~文字数制限に引っかかってしまいましたので、参考記事を分割しました。~
以下、道路と地方活性の問題への参考記事を挙げておきます。
道路予算は地方を救わない (宮田秀明)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/tech/20080125/145415/
渋滞による経済的損失は何兆円にも上るという試算がある
そもそも“道路行政”と考えること自体が間違いと考えるべきだろう。道路ではなく、交通・輸送・環境の行政テーマと考えるべきだ。道路はそのための手段にしか過ぎない。
公共事業だけが地方を救える術なのか (辻広雅文) 2007年10月
http://diamond.jp/series/tsujihiro/2/
世界でも類を見ないスピードで進む日本の少子高齢化は、地方で先行する。例えば、65歳以上が人口の過半数を占める「限界集落」は全国で7800あり、年間約300増える。税収は少なく、介護保険など年金生活者に負担を強いる。さまざまな制度を維持できない。「暮らしを守れない。安全も守れない。その苦しさは、東京に住むものには分からない」、そう訴える市町長にとって、公共事業は効率悪かろうが、虎の子の所得再配分機能なのだ。
経済学的に言えば、最も効率がいいのは直接おカネを配ることである。地方に産業構造転換や町興しの努力を迫るとともに、暮らしを脅かされている人々には、「最低保証年金」とでも呼ぶべき制度をつくる。そのとき、増税のみに頼らず、歳出構造を抜本改革し、公共事業から社会保障への転換を宣言することが必須であることはいうまでもない。
都市と交通機関について政治的判断で、こういう解もあるという例
ロンドン市が自転車と歩行者の町に (日経エコロジー)
http://www.nikkeibp.co.jp/news/eco08q1/561747/
あと、石油税の参考記事です。いかに多くの税金を払っているかを確認しましょう。
古くて新しい石油の税金の話 2006.6月企画 (垣見裕司)
http://www.kakimi.co.jp/2k6060.htm
ガソリン国会──ガソリン値下げ隊は二酸化炭素増やす隊か? (藤倉良)
http://wiredvision.jp/blog/fujikura/200801/200801251100.html
環境問題の面から考えてもガソリン税に関してはやはり一般財源化の解に到達するようです。
道路特定財源はもはや不要~「維持」は経済理論のイロハも知らない議論 (高木勝)
http://event.media.yahoo.co.jp/nikkeibp/20080219-00000000-nkbp-bus_all.html
道路特定財源の中の暫定税率の部分が無くなると困るのは、道路を使う国民ではなく、... (Yahoo!知恵袋)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1114609436
ここに寄せられたコメントを読むとまじめに考えている人が結構多いと感じられます。官僚や政治家に遠慮せざるを得ないマスコミの論説よりよほどまともな意見に思われます。それなのになぜ政治家がそれに反する行動をとり続けられるか!、きちんと参政権を行使しない人が多いからでしょうねぇ。自分たちや家族の未来を決めることなのに半数近くが棄権している国では一部の利権だけで進んでしまう。政治家のレベルは国民のレベルに準ずるということも一面の真実です。
民主党は、道路公団民営化委員会に学べ (猪瀬直樹)
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/inose/080226_30th/index.html
国交省とのやりとりは生々しく、お役所の言う採算性にもいかに誤魔化しが多いかということを暗示している点は注目です。この辺り筆者の努力は敬意に値します。ただ、なぜ総建設量がなしくずしに復活したのかという疑問解明や、最終的に作ることに対する制限、採算性の規定等に関しての提言に欠けるのが残念ですね。
そもそも交通量(走行台キロ)の伸びに比例して道路を作るという発想自体がおかしい。単純な交通総量ではなくトラフィックとして捉えるべき問題です。
トラフィックの増加はまず幹線道路に集中するので、地方にいくら高速道路を造っても全体として混雑も利便性も改善しないのは明らかです。総キロ数など全くナンセンス。そういう意味では大都市を迂回する環状線や第二東名などを整備した方が国民にとって有益(採算性が高い)でしょう。無論トラフィックの分散が目的なので無料でなければなりません。基本的に、できるだけ市街地を走る車を減らすような道路設計が望ましいと考えます。この辺りの設計手法はネットワークの世界では盛んに検討されているので交通に関してもすぐに応用できるはずです。まぁお役所や御用学者は分っていてもやらないのでしょうが。
しかし、オマケで付けてある民営化によってコストダウンできたという落札率推移の図も、民営化直後はともかく徐々に国交省のデータと接近しており、単に法改正で従来の談合がやりづらくなった影響とも読めます。うがった見方では、実態は骨抜きとなってしまった民営化の自賛記事とも取れます…。まぁここまで手強いお役所と戦って一定の譲歩を得た氏の成果は評価すべきだとは思ってますので、今後の戦いにも期待しています。
国交省の言う"採算性"算出法についての記事を見つけました。やや旧い記事ですが本質は変わっていないでしょう。
高速道路建設の是非 (岩本康志) 2003年3月
http://www.e.u-tokyo.ac.jp/~iwamoto/Docs/2003/KosokuDoroKensetsunoZehi.html
国土交通省による道路の費用便益分析マニュアルでは,走行時間を節約できる便益,走行費用を節約できる便益,事故を減少させることができる便益の3種の便益が計上される。事業完了後40年間の便益と費用を社会的割引率(4%)で割り引いて,便益を費用で割った値(B/C)が1.5以下の道路は建設しないとしている。
この採算性計算法ではあまりに道路公団的な視点です。社会的な視点として、トラフィックの分散による一般道への影響を含めて、社会全体の経済活動に対する便益、環境影響、住民における生活密着度、を考慮すべきと思います。こんな基準を元に税金を使うのでは、それこそ道路公団と建設業者、それと一部のドライバーだけが得をすると言われてもしょうがない。また基本的に交通量の少ない地方では"国交省の採算性"は低くならざるを得ず、「採算性だけの論議は地方切り捨て」という声にも一理あります。
本当に科学的に判断するなら、各道路のトラフィックを測定して新しい道路に予想通りに分散されれば良し、予測より交通量が低ければその道路は無駄だったと言えます。そういったデータを蓄積していけば、どこにどんな道路を造るのが効果的かをトラフィック理論によって予測することができるようになります。こうなれば少しは科学的と言えるでしょう。
しかし、そのようないい加減な採算性でもこの当時は1.5が基準だったものが、昨今の国会答弁ではこれを1.2から1.0まで落とすということで大もめです。もう無茶苦茶ですな。
岩本氏はこの算出方法に水増しの余地が多いとして、個別道路の独立採算にする手法を提案しておられますが、これも本質的に地域経済・生活への視点が不足していますので大同小異です。
それ以前に、どんな計算方法を採用しても事後検証してフィードバックする仕組みが無ければ恣意的な算出を止めることはできないと私は考えます。
事後検証して事前評価との差異が大きければ、その事前評価を出した担当部局は無能として処断されなければなりません。そうなれば次から裁量は入れづらくなり、精度は徐々に上がっていくでしょう。どんな誤った予測を出しても誰も責任を取らない組織など民間ではありえない。民間シンクタンクが2500億円の売上予測を出し、実際860億しかなかったら、絶対損害賠償を求められます。
その責任も、組織ではなく個人の評価にまで及ぶようにしなければお役人根性は直らないでしょう。何であれ自分のしたことに対して責任を取るのは社会人として当たり前のことです。
地方の知事を含めた政治家も、建設推進を叫ぶなら事後評価に対して責任を取る覚悟でやってもらわないといけません。この道路ができれば経済効果がこれ位あり、地域の税収、住民の利便性がこれ位良くなる、負債は十分まかなえる、と公約して予測が外れたら知事と関係部局の職員の退職金で住民に弁済してもらいたいものです。
追補:暫定税がいかに腐敗の温床になっているかについて、ほぼ同内容のコラムが見つかりました。多分前に読んだものと同一人物だと思います。
誰も言わないガソリン税騒動の真因 (藤末健三)
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20080328/149691/?P=4
30年以上継続しているものが約30項目もある というのにニュースでは殆ど聞いたことがありません。つなぎ法案に関してもガソリン税以外ざっくり2カ月延長されたというだけで、もっとマスコミが個々の税に関して検証して欲しいものです。今回道路特定税の無駄遣いが次から次へと見つかったように、マスコミが本気で探せばいくらでもネタは見つかると思います。
そもそも暫定というからには延長は絶対不可とすべきです。たとえ終了時点でさらに必要なものだとしても情勢を勘案した法律を立上げ直すのが筋でしょう。無修正で済むなら相当の長期にわたって使える税ということですから恒久税にすれば良いはずです。
(2008/5/18追記)
地方首長が道路財源の特定化にこだわる理由については、どうやらこれまでの借金返済のためというのが本質のようです。下の田原氏の記事の他、TVのニュース特集でも取り上げられて、既に全国平均で道路財源の4割は借金返済に消えて行くそうです。つまり入るべき収入を当てにして借金を続ける完全な自転車操業~個人なら絶対破綻に陥るパターン~です。こうなると一般化しても道路以外には回す余裕はないので、一般化によって説明責任を問われるのが嫌だ、という事のようですね。
なぜ福田政治はわかりにくい? 道路特例法に隠された真実 (田原総一朗)
http://www.nikkeibp.co.jp/style/biz/column/tahara/080515_59th/index.html
暫定税率がなくなると困る本当の理由
暫定税率が25円下がった、上がった、という問題についても、全地方自治体の長たちが下がることに反対したわけだが、この反対の理由を政府は「暫定税率が下がると、地方には道路が作れなくなる」と説明した。しかし、それは嘘だ。地方自治体は新たに道路なんてそれほど作らなくてもよいのだ。
実は、暫定税率の25円には、今まで地方が公共事業、特に道路をつくった際の借金の返済が含まれているのだ。暫定税率が25円下がると、地方が借金の返済ができなくなる。これこそが、地方自治体にとって一番の問題なのである。
(中略)
「道路がつくれなくなるので反対」ということを言うと、「これ以上道路はいらないではないか」という世論になってしまう。しかし、本当の問題は、道路ではなく、借金返済なのだ。そう説明すれば国民も納得できるのに、官僚に牛耳られている政府はそれができない。
しかし、理由は分かりましたが、「国民も納得でき」ますか? 私は全然納得できないです。借金ループは何とかして一度リセットしないと、いつかは自己破産しか道はないでしょう。