象が転んだ

たかがブロク、されどブロク

香港デモの成果と真相と、反乱か?祭りか?〜若者は暴走し、民主派の圧勝を呼び込んだ〜

2019年12月04日 04時20分08秒 | アジア系

 2019年6月から始まった香港デモは、デモ隊や市民の犠牲者が次々と報じられるなど混迷を深めていた。11月14日、習近平が強硬な非難声明を発表した事もあり、香港警察の鎮圧は一層激化。

 デモ側も、都市インフラや”親中派”(とみなされた)商店への破壊行為をエスカレートさせた。やがてデモ隊は、名門大学の香港中文大学や香港理工大学に立てこもり、理工大では激烈な抵抗の後、これまでに1200人近くが逮捕された。

 ”アグネス•チョウは信用できない(9/5)”で書いた様に、この香港デモは一時的な若者の暴走的な熱病だと見下していた。そしてすぐに収まるだろうと。
 仮に暴動が広がったとしても、中国共産党軍に呆気なく蹂躙されるだろうと踏んでいた。丁度、2ヶ月弱続いた天安門事件(1989年)の時の様に、最悪、軍隊が出動し、一気に潰されると思った。私だけでなく、日本の多くの人もそう思ってた様な気がする。
 ”暴動で政権は変えられない。若者の暴走は哀しいかな、暴走のまま終焉を迎える”と。

 しかしこれまた哀しいかな、私と同じ様な超甘い事を予想してたのが、中国共産党の幹部にも多くいたという現実。これが大きな問題である。

 以下、”中国共産党は親中派の勝利を確信していた”から抜粋です。


共産党幹部の甘い考えと狂ったシナリオ
 
 ”香港デモ隊は一握りの「暴徒」で、その他の「声なき多数派」は親中派を支持している――それは中国が仕組んだプロパガンダではなく「信仰」だった。人民日報や環球時報のジャーナリストたちに聞いてわかった、中国指導部の驚くべき慢心ぶり”

 香港で11月24日、区議会選挙が行われ、民主派が圧勝したが、実はこれこそが想定外の大事件でもあったのだ。
 投票率は過去最高71.2%で、民主化デモに対する警察の強硬姿勢に市民の怒りが高まる中、親中派の候補者たちが次々と民主派候補に敗れていく。
 これまで過半数に達した事がなかった民主派が、85%もの議席を取る”地滑り的”大勝をおさめた。これはデモを支持する一般大衆の民意が、強烈な形で示された形となった。

 この結果に、中国の報道機関はパニックに陥った。
 香港では、民主派の勝利が大方予想されてはいたが、中国メディアの編集者たち(と背後の中国政府当局者たち)は、親中派の圧勝を確信していた。つまり彼らは、自らが発信するプロパガンダに操られていたのだった。

 彼らは各紙とも、選挙前夜には親中派圧勝の予定稿を作っていた。後は、実際の数字を加筆すればいいだけになっていた。
 この見当外れの予想から、厄介な問題が透けて見える。中国共産党の上層部が、香港について自分たちが発信したプロパガンダを信じ込んでるという”笑えない”問題。

 今回、中国の各種メディアが親中派圧勝の予定稿を用意してたのも、単にその後の作業を楽にする為で、民主派の勝利を予想する別バージョンの原稿については、政治的な理由から用意されてなかっただけかもしれない。
 これが真実だとすれば、中国共産党幹部の大きな油断と慢心と誤算とも言える。


一体、何が狂ったのか?

 チャイナデイリーと環球時報は、投票日当日に出した記事でも親中派の勝利を予想。高い投票率は、”香港の混乱がこれ以上続かない様にという市民の願いの表れ”と主張していた。 
 つまり、予想が外れた場合に備えておく試みは、殆どなかったのだ。

 中国共産党の指導部は、選挙前に親中派が主張してた事を本当に信じていた様だ。親中派は、”サイレント•マジョリティー(声なき多数派)”と呼ばれた香港の一般市民が、抗議デモを続ける民主派に批判的だと主張してきた。

 しかしこの主張は、事前の世論調査によって覆されていた。香港の一般市民は警察に不信感を抱いており、抗議デモにおける暴力に不満を感じつつも、その責任は政府にあると考えていたのだ。
 多くのアナリストにとって、今回の選挙での最大の注目は、民主派が過半数の議席を獲得するかどうかだった。

 それなのに中国の各種メディアは、親中派が前回以上に民主派に差をつけて勝利すると予想し、原稿を作成していた。

 なぜ?これ程の大きな誤算が生じたのか?最大の問題は、中国共産党から香港の世論操作を任されていた人々が、その成果の報告も自分たちで行っていた事だ。
 この香港の世論操作を任されたのが、中国政府の香港出先機関である香港連絡弁公室。同機関は本土と香港の統合を推し進めるのが表向きの任務だが、実際には親中派の政治家をまとめたり、共産党系の会報を出す役割などを果たしている。

 香港で長引く抗議デモは、連絡公室にとって大きな失態であり、”声なき多数派説”は彼らにとって名誉挽回の策でもあった。つまり、この説を裏づける資料のみを中国側に提出し、否定的な材料は全てもみ決していたのだ。

 しかし勿論、共産党指導部が一つの情報入手経路にだけ頼るという事はない。
 独裁体制にて、情報に纏わる問題はつきもの。共産党もそれは自覚しており、情報は複数の手段を使って入手する。時には真実を見つけ出す為に、意図的に非公式な情報源を用いる。国営新華社通信のスタッフなどが作成する内部参考資料もその一つだ。

 しかし問題は、益々疑い深くなってる習近平体制の下では、こうした内部資料さえもが、その内容を”指導部の望む情報”に合わせる様になっている事だ。


計画の失敗

 計画の失敗は、”忠誠心が損なわれている兆候”に仕立て上げられる可能性がある。特に分離主義に関連のある問題についてはその傾向が強く、習は2017年、「分離主義との戦い」の失敗を理由に、新彊ウイグル自治区の共産党員1万2000人以上を調査した。

 香港は(習にとって)政治的には、ウイグル自治区ほど危険な場所でなないが、リスクが高い地域であるに変わりはない。
 だが政治的な主導権を取る事で、複数の情報源が指導部にとって”聞こえのいい論調”を繰り返し、指導部はそうした情報の信頼性が高いと確信する様になっていく。

 この選挙戦で、中国メディアの良心の危機は益々深まった。大体において彼らは、北京政府の立場を支持してるし、香港人の大陸嫌いを偏見だと思ってるが、自社の極端な偏向報道には面食らっている。
 記事の中の”裏切り者”という言葉が独り歩きし、新聞の報道は”有毒”で、香港有権者の支持を得る上で逆効果だったと振り返る。

 大敗の結果を受け、共産党幹部の考え方も変わるかもしれない。しかし今の所、これまでの”信仰”を更に強化する方向の報道ばかりだ。
 国有メディアは全てをデモ隊アメリカの”選挙干渉”の責任とし、中国共産党の根深い外国スパイ恐怖症を悪化させている。
 いずれ誰かが”詰め腹”を切らされる事になろうが、それも人違いである可能性が高い。

 以上、「NewsWeekJAPAN」からでした。


香港デモは成功か?失敗か?

 こういう論評を読むにつけ、複雑な思いがする。政治的側面だけで見れば、今回の香港の民主派の圧勝は成功とも取れるが、これだけで終わる筈もない。中国共産党の本当の反撃がいつ始まるのか?アメリカの対応は?
 しかし、香港の若者は、彼らの政治的理由や思想はどうあれ、”戦う”事を選択した。そして、アメリカでは香港デモを支援する「香港人権法」が成立し、トランプ大統領の承認を得た。

 中国政府が「人権法」に強く反発するのは、アメリカの介入を”カラー革命(旧共産圏諸国で起きた政権交代の総称)による中国内政への干渉”と非難する、政治的判断からだけではない。中国にとって、香港は依然として”金のタマゴ”を産む国際金融センターだからだ。

 因みに、中国では資本取引が全面的には自由化されてない為、中国の対内•対外直接投資の6〜7割は香港経由だ。更に2008年〜2019年7月まで、中国企業が株式新規上場での資金調達額は、中国市場の3148億ドルに対し、香港市場は1538億ドルと半分近くを占める。一方、アメリカの香港投資も2018年に約825憶ドル(約8兆9000億円)と少なくない。

 以下、”米中代理戦争と化した香港デモ”から抜粋です。
 
 貿易戦での対中高関税により、不利益を受けたのは中国だけでなくアメリカの企業だった。ここで、香港への優遇措置を見直して不利益を受けるのはアメリカ企業も同じ。その意味では”両刃の剣”とも言える。 
 ただこの「人権法」発動で、香港への関税優遇措置が取り消されても、中国にとって香港という”金のタマゴ”の利用価値が全てなくなる訳でもないが。引き締め過ぎて、”二制度”が窒息死すれば、中国経済は一気に沈降する。
  
 一方で、欧米主要メディアの論調も、勇武派批判へと変化しつつある。武勇派のリンチや過激な暴動で民主化運動の一線を越えた今、”民主か独裁か”という二分法は通用しなくなった。
 彼らの抗議活動は次第に、”やけくそ、死なばもろとも”となり、勇武派の狙いは国際金融センターとしての香港の地位の破壊、それに親中派既得層や中国政府への打撃。つまり、アメリカをはじめ国際的な支持を巻込み、景気減速が目立つ中国経済に打撃を与えれば成功だ。中国政府の武力介入も歓迎。世界中の非難が中国政府に集中するからだ。

 「人権法」を巡るアメリカとの対立がエスカレートした今、共産党軍部の威嚇行動も増えるだろうが、武力介入はしない。”米中代理戦争”こそが”敵の術数”なのだ。
 しかし、”祭り”はいずれ終わる。一国二制度下で民主化を求める市民と、独立を求める勇武派との分断も広がるだろう。抗議活動は一旦収まっても再発含みだ。
 戦術が一層過激化し、爆弾テロも起きるかもしれない。丁度、イギリスからの独立を目指した北アイルランド共和国軍(IRA)の様に。

 とうとう「米中代理戦争」と化した香港デモ。アメリカの「香港人権法」は”諸刃の刃”になるのか?

 以上、「BUSINESS INSIDER」からでした。



2 コメント

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独立か民主化かそれとも (paulkuroneko)
2019-12-04 22:05:02
過激系の武勇派はまず潰されるでしょう。あとは中国共産党とアメリカの出方次第ですが。
米中の貿易戦争と代理戦争、どちらも目が離せなくなりました。
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paulさんへ (象が転んだ)
2019-12-05 03:40:18
結局、香港は中国にとっては金融の窓口であり、アメリカにとってもアメリカ銀行香港支店みたいな色合いが強いですから、お互いにとって”金の成る木”であり、力の入れ加減が難しいですね。

安直に動いた方が負けみたいな気もします。
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