象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

リーマン予想と素数の謎、番外編その6(19/2/23更新)〜アーベルの総和法と自然数の総和とゼータの収束と〜

2018年02月28日 13時07分20秒 | リーマンの謎

 1年ぶりにアーベル総和法を更新してますが、結構いい加減な事書いてますね。慌てて修正する始末で、スンマセン。

 この発散級数の総和法による収束ですが。リーマンゼータが登場するまでは、抽象的過ぎて大変な作業だったんですね。リーマンの解析接続もある意味、総和法とも言えますか。いや言えないか。

 前回”その5”では、減衰振動する公比1の無限等比級数、ζ(0)=”1+1+1+•••”=−1/2となる事を、"振動アーベル総和法"を使い示しました。従来のアーベル総和法では、発散した無限級数をです。

 今日は、ζ(−1)=”1+2+3+•••”=−1/12の謎に迫ります。これも前回と同じく、"振動アーベル総和法"を定義し、実際にオンラインで計算すれば、−1/12に収束するんですが。それまでの過程がややこしくて。

 

自然数を係数に持つ交代級数______

 先ず、以下の自然数を係数に持つ等比級数を考えます。この自然級数の公比rの等比級数の公式は、1+2r+3r²+4r³+•••=1/(1−r)²、0<r<1で与えられます。この公式も何度も出ますので、しっかりと覚えておきます。

 この公式の証明ですが。前回登場した、初項1、公比rの等比級数、1+r+r²+r³+•••=1/(1−r)²の両辺をrで微分すれば、簡単に得られますね。
 前やったのは、両辺を2乗し、項をずらして足し合わせた、原始的なややこしいやり方でした。ここにて訂正です、スンマセン。


 そこで前回同様、次の様な自然数を係数とした”交代級数”を考えます。S=1−2+3−4+•••=1+2(−1)+3(−1)²+4(−1)³+•••と変形です。
 自然数を係数とした初項1、公比−1の等比級数の公式が使えるので、S=1/(1−(−1))²=1/4となりますが。公比−1は範囲外だし、答えは無限大かマイナス無限大の筈です。
 
 そこでアーベル総和法の出番です。これも自然数を係数とした交代級数として、Sa="1−2+3−4+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]k(−1)ᵏ⁻¹e⁻ᵏˣ、0<x(≒0)と定義します。自然数に相当するkが噛んでるのに注意です。この交代級数は、最初増大し、その後ゆっくりと指数関数の効果により減衰します。

 これを自然数を係数とした、初項e⁻ˣ、公比−e⁻ˣの等比級数の公式を使って表すと、e⁻ˣ−2e⁻²ˣ+3e⁻³ˣ−4e⁻⁴ˣ+•••=Σ[k=1,∞]k(−1)ᵏ⁻¹e⁻ᵏˣ=e⁻ˣ/(1−(−e⁻ˣ)²。
 x→0+の時、e⁻ᵏˣ→1となり、Σ[k=1,∞]k(−1)ᵏ⁻¹e⁻ᵏˣが限りなく、"1−2+3−4+•••"に近づくのが解りますね。これこそが、アーベル総和法のトリックなんです。

 lim[x,0+]より、上式にx=0を入れると、e⁻⁰/(1−(−e⁻⁰)²=1/4。これもグラフにすると判り易いんですが、減衰していき、最終項は0に収束。故に、"1−2+3−4+•••"は1/4に収束です。

 "1−1+1−1+•••"と"1−2+3−4+•••"の交代級数は、アーベル総和法で収束する事が証明されますね。アーベル総和法が”チェザロ総和法”よりも強力とはこの事です。

 故に、1+2r+3r²+4r³+•••=1/(1−r)²の公比rは、−1≦r<1に拡張出来、この自然数の等比級数は、減衰振動により収束します。つまり、交代級数を自然数を係数とした等比級数とみなす事で、収束を可能にしたんです。

 

”1+2+3+4+•••”=−1/12、の謎______

 次に、自然数の級数S=1+2+3+4+•••を考えます。

 これも前回紹介した、”アインシュタイン以上の天才”とされるインドのラマヌジャンが”危ない”計算をします。
 1−1+1−1+•••=1/2を、危険な計算で解き明かしたラマヌジャンは、A=1−2+3−4+•••とし、S−A=4(1+2+3+•••)で、S=−A/3と。イラスト左下のナイスガイです。
 そこで、Aを1つずらしてA同士を足し、2A=1−1+1−1+•••=1/2とし、A=1/4を得ます。
 故にS=−1/12と。しかし、Aの最終項の極限≠0なので、これも勿論、誤りですが。答えはズバリ合ってます。

 そこで今度は、Sa="1+2+3+•••"=lim[x,0+]Σ[k=1,∞]k*e⁻ᵏˣ、0<x(≒0)、とアーベル総和を定義します。この自然数の等比級数は、最初増大し、その後ゆっくりと減衰の筈ですが。

 これも自然数を係数とした初項e⁻ᵏˣ、公比e⁻ᵏˣの等比級数の公式を使い、e⁻ˣ+2e⁻²ˣ+3e⁻³ˣ+•••=Σ[k=1,∞]k*e⁻ᵏˣ=e⁻ᵏˣ/(1−e⁻ᵏˣ)²。
 lim[x,0+]より、これにx=0を入れると、e⁻⁰/(1−e⁻⁰)²=∞となり、"1+2+3+•••"は発散します。アーベル総和法の限界ですね。

 

自然数の総和と振動アーベル総和法____

 そこで前回同様に、この自然数の等比級数が非常に長い周期で振動してると仮定し、以下の"振動アーベル総和法"を使い、減衰する?自然数の総和を、次の様に定義します。

 振動アーベル総和Ha(x)="1+2+3+•••"=lim[x,0]Σ[k=1,∞]ke⁻ᵏˣcos(kx)、0<x(≒0)と定義します。この級数も、xの数の特質で、非常にゆっくりと減衰振動します。
 ただ前回は、Ha(x)="1+1+1+•••"をlim[x,0]Σ[k=1,∞]e^(−kx³)*cos(kx)と定義した様に、振動アーベル総和法の定義は級数毎に異なります。ここら辺はホントややこしいです。


 この"新しい和"の世界では、"1+2+3+•••"=−1/12が成立します。実際、x=0.001を代入し、k=3000の範囲でオンライン計算すると、Ha(0.001)=0.08333...≒−1/12となるそうです。
 故に、振動アーベル総和法の定義を使い、コンピュータで計算すると、ζ(−1)="1+2+3+•••"=−1/12となると。イラストでは実際に収束する様子が判りますね。何だか解った様な解かんない様なですが。

 とにかく、通常の1+2+3+•••は、当然に如く発散し、”新しい和”である"1+2+3+•••"を振動アーベル総和法で定義すると−1/12に収束する。しかし有限項では、現実と同じで、1+2+3+•••n="1+2+3+•••n"=∞となると。

 この振動アーベル総和法には、級数に応じて様々な公式が存在しますが。特に、この”総和法”という概念に慣れるには、時間が掛かりそうですね。

 

リーマンとアーベル__________

 複素領域のゼータでは当り前の事が、リーマンが登場する前は、奇怪で様々な”総和法”を用い、発散級数の収束値を追い求めてたんですね。

 リーマンがいなかったら、左半分のゼータは発散したままで使い物にならんかったね。この自然数の総和(自然級数)も発散したままで、様々な発散級数から収束値が得られる筈もなく、その後の数学や物理学に応用される事もなかったでしょうか。

  リーマンは、アーベルが発見した総和法を使う事なく、ゼータの収束を証明したんですが。このゼータの収束は、オイラーの夢であり、アーベルの希望でもあったかもです。

 総和法では、”新しい和”という特別な世界の中で進めていくんですが。リーマンは解析接続を使い、”新しい和”という抽象的な概念を用いずに、発散する筈のゼータ級数を収束させたんです。
 このリーマンがアーベルに入れ替わる様にして生まれてきたのには、何か大きな意味があったんですね。


 という事で、前回の”その5”に引き続き、1年ぶりに大幅な更新&加筆しましたが。次回は、この"振動アーベル総和法"の証明に入ります。



2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
インドのラマヌジャン (paulkuroneko )
2018-03-09 17:27:16
少し補足ですが。生意気ですみませんね。

ラマヌジャンが簡易に計算した方法ですが。この計算方法は"ヒューリスティク"といい、答えの精度は保証されないが、妥協策として用いる方法で。それでも近似アルゴリズムよりかは精度が高いとされます。

その場しのぎの仮定計算ともされますが、昨今のアンチウィルスソフトには、この”ヒューリスチック”アルゴリズムが使われてるそうで、笑えそうで笑いないですね。

以上、大きなお世話でした
返信する
Re:インドのラマヌジャン (lemonwater2017)
2018-03-10 05:51:01
おはようございます。

paulさんには、いつも貴重な補足、非常に勉強になります。

と言う事で、ついでに私も補足です。

実は、1−1+1−1+・・・という交代数列はカッコの付け方で値が変わるという事を知りました。

1+(−1)+1+(−1)²+・・・+(−1)^(n+1)+・・・ で振動。
(1−1)+(1−1)+(1−1)+・・・=0で収束。
1−(1−1)−(1−1)−・・・=1でこれまた収束と。

勿論これも、実際には、0または1の振動が正しいのですが。全く不思議ですね、数学の世界って。

という事で、これからも色々と教えて下さい。宜しくです。
返信する

コメントを投稿