象が転んだ

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「特攻」は無駄死にか?美学か?〜”十死零生”の無謀な作戦

2020年01月01日 04時06分57秒 | 戦争・歴史ドキュメント

”十死に零生”

 この作戦を命じられたのは、当時のトップエリートを含む若者たちだった。なぜ彼らは特攻隊員として選ばれたのか?
 この歴史の闇を、「特攻〜戦争と日本人」の著者の栗原俊雄氏があぶり出す。
 以下、「十死零生の作戦に選ばれた若きエリートたちの苦悩」より一部抜粋です。

 ”戦争してるんだから、死ぬのは当り前じゃないか”
 戦争を知らない世代はそう思うだろうか。しかし、いかに戦時中といえど”死んでこい”という命令はめったに出ない。
 兵士の士気が下がるのは当然で、戦力が低下するのは必然である。”任務の成功=死”という作戦を組織的に行ったのは、少なくとも第二次世界大戦時点では大日本帝国だけである。


”統率の外道”と呼ばれた作戦

 筆者の栗原氏は、この”統率の外道”(特攻創設者と言われた大西瀧治郎海軍中将の特攻評)の実情を知るべく、関係者の取材を続けた。
 特攻から帰還した江名武彦さんはその1人。戦況が悪化してた1943年12月、早稲田大学在学中に学徒出陣した。自らの意思を聞かれる事なく特攻隊員となる。
 ”学生生活の最中でしたから、人生への愛着や未練がありました。若くして命を絶つ悔しさと、親への申し訳ない気持ちがあった一方で、国が危急存亡の時に青年としての宿命だと考えました。同年代の若者は実際に戦場に行っていたのですから”

 当時、22歳の少尉•江名さんは3人乗りの97式艦上攻撃機に乗り、45年4月、鹿児島県の鹿屋基地から特攻に向かった。同乗するのは、海軍飛行予備科練習生(予科練)の20歳と16歳。機長の江名の顔が強ばってたのか、16歳の戦友に”笑って死にましょう”と話しかけられる。
 しかし江名機は、薩南半島南端付近でエンジントラブルに見舞われ、近くにある陸軍の知覧基地に不時着した。その後もう一度飛び立ったが、やはり機体不良で鹿児島湾沖の黒島に不時着し、運良く生還した。

 
何故?若きエリート達が?

 当時の大学進学率は10%に遠く及ばない。予科練は、海軍が航空機搭乗員のエキスパートを短期間で育成する為の機関。予科練出身者は”飛行機乗り”の専門家で、大学生とは別の意味のエリート候補である。
 なぜ?こうしたエリートたちを”九死に一生”でさえない、”十死零生”の特攻に行かせたのか?

 1941年12月8日の開戦後、帝国海軍の航空母艦を主体とした機動艦隊は、ハワイで米太平洋艦隊の主力を壊滅させ、2日後にはマレー沖で英国が誇る新鋭戦艦プリンス•オブ•ウェールズ以下戦艦2隻をも撃沈する。
 雷撃機(魚雷を積んだ航空機)と爆撃機と、それらを護衛する戦闘機からなる日本の航空部隊は当時世界最強であった。翌年6月のミッドウェー沖海戦で主力空母4隻を失うも、しばらくは米機動部隊と互角に渡り合った。
 しかし戦争が長期化するにつれ、日本の航空隊は戦力を低下させていく。日中戦争以来の歴戦の勇士が少なくなり、搭乗員の技量が低下した。飛行機の性能そのものも、米軍ほど頻繁なモデルチェンジができず差が開いた。そもそも国力が大きく劣る為、生産数で太刀打ちできない。
 事実、アメリカとは工業力で10倍、経済力で7倍以上の差があった(GDP比では37倍もの差があったとも)。
 さらに、米軍がレーダーを活用し、防空体制を強化した結果、日本軍の航空隊が敵艦隊に近づく事さえ難しくなった。つまり、特攻はこうした負の背景から始まったのだ。


”死ぬこと”それ自体が目的に?

 1944年10月25日午前7時。大日本帝国がアメリカやイギリスなどの連合軍と戦争を始めてから3年目。フィリピンのルソン島マバラカットの飛行場に5人のパイロットが立っていた。傍らにはゼロ戦闘機が・・・この日は爆撃機の様に250キロ爆弾を抱いていた。
 これは後、”最初の特攻隊”として広く知られる事になる”敷島隊”だ。関行男大尉、中野磐雄、谷暢夫•一等飛行兵曹、永峰肇•飛行兵長、大黒繁男•上等飛行兵曹が飛び立っていった。関を除く4人は予科練出身である。
 敷島隊の5機は、米空母群を発見し、襲いかかった。空母セント•ローに1機が体当たりし炎上させた。魚雷と爆弾に引火し、僅か30分足らずで沈没したのだ。 
 一方、別の一機は旗艦空母キトクン•ベイに体当たり、果たせなかったものの爆弾が炸裂し、被害を与えた。さらに空母ホワイト•プレーンズに向かった一機も、体当たりは失敗したが至近弾となり、機体の破片などで敵乗組員ら11人が負傷した。

 因みに、この時の特攻作戦と呼応していた連合艦隊主力による”レイテ沖海戦”では、戦艦大和以下の大艦隊が執ように追撃したが、沈めた米空母は1隻だけ。それに匹敵する戦果をたった5機で挙げたのだ。
 またこれに先立つマリアナ沖海戦では、帝国海軍機動部隊は500機近くで一隻すら沈める事ができなかった。つまり、特攻隊の威力は衝撃的で驚異的でもあったのだ。


同じ死ぬなら初心者を充てよう

 以降、海軍は特攻を大規模に展開し、陸軍も続いた。
 当初は元々あった戦闘機を転用した特攻だが、その後、特攻専用機が開発された。”人間爆弾”と言われた”桜花”である。1.2トンの爆弾にエンジンが着いた単構造で、車輪は着いていない。故に一度出撃したら、生きて帰る可能性はほぼゼロだ。 
 ”自殺”とも言うべき特攻は米軍とって信じがたい作戦だ。予想していなかった為、当初は大きな戦果を挙げたが、米軍が迎撃態勢を整備した結果、目的とする敵艦船に近づく事さえ難しくなった。しかし、追い詰められた末期の帝国陸海軍にとって、唯一の主要な”作戦”でもあった。

 特攻に征けば必ず死ぬ。
 ”ならば、通常の作戦で戦果を挙げる可能性がある歴戦のパイロットではなく、初心者を充てよう。また先々に軍の幹部となる者よりは、そうでない者を選ぼう”
 特攻を推進した陸海軍首脳がそうした”合理性”を重んじた結果、陸軍士官学校や海軍兵学校出身の様に、元々”プロの戦士”ではない学徒出身者や、飛行機乗りとしてはプロだが、厳格な階級ヒエラルキーの中にあっては幹部になりにくい予科練出身者、ことに若者たちが特攻に動員されたと、筆者はみる。

 敗戦までの一年足らず、航空機による特攻だけでおよそ4000人の若者が死んだ。終盤は死ぬ事(死なせる事)自体が目的の様な”作戦”に変質した。
 そもそも誰がこんな無謀な”作戦”を始めたのか?
 以上、gendai is mediaからでした。

 書いてるだけで、大きな矛盾ばかりを感じてやりきれないのですが、これも戦争なんですかね。
 国の為に戦う前に、若者の命を犠牲に強いる軍首脳部の無能さと残忍さには今更でなくとも呆れ返ります。
 次回は、”特攻隊の本当の成果とその実像”について書きたいと思います。



19 コメント

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十死に零生 (hitman)
2020-01-01 05:28:48
この言葉に尽きますよね。
この言葉が特攻の全てをいい表してます。
それ以上もそれ以下もない・・・

新年も辛辣で斬新でユニークな記事期待してま〜す(^^)
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hitmanさんへ2 (象が転んだ)
2020-01-01 06:26:10
尽きますね。
新年もユニークなコメント期待してます(^o^)
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Unknown (kaminaribiko2)
2020-01-01 06:42:01
私の叔父(母の弟)は志願して予科練に行き特攻隊に入隊しましたが、戦争の末期だったため、飛ばす飛行機がなく帰還しました。叔父は祖父母にとって、たった一人の息子であったのに、万歳三唱で送り出した気持ちは私には図りかねます。戦争末期になり、そういう社会風潮になっていたのでしょうか?
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ビコさんへ (象が転んだ)
2020-01-01 12:03:51
日本人は几帳面で繊細で些細な事にも勤勉な生き物ですが、追い詰められると平気で特攻やバンザイ攻撃をしでかします。

そこら辺の奇怪な感性が欧米から見たら神秘に見えるんでしょうか。良く言えば武士道や神の国って事になるんですが。

旧年はお世話になりました。今年も宜しくです。
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明けまして (#114)
2020-01-01 13:13:13
おめでとうございます。

特攻もミサイル防衛も
十死に零生かな

命と血税を無駄に扱うと
大きなしっぺ返しを喰らうんだね

旧年は色々とお世話になりました。
新年も宜しくお願い申し上げます。
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転象ブログはある意味特攻ブログかも?! (肱雲)
2020-01-01 13:28:42
今では此の国自体が米帝の特攻隊(犠牲)にされてるけどネ~…
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戦争の現実 (tomas)
2020-01-01 14:24:26
アマゾンレビューから抜粋です。

城英一郎、岡村基春、大西瀧治郎、後宮淳、福留繁、菅原道大、富永恭次、宇垣纏、大田正一、及川古志郎、黒島亀人。

以上、全部若者たちを特攻隊員として死に追いやった悪党たちです。
よく見ると自分たちは戦後をぬけぬけと生き残り、平和を味わってます。城は戦死し、大西は罪滅ぼしで自害、宇垣は他の特攻隊員を巻き込み特攻死。これが現実です。
つまり、戦争指導者は生き延び、一般市民は死ぬ。これが戦争です。

現在の政府も自分たちは戦争に行く気などサラサラなく、若者たちを将来戦争に参加させる法律を作ろうと必死になってます。

若い人たちに言いたいです。
これが現実なのです!国の指導者や戦争指導者は決して戦争には参加しません。
つまり、戦争に行くのはあなたか、あなたのこどもか、あなたの孫か、です。

新年も宜しくです。
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#114さん (象が転んだ)
2020-01-01 15:25:34
こちらこそ明けましてです。
”命と血税を無駄に扱うと大きなしっぺ返しを喰らう”
全くそのとおりですね。今年も宜しくです。
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肱雲さんへ (象が転んだ)
2020-01-01 15:30:56
特攻ブログというより
十死零生ブログですかね^_^
今年も宜しくです。
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tomasさんへ (象が転んだ)
2020-01-01 15:32:35
これ早速、補足します。
このコメントを安倍に
直接突き付けたいですね。

昨年はお世話になりました。
今年も宜しくです。
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