象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

負け方にも程がある〜「負けを活かす極意」に見る、負ける事のススメ

2023年02月16日 03時01分47秒 | 戦争・歴史ドキュメント

 プーチンのウクライナ侵攻を最初に目にした時、気の柔い私はゼレンスキーは(キエフを敢えて破棄し)負けたふりをすべきかなとも思った。
 もし、そうなってたらロシアは、7年前のクリミア危機に続くおめでたい?”無血開城”となるが、結果はその後のウクライナ軍の徹底抗戦により、ウクライナ側で2900人、ロシア側で9600人の損失を出す壮絶なる大惨事となった。
 今回も前回と同じ様に無血開城となってたら、その後の延々と続くウクライナ紛争で、これまた前回と同様に多くの犠牲者が出てたろうか?
 いや、経済制裁とSWIFT制裁の効果が意外にも早く現れ、ロシア軍の早期撤退に繋がるのだろうか?
 もしそうなれば、今度はウクライナが無血で首都キエフや奪われた南東部の都市を奪還出来る事になる。

 勿論、そんなに上手く行く筈もないが、ウクライナ国民の総意として徹底抗戦は勿論だが、国外への撤退と亡命政権という選択肢も頭の片隅に入れとくべきかもしれない。 
 しかし、西側への退避路をロシア軍が爆撃&封鎖してる状況では、撤退しようにも撤退できない矛盾が存在する。
 戦争とは、そういった諸々の矛盾を含め戦争なのだろうか。
 ウクライナが欧米の軍事的支援をバックにしてるとは言え、米軍やNATO軍の直接介入がない限り、不利なのは目に見えている。
 徹底抗戦はいつしか無残にも潰され、ウクライナに留まる民間人も大量殺戮に見舞われる。
 つまり、今回のウクライナ危機は”負ける”事、いや撤退する事も視野に入れて考える必要がある。それに撤退したとしても、できるだけ自国の損失を防ぐ必要がある。
 というのも、ロシアがウクライナを支配するのは明らかに不可能だからだ。


経済制裁は効いているのか?

 だが、思った以上にウクライナは反撃してるし、一方で思ったほどのロシアへの経済制裁の効果は出てない様にも思える。
 日本には”負けるが勝ち”と言う諺がある。しかし、今のウクライナにはそんなのは通用しない。つまり、”負けたら全てが終り”なのだ。

 この記事はウクライナ戦争が始まった昨年の2月末に書き溜めてたものだが、その後のダラダラと続く終りの全く見えない戦況に、流石に嫌気が差し、ボツにしようかなとも思った。
 中国の水面下での支援や抜け道もあってか(事実、ロシアの貿易黒字は過去最高であった)、欧米が主導した経済制裁の効果は、あまり顕著には見られない。それに、EU諸国の多くが、依然としてロシアからの石油やガス輸入を続けてるという現実がある。
 だがロシアから見れば、輸入が極端に減った結果とも言えるが、これが長期的にどう影響するかは不透明でもある。

 しかし、プーチンのいう”特別軍事作戦”も、ロシア軍の総力を挙げたにも拘らず、東部戦線で膠着状態に陥ってるのも事実で、戦争がこれからも長期化するか否かは、ロシア軍の兵站次第であり、結局はロシア経済の動向に掛かっている。
 つまり、ウクライナが有利か不利かが明確に判別できないのは、こうしたロシアの懐の干上がり具合が微妙だからであろう。
 事実、ロシア軍は昨年11月、南部の主要都市ヘルソンから撤退して以降、殆ど前進してはいない。それどころか今年2月に入り、(BBCの分析では)ロシア軍兵士の死者は昨年夏の4倍以上に急増し、(ウクライナ側は報告では)侵攻以来、合計で13万を超えたとされる。

 一方で、”ロシアの攻撃は激化し、プーチンは長期化を覚悟してる”との慎重な見方もある。
 今までは”プーチンの挫折”や”ロシアの失敗”など楽観的な分析が目立っていたが、”戦況はウクライナ側に有利に展開するとの見方は的外れであり危険である”と断じた。
 つまり、”プーチンは今なおウクライナ現体制を破壊する意図を固く保ち、新たな部隊を投入し大規模な攻撃の準備を進めてる”と見る欧米の軍事専門家も少なくない。
 勿論、こんなプーチンの勝利の青写真を米国もNATOもEUも認める筈がない。つまり、欧米にとっても”負けは全てを失う”事を意味するからだ。故に、欧米は更なる強力な軍事支援を供与するだろうし、両国の激戦は更に長く続くものとなる。

 アンジェロ・ダンディーの言葉に”今は辛抱だ、いつかは終りが来る”とあるが、両国ともそう思ってる間は終わりが見えそうにない気もするし、そうでないかもしれない。
 そこで今日は(少し矛盾するようだが)、如何に”巧く負けるか”というテーマで書きたいと思う。


負けを活かす為に

 勝つ者は、負け方を知っている。
 監督通算成績1565勝1563敗、プロ野球で一番負けたからこそ語れる、”負けを次に生かす”ノムラ流極意とは?
 ”負けに不思議の負けなし”とは、野村監督の最も得意とする格言である。
 勿論、”負けるべくして負けた”という意味も含まれるが、この言葉の本質は”負けから何を学ぶか”である。
 プロ野球の世界でなくとも、たった1つの負けをきっかけに、頂点から奈落の底に堕ちる事が往々にしてある。一方で負けが込んでも、気がつけば最後にトップを取ってる事もある。
 目先の勝利や華々しいプレーや結果にばかり目を奪われがちだが、本当に強い者は”最後に勝つ”者なのである。
 最初は弱く失敗をし、負けていても、弱者には弱者の戦略(兵法)があり、奢れる強者を逆転する事は決して夢物語ではない。
 その為には、ただの負けを無意味な1敗にするではなく、明日に繋がる根拠のある負けや次への伏線となる負けにする必要がある。

 今の日本は、国際競争力減退・格差拡大・人口減少などの不安要素を沢山抱えてる。またビジネスの世界でも、左遷・撤退・リストラなど現実は芳しくない。
 目先の現象としては”負け”しかなくなった現代の日本。いま必要なのは、負け思考・志向の現代人の常識を覆し、最後に勝利をつかむ為の”次に繋がる意味ある負け方”や”最後に勝つ伏線となる負け方”や”大局の視点での局地戦での負け方”である。
 日本で一番負け、善く勝ち、善く負ける方法を体得した名将・野村氏が語る、負けを生かす勝利への極意とは・・・(Amazon)

 この「負けを活かす極意」が教えてくれるのは、”人は負けない限り学ぶ事をしない”という事である。つまり、負ける事で学ぶ事を知る。
 ”常に負ける事を前提にして物事を考える”というのが野村氏の流儀である。
 これは(連敗を前提にしたベット戦術である)”ケリー基準”にも見事に合致する流儀だが、どんな世にも”必勝法”なんて存在する筈もなく、負けを覚悟した”攻略法”が存在するだけである。
 あらゆる生物が絶滅を繰り返す事で進化を確保してきた事を考えると、野村氏のいう”負けを活かす極意”は、あらゆる生物に対しても当てはまるかもしれない。

 負けを活かす極意とは負けを活かす為の極意であり、負けない為の極意ではないし、勿論、勝つ為の極意でもない。
 つまり、最後に勝つという真の勝利者の為の極意である。
 

負け方にも程がある

 太平洋戦争でのアメリカのやり方は、”勝ち方にも程がある”を思わせる、野蛮で冷酷なものだった。岸田首相風に言えば、”悪質な蛮行”となる。
 勿論、日本も中国大陸侵攻など”やり方にも程がある”お粗末なレベルだったが、現代の戦争とは常識や限界を大きく逸脱する事が頻繁に起こり得る。
 同じ様に、プーチンの狂気に満ちた”やり方にも程がある”的な無差別破壊攻撃により、序盤のウクライナは明らかに劣勢であった。
 勿論、プーチンの誤算や焦りもあるが、プーチンの狂気と拳の落し所がわからない限りは、ウクライナの徹底抗戦がどれだけ有効なのかもわからない。
 一方で、ロシアは制空権を支配してる訳でもなく、全面攻撃を仕掛ける訳でもない。
 (核攻撃も含め)やるぞやるぞと見せかけて、やらないかもしれないし、やるかもしれない。

 そんな状況だけを見れば、時間が経つほどに(国際世論を味方に付けた)ウクライナを含めた西側諸国が有利にも思えるが、先に指摘した様にウクライナの”負け”を視座に入れて考える必要もある。つまり、徹底抗戦だけでなく”負ける”事も視野に入れ、プーチンがウクライナに総攻撃を仕掛ける前に、退避路や補給路の整備を用意周到に徹底する事も徹底抗戦以上に重要な課題でもあろう。

 (復興の事を考慮に入れ)程々の負けで終える為には、負けた時の様々な考えられうる状況や結果を想定する事も(勇気がいる事だが)今は必要ではないだろうか。
 勝利だけを追及し、勝つ事のみを前提とした戦争では、犠牲は膨らむだけ膨らみ、真の勝者は存在しない。第二次大戦後のヨーロッパの戦勝国はその典型でもあった。
 野村克也氏が生きていたなら、ウクライナ軍の徹底抗戦に対し、何とアドバイスするのだろうか?
 つくづく惜しい人を亡くしたと思わずにはいられない。



4 コメント

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6勝4敗 (平成エンタメ研究所)
2023-02-16 12:40:27
プロ野球は確か6勝4敗で優勝できるんですよね。
一方、ロシアもウクライナも相手の無条件降伏、ゼロサムゲームをやっているように思えます。
まあ、ウクライナにしてみれば6勝に達していないので抗戦しているのでしょうが。

戦争は終わらせるのが難しいんですよね。
明治の政治家たちは日露戦争の終わらせ方を考えていて、アメリカに仲介を頼みました。
しかし太平洋戦争の指導者たちは「一億玉砕」。
いよいよ困ってソ連に仲介を頼みましたが、すでに時遅しで、逆に攻め込まれる始末。

ウクライナ侵攻。
そろそろ第三者の仲介がほしいですね。
機能しない国連も見直されるべきです。
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エンタメさん (象が転んだ)
2023-02-16 13:48:11
全く同感です。
これ以上、長引くと・・・
言われる通り、ロシアウクライナ両国の膨大なる損耗を考えると、お互い無条件降伏状態になりますよね。
狂気のプーチンはイランと実質の軍事同盟を結んでますから強気でいます。
一方でゼレンスキーも本気でロシアを打ち砕く気でいるし・・

正直、ここまで長引くとは思ってもいませんでした。
中国あたりに仲介役をと期待してたんですが、(無能な国連も含め)アテが外れた感がします。

コメントいつも勉強になります。
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負けを意識する覚悟 (paulkuroneko)
2023-02-17 11:35:15
台湾有事でもし戦争になったら、日米同盟が中国に勝利する確率は低いかもでしれません。
多分、ウクライナ支援で異常なまでの出費が嵩んでるアメリカは、負けた時の事を考えて既に行動してるでしょう。
それに対し日本は、アメリカと共に戦えば勝てると本気で思ってるフシがあります。

アメリカも70年代の一人勝ちの頃のように鉄壁じゃなく、戦後の日本は完全に骨抜きのアジアの弱小島国です。
これで今の中国に勝てというのが無理難題ですよね。 
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paulさん (象が転んだ)
2023-02-18 05:21:58
未だに日本は
日米同盟という妄想に近い神話に頼り切ってます。
多分、ロシア=ウクライナ戦争はまだまだ長引くと思うので、アメリカ経済も相当に疲弊するでしょうね。
アジアの事は中国に任せ、”アメリカに火の粉が振らなければ・・”と思ってるかもです。

更に、賞味期限切れの感が強い日米同盟ですが、新たな日米同盟のあり方ではなく、アジアの中で日本がどう振る舞えるかを議論する時代に来てると思います。
つまり、日米同盟よりもインドやオーストラリアを含めたアジア同盟なんですかね。
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