年末のビッグブートや世界タイトルには流石にうんざりだが。那須川vsメイウエザーは注目に値する、大晦日に値するお祭りに違いはなかった。勿論、試合内容は大半の予想通りの呆気なかったが、不思議と充足感があった。

 その充足感とは、キックが完全にボクシングと肩を並べたかなっていう充足感と同時に、言い換えれば、堕落しきったボクシングの凋落を見せてくれて有難うと。

 一昔前は、キックなんて二番煎じ的格闘技でもあった筈。ボクシングの前座にすらなり得なかった。引退したボクサーがキックボクサーとキックのルールで試合をしたとしても、話題にすらならなかった。


 昔の記憶で今回の試合とダブるのは、元プロボクシング世界フェザー級チャンピオンの西城正三と、全日本キックボクシングライト級王者の藤原敏男の対決ですかね。
 結果は、3回TKO(タオル投入)による中途半端な西城の棄権で藤原に軍配が上がったが。この結果が西城のキャリアを傷つける事はなかった。キックのルールではボクサーは両手を縛られて戦う様なものだからである。

 勿論、逆も真なりである。キックがボクシングルールで戦えば、両足を縛られた状態で戦うようなもの。アリキックさえ許されないのだ。


 今回の那須川とメイウエザー戦は、当然の如くルールで揉めた。キックで戦えばメイウエザーは100%負ける。完全無欠のキャリアに唯一傷がつく。
 メイウエザーは”負けない”という事のみで、評価されてる珍しいボクサーだ。彼は勝つ度に階級を上げる毎に評価を下げるという、奇怪なボクサーでもある。 

 ”神のデフェンス”と評される独特の防御スタイルもキツく言えば、逃げまくる的”チキン”スタイルに変わりはない。ボクシングの本場アメリカが一番侮蔑&軽蔑するスタイルだ。親父のメイウエザーSrはタフで絶対に逃げない卓越したファイターだったのに。
 YouTubeでレナードvsメイウエザーSrを見たんですが。昔はあれ程の凄まじいファイトもノンタイトルなんです。親父は息子よりも絶対に強いと確信した。 

 負ける事を許されないメイウエザーがキックを受け入れる筈もない。実質3階級の体重差があるんだから、多少はキックのルールを受け入れるのが”男”とも思うが。メイウエザーには、西城の様な”挑む”プライドはなかったのか。いや、”負けない”プライドの方が強かったのか。 


 かつて僅か1試合で300億円超を稼いだメイウエザーも41歳のロートルとは言え、今回のファイトマネーは僅かに200万ドル(2億2千万円)。キック一発に500万ドルのケチ臭いボーナスが設定されていたのも頷ける。

 圧倒的にメイウエザー有利の、僅か”3Rのお遊び”だが。それでもこんな端金で何故、わざわざ日本くんだりまで来たのか?

 これにはボクサー特有の人生のドランカー現象というか、人生崩壊型アフタストーリーが大きく関係してると思う。
 現役王者だった時に稼いだ多額のマネーを湯水のように使い込む。当然現役を退けば、懐は空っぽになる。メイウエザーだって例外じゃない。

 事実、2017年にUFCライト級王者のマクレガーとやった時は、多額の滞納した税金を払う為にリングに上がったという噂が立ったほどだ。

 
 ボクサーは拳が全てである。彼らから拳を取り去ったら、掴んだ名誉も稼ぎ出したファイトマネーも、そして自らの人生をも失ってしまう。つまり、メイウエザーにとってキックで戦う事は、全てを失う事でもあった。相手が格下の軽いクラスのキッカーだとしても。

 今回の”お遊び”でメイウエザーが得たものは、200万ドルの端金だけである。いや彼は、今回のお遊びで全てを失ったようにも思う。それ以上にボクシングという存在のの凋落を垣間見たような気もする。

 一方、負けた那須川もピークを過ぎた様な気がしないでもない。いくら”お遊び”でもキックを封じられたキッカーが、何も出来ずにカンバスに沈められるのは、想定内の結果でもあったが。

 ただ、那須川の肉体が鍛えられたそれではなく、赤ん坊の白く柔らかな危うい肉の塊に見えた。メイウエザーのダブついた筈の黒い肉体が、思った以上に逞しく思えた。

 それでも大げさに言えば、日本のキックが世界のボクシングと肩を並べた歴史的瞬間でもあったような気がしないでもない。そういう意味では、那須川に有難うと言いたい。
 

 泣くな那須川、君には明日がある。メイウエザーにはない、”挑む”プライドがある。それだけでも十分じゃないか。だから人前で泣くな那須川、笑って誤魔化してろ。君が思うほどにメイウエザーは格上で偉大な選手じゃない。



6 コメント

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新年も宜しくね。 (HooRoo)
2019-01-02 03:32:31
那須川クン負けちゃったね。

やっぱりキックないと本領発揮できないんかな~。でもかわいそうだったな。ボクシングのルールじゃあんまりだよね。

転んだサンはお正月はどう過ごすの?私はスキー三昧かな。滑るの下手だけどね。
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新年あけましてです。 (lemonwater2017)
2019-01-02 22:20:58
こちらこそ、新年も宜しくです。

那須川負けちゃったけどね、いい勉強かな。

Hoo嬢はスキー三昧ですか。私はDVD三昧です。地味な正月ですが、そこそこに楽しんでます。スキーで怪我をしないようにね。
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転象さん、僕は両者ともにエールを送りたい (肱雲)
2019-01-03 06:22:13
金目当ての茶番だったんだろうが、僕はそんな事より両人の「足掻き」がぶつかり合い、弾けた興行ゲームだったと思います。ボーダーレスの試みは、様々なジャンルで展開中だけど、その一長一短はあるのは否めず、ドウシヨウモナイ事です。例えば、柔道の場合はどうでしょう。ウェイト別で各チャンプを決めようとするけど、矢張り「無差別」級チャンピオンに、真の実力者を見出そうとするのが、我々の思いです。だけどその結果はどうなるのか。大きい奴が捻じ伏せて勝利者となる確率が高くなるのは必定ではないでしょうか。アジア初の日本東京五輪の柔道で、神永が格闘技王国オランダ、ヘーシンクに抑え込まれて一本負けを喫した。あの時の神永の涙が、那須川のそれとダブって思えたのです。国を背負う五輪と、大晦日の恒例行事となって久しい、打倒紅白視聴率合戦格闘技イベントと同列に論ずるなと怒られそうだけど、僕にはそんな事より、一人の人間が、様々な恐怖に対峙し、それを乗り越えようとチャレンジした点では、同一線上にあると思うのです。それは、結果的に勝者になりほくそ笑んだヘ~寝具とメイウェザーにしても同様で、彼等も体重や体格で絶対的優位に立つ自分達が、勝つのは当然だろうと世間に揶揄され、そうした子供相手に勝利を当然視されていても、敢えて対戦に臨もうとする姿に、ボーダーレスチャレンジスピリットを感じるのです。メイウェザーが小金目当てだったとしても、日米親善のオフザケ・お遊びイベントだったとしても、番狂わせの結末も無くドッチラケの予期された悲喜劇に過ぎなかったにしても、何かを感じさせてはくれましたぞナモし。高田がチョイ噛ミしたのもヨカばい!?
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肱雲さんは優しいな。 (lemonwater2017)
2019-01-03 09:32:14
私はやはり、メイウエザーJrはスカんですね(笑)。親父の血生臭いファイトを見習えってかな。デフェンスなら、デュランやレナードの方が上だろうに。

でも、カネロはメイウエザーに判定負けしてから、攻守のバランスが異常なまでに良くなった。

那須川にはボクシングに転向し、軽量級で乱立する日本ブクシングの世界タイトルを統一して欲しいという気持ちがあったのか。あんな形で敗れ去ったのはやはりショックかな。今から考えるとですが。

ボクシングも柔道も重い方が絶対有利という中、17歳の頃のタイソンはそれを覆す様な勢いがあったのに。ダスカマトが死んで、堕落しちまった。
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フェイクって噂も (hitman)
2019-01-03 18:36:42
少し遅いですが、明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願いします。

海外メディアの中には、仕組まれたとの報道もあります。139秒の10億円の八百長試合という事ですか。

実際にはどうなのかとも思いますが。当初2億円と言われたファイトマネーが実際には10億だったとすると、その一部が那須川サイドに流れたと言えなくもないですかね。あくまでも穿った見方ですが。

試合後の那須川陣営の写真を見ると、やはりフェイクだったのかなって。転んださんはこの疑惑のファイトをどう思いでしょうか?
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Re:フェイクって噂も (lemonwater2017)
2019-01-04 04:25:06
hitmanさん、遅くなりまして、明けましてです。

フェイクって事はないでしょうが。那須川の脚が揃った所に、メイウエザーの狙いすました右ボディーが見事に命中した結果ですが。素人目に見ればフェイクに見えてもおかしくないかと。

でもそれだけ海外では、メイウエザーが評価されてないと。私もその1人ですが。

ただ、2億と言われたマネーが10億だったとなると、その一部が那須川サイドに流れた可能性はなくもないですが。それが真実だとすると那須川も危ういかなと。

とにかく私的には、”嘘だと言って”って感じですかね。
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