静かな場所

音楽を聴きつつ自分のため家族のために「今、できることをする」日々を重ねていきたいと願っています。

ジャン・チャクムルのピアノを聴く(2019.0416 三重県文化会館 ワンコインコンサート)

2019年04月17日 20時56分36秒 | コンサート
 昨日は、三重県文化会館大ホールにてジャン・チャクムルのピアノを聴いてきました(ワンコインコンサート---one coin concert vol.97)。
 さすが、小説モデルとなったコンクールの覇者であり、TVでドキュメントも放送されたとあって、会場はほぼ満席。
 開場の30分前に着いたのですが、すでに長蛇の列でした。
 どうやら15分ほど繰り上げて開場してくださったようでした。
 チャクムル氏、写真やTVでは分かりませんでしたが、かなりの長身。
 反響板の扉の上縁スレスレで登場(のように見えました???)。



 1曲目のメンデルスゾーン/幻想曲「スコットランド・ソナタ」嬰ヘ短調op.28は、(たぶん)初めて聴く曲。
 陰鬱な雰囲気は、やはり「スコットランド」と命名された交響曲第3番と同じ空気も感じましたが、こっちの方がさらに暗く何やらメラメラした雰囲気の第1楽章でした。
 第2楽章は日が射す長調でしたが、第3楽章は再び暗雲たちこめ、しかし、ヴィルトゥオーソ必至なパッセージが多々あり、暗く重いというよりは、なにかしら立ち向かう雰囲気の終曲でした。
 
 2曲目はバッハのイギリス組曲第6番ニ短調
 これも短調の曲。バックハウスのレコードで出合って以来お馴染みの曲。
 でしたが、どうも聴いているときの私と波長が合わず、戸惑っている間に終了となってしまいました。
 もう少しデッドな響きで聴けば印象が違ったかも知れません。

 チャクムル氏はメンデルスゾーンの後以外は、お辞儀のあと、袖に引っ込まずに次曲へと進めていました。

 バッハの次はショパンの有名なワルツ第1番変ホ長調op.18
 ずっと暗い色調だったのが、一気に明るくなりました。
 演奏は、もう指の回転のスムーズなのと音が美しいのとで、ホール全体を陶酔させていたようです。
 リズムの伸縮は大胆ながら上品さが感じられ厭味はまったく無し。
 うまく言えませんが、たとえば超上手いフィギアスケートの選手が、脱力しながらもリンクの広さを目一杯に使って軽やかに滑っていて、時折「空中浮遊」のような大技も見せる、とでも言いましょうか・・・???
 とにかく鮮やかで透明なショパンでした。

 次の前奏曲第6番ロ短調op.28では、またも鎮魂歌風の世界に舞い戻りました。
 そして、最後のファジル・サイ作曲「ブラック・アース」へと、ほとんど間をおかず(というよりほとんど「くっつけて」)、その暗く祈るような世界を持続させました。
 サイの曲では、左手を鍵盤上にかぶせて、まるで民族楽器のような音を出す特殊な技法が何度もありました。
 私には、この曲が当日の最大の聴きものでした。

 今回の公演は、ジャン・チャクムル氏の浜松国際ピアノコンクール優勝者ツアーの初日ということでした。
 通常「ワンコインコンサート」では、初心者向けの平易なプログラムが組まれることがほとんどのようですが、今回はツアー初日ということで演奏者自身の強い希望もあり、このような「本格的」なラインナップになったようです。
 使用されたピアノは会館保有のものではなく、コンクールで彼が選んだカワイのものでした。
 カワイから直接運び込まれたとのことでした(館長さんのプレトークによる)。

 さて、アンコールでは通訳さんを伴って現れましたが、最初は「ミエノミナサン、コンニチワ!」と仰って、会場は大いに沸きました。
 その後は英語で、会場の音響とピアノの素晴らしさを称賛され、アンコール曲の紹介がありました。
 アンコールは、シューベルト作曲リスト編曲「美しき水車小屋の娘」より「水車小屋と小川」でした。
 元歌(?)の内容は、「死」を決意した失意の若者と小川との会話で、これも暗く祈るような曲。
 ジャン・チャクムルのワンコインコンサートは、このようなムードのうちに終了しました。


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